CIAは「やりたい」、トランプ氏は「やれない」、安倍氏は多分「やってほしい」だった

ただいま、2017年5月1日、午後6時です。米韓合同軍事演習はスケジュール的には終了しているはずです。軍備をどの程度解いたかなどは分かりませんが、もっとも緊張している期間は終わったと言っていいと思います。戦争にならなかったことは慶事であり、平和を愛する日本人の一人として、戦争にならなくてよかったとは思いますが、今後、いつ終わるとも知れない重圧を受けることにもなり、そのあたりは複雑な思いにならざるを得ません。

2か月にわたった今回のから騒ぎは結果としては、本当にただのから騒ぎだったと思いますが、果たして本質はどのあたりにあったのかをちょっと考えてみたいと思います。

CIAの長官が4月29日に韓国を訪問したという報道があります。ストレートニュースの類ですから、その事実に疑いを持つ必要はないと思いますが、多くの人が、CIAが本気を出しているのではないかと考えるに相違なく、私もそう思いますが、どうもCIAの方が空回りしているのではないかという気がします。まず第一に、トランプ大統領とCIAの関係は改善しておらず、両者が共同歩調をとっているように見えません。今頃になってCIAの長官が動いたということは、トランプさんがやりそうでやらない姿を見て、業を煮やしたというか、なんとか事態を「発展」させたくて後押しをしているのではないかと私には思えます。

不思議なのは、米韓合同軍事演習がいよいよ終わるというころになって、日本側が俄然、やる気になっていたというか、腹を固めた、覚悟を決めたというように見えることです。過去にミサイルの発射は何度もありましたが、直近のミサイル発射(失敗)では、Jアラートも出すし、電車も新幹線も止めるしと、臨戦態勢に入っていることを国民に告げています。安倍さんも強気の発言が目立ちます。在韓の日本人留学生には最近になって注意が呼びかけられたそうですが、明らかにタイミングを失しており、なんで今更…との感があります。

想像になりますが、当初半信半疑だった日本政府が、CIAの筋から「今回は本気だ」と告げられて、日本側も本気モードに入ったのではないかと私には思えます。即ち、CIAの長官が韓国を訪問したことと、最近になって日本側の本気モードにドライブが入ったことにはそれなりに関係しているのではないかと思えます。

しかしながら、私はトランプさんが当初から北朝鮮と戦争することは本気では考えていなかったし、今も本気では考えていないと思います。現在、北朝鮮は核実験も抑制し、ちょっと派手目に軍事演習をやったりしてお茶を濁しているわけですが、現状では中国の説得が功を奏しているように見えるとも言えるため、アメリカとしては敢えて先制攻撃をする口実がありません。韓国に10万人いると言われるアメリカ市民は現在も普通に生活しています。要するにアメリカはまだ本気モードには入っていなかったというわけです。北朝鮮がミサイルの発射でこのところ失敗が続いているのは、アメリカのサイバー攻撃によるものではないかとも囁かれますが、北朝鮮がミサイルを撃てば、かっこうの口実にもできますから、アメリカがサイバー攻撃を仕掛けているということは、本音ではやりたくないということの証左のように思えます。

最近、安倍さんが強気なのは、アメリカに対して「日本は準備ができている。覚悟は固めた」というメッセージなのではないかとも思えるのですが、トランプさんは「オバマとは違うのだ」とアピールするためにいろいろ強気なことを言ってはみたものの、本気ではなかった、あるいはそもそもやれなかったと考えれば、この数週間の動きは説明がつきます。大山鳴動して鼠一匹。豊洲もまたしかり…。トランプさんは就任当初こそ大統領令を出しまくったものの、最近はことごとく政策が実現しない状態に入っており、wall street journalからは「トランプは十分に共和党的ではない。良かった」と、なんじゃそりゃとコメントされる始末です。とりあえずはciaとトランプさんが手打ちをしない限り、アメリカは騒げども何も変わらないという日々が続くのではないでしょうか。

