先日鎌倉へ行った際、ふらっと入ってみたお好み焼きのお店が、津久井である。以前からお店の存在には気づいていたし、ちょっと入ってみたい気持ちもあったのだが、今回は初めて「お庭を見ながらお食事できます」との文言のある看板があることに気づき、それはいいと思って入ってみることにした。鎌倉駅にほど近いにもかかわらず、やや小道へと入っていかなくてはならないため、一見隠れ家風で雰囲気は満点だ。都内で隠れ家風なら果たしていくら払うのかと戦々恐々としかねないが、お値段は良心的で、安心して食事ができることは請け合いだ。お店で働いているおば様たちの雰囲気は良く、きっとおば様たちは働くのが好きで、楽しみつつ真剣にお仕事をされているのだという印象を得た。素晴らしいことだ。古民家風の店内は谷崎潤一郎が陰影礼賛で述べている和風ベースの近代建築という感じで、これもまたたまらない。昭和前半の雰囲気で、レトロというよりは古き良き日本という言葉が当てはまる。
おば様たちがやや忙しすぎたからだと思うのだが、お好み焼きがいつまでも焼けなくて、その原因は火が通常の半分しか点いていなかったということが分かった。隣のテーブルの素敵なマダムたちが働いているおば様たちに声をかけてくれて、点検してもらってようやくわかった事実だった。とはいえ、そのような小さなことで動揺するような私ではないので、どうってことはない。お好み焼きが最終的に焼ければそれでいいのだ。焼きあがったお好み焼きはあんまりおいしくなかったが、雰囲気の良いお店なので、気にしない。気にしない。一休みである。