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アメリカと北朝鮮

米韓軍事合同演習が今まさに続けられている最中であり、keyresolve作戦なる穏やかではない名称の作戦の訓練も行われているということで、しかもトランプ大統領ですから、もしかすると戦争もあるかも知れないという話が俄かに高まっています。

本当に戦争になるのか、それともならないのか、戦争になったらどうなるのか、可能な限り穏当な表現と中立的な姿勢を保ち、感情的にならず、考えてみたいと思います。

昨日から行われた米中首脳会談では、「北朝鮮の非核化で協力する」という合意が得られたとされています。大変に微妙な表現で、「非核化」のために何をするのかはさっぱり分からない、逆に言うと何をやっても合意の範囲内という曖昧なものですから、穿った見方をするとすれば、アメリカは中国の黙認をとりつけたと解釈することも不可能ではありません。

トランプさんと習さんの会談の最中にトマホークでシリアのアサド政権の施設を攻撃したという一報が飛び込んでくるというのは、アメリカ側の皮肉をきかせた演出と言えますし、このような演出をする背景には、アメリカには他の地域でもそうする意思と能力を持っているということを示したとうけとることも可能と思えます。

しかし一方で、広い世界を全体的にカバーしなくてはいけないアメリカの事情としては、二正面作戦は避けたいという本音があるはずですから、「シリアと北朝鮮の双方で一挙に」というのは現実的な問題としてはハードルが高く、トランプ政権の最優先課題は中東情勢をコントロールすることにあることは明白ですので、シリアに本格的に手を出すということは、北朝鮮には本気にはならない。或いは、現実的にそうはできないという見方も可能とも思えます。

習近平さんにアメリカの意思と能力を示したものの、シリアと北朝鮮に同時に手を出すことはできないという二律背反でアメリカ側も未だにためらっているのが現状ではないかと私には思えます。

大変に悩ましいのは、戦争になった場合、日本、韓国への被害は甚大になる恐れがありますから、水面下でどのように話し合われているかは分からないものの、日本、韓国側から事前の快諾を得るというのは決して簡単なことではないようにも思えます。特に北朝鮮の指導者は「死なばもろとも」と考えている可能性が高いと思えますから、いよいよとなればミサイルのボタンを押すことに躊躇はないでしょうし、或いはボタンを握りしめて「押してもいいのか」的な瀬戸際作戦も充分に考えられます。

ビンラディン氏を襲撃した際には、彼がそういう決定的なボタンを持っていなかったので、少人数精鋭部隊で襲撃するという、まるで映画のような行動が可能でしたが、北朝鮮の場合、まず、指導者がどこにいるかははっきりとは分からないという面があり、指導者も一朝ことが起きればいつでもボタンに手が届くように準備している可能性がある以上、芹沢鴨暗殺のように寝込みを襲い、坂本龍馬暗殺のような素早さでけりをつけるというのはハードルが高いように思えてなりません。

アメリカとしては、北朝鮮がアメリカに届くミサイルを持つようになる前に、という本音もあるでしょうけれど、今となっては日本と韓国が焦土と化してもいいという覚悟を決めなくては動くに動けないはずですので、これは世間で騒がれているほど、戦争になる可能性は低いのではないかと思えなくもありません。平壌の破壊力の大きい爆弾を落とすという選択肢もあるかも知れませんが、その場合は横田めぐみさんの安全が危ぶまれます。

現状はキューバ危機以来とも思える緊張感のある状態になってはいるのですが、危機が進み過ぎて手が出せなくなっている。と私には思えます。イランコントラ事件でも分かるように、CIAは精緻な作戦にさほど優れているとも言い難いがところもありますので、敢えてそこまでのリスクを取れるかと言えば、取れないのではないかと思えます。

トランプ政権はまだ人事で揺れている部分が残されており、安定しているわけでもありませんから、そういう面からも今の段階で危険な賭けに出るのは厳しいのではないか、とも思えます。

以上のようなことを整理すると、1シリアと北朝鮮の二正面作戦は厳しい 2トランプ政権にとっては中東が優先事項 3トランプ政権はまだ弱く、危険な賭けには出られない 4北朝鮮は既に核保有国なのでその強みがあり、既にうっかり手が出せないほど強力になっている

ということになり、結論としては、おそらく、戦争にはならないのではないかと思えます。米韓合同軍事演習が終わるまではもちろん何とも言えない部分は残りますが、韓国の大統領不在の今、韓国が事態に対応できないという面もあって、やはりアメリカは戦争するわけにはいかない、できない。という結論に辿り着きます。それは今後も緊張が続くということも意味しますが、今戦争になれば、絶対にマスマーダーになるというリスクを負えないと思う方が普通の感覚かも知れません。今のタイミングで韓国の大統領が不在のことの方が意味深いようにすら思えてきます。また「核ミサイルを持っている」というだけで、一国を滅亡に追いやるだけの大義名分になるのか、というところも意見の分かれるところではないかとも思えます。

アメリカにとってもリスクは高いことは間違いないはずですが、北朝鮮サイドにとってのリスクはより大きなものですから、事態の打開をより強く願っているのは北朝鮮サイドに違いありません。国内での核開発アピールをやり続ける以外に政権を維持できないのだとすれば…意外と最高指導者が亡命する、みたいなところで手を打つということもあり得なくはないように思えます。

『博士の異常な愛情』をリアルで見ているような、重苦しい日々が続きます…。

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マティスが日本にやってくる

アメリカの新しい国防長官のマティスさんが来月、日本と韓国を訪問するそうです。明日、トランプさんは安全保障についてどばっといろいろ発表するらしいので、連動していると見るのが素直な見方かも知れません。

マッドマティスと呼ばれたこわもての国防長官が果たして日本に来て稲田朋美さんと何を話すのか、注目したいところではありますが、明日のトランプさんの発表からいろいろ類推できることができるかも知れません。

そういう意味では今日の段階では漠然とした、ぼんやりとしたことしか分からないわけですが、考えられるのは、日本はどれくらいアメリカの肩代わりができるのか、という話になるかも知れません。

トランプさんはアメリカ保護主義と言われる反面、軍事力の大増強を掲げていますので、保護主義だったら世界最強の軍隊を更に強くしてどうるすのか今一つ分かりませんし、それとも単なるマッチョ主義なのか今のところは何とも言えませんが、マティスさんが日本に来たその足で韓国も訪問するということなので、伝統的とも言える日米韓安全保障の枠組み強化を言うのかも知れないですが、いずれにせよ、ようやくビジョンが示されるということになるようにも思えます。

微かにさざめく噂では、トランプさんと台湾の蔡英文さんが電話会談したのだから、今後は米台間での安全保障の強化も視野に入れ、場合によっては沖縄の米軍基地の一部が台湾に移動するなどという話もあるようです。本当だったら過去70年の歴史がひっくり返って大騒ぎです。台湾は親中派と反中派で議論が錯綜しているところで、日本から見えている感覚ですっきりと国論がまとまっているわけではありません。アメリカの軍隊がやってくるとなれば、一緒に投資も来るのではないかと大きく国論を揺さぶることになるのではないかという気がします。

アメリカが本音でどんなことを考えているのかを知るには、voice of americaがなかなかいい情報源になるわけですが、voice of americaの中国語版では先日「トランプさんがジュリアンアサンジのwikileaksは信用しても自国の諜報員を信用していない。こんなことではやる気に関わる」と、報道というよりは切なる心情を発信しており、voice of americaはCIAの意向を受けているでしょうから、CIAとトランプさんの間がそこまでしっくりしているわけでもなさそうではありますけれど、それでもvoice of americaの発信情報に注意を向けることで、マティスさんの動向も含んでいろいろ見えて来るでしょうから、今後もチェックは続けたいと思います。

ついでになりますが、voice of americaの英語版は英会話の練習教材とかを配信ているので、正直そんなにおもしろくないというか、かえって白けてしまいます。やっぱ中国語版の方がビビッドに我々東アジアにも関わる情報を発信しているのでおもしろいと個人的には思います。

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