歴代幕府が開国するまで領土を拡張しようとしてこなかったのはなぜですか?又は、しようとしていたなら成功しなかったのはなぜですか?東北地方を平定するのが限界だったのでしょうか

まず鎌倉幕府ですけれど、鎌倉幕府のレゾンデートルは何かというと、京の朝廷の支配から独立した権力構造を関東地方に確立し、関東で土地の開墾とかやってる武士たちの権利を守るというのがあったわけですよね。そもそもが守りに入った組織であるため、拡張思考は最初からなかったんじゃないかなと思います。

で、室町幕府なんですが、この時代は足利義満なんかは明との貿易に積極的だったりしたわけですし、応仁の乱の要因の一つには細川氏と山名氏の間で海外との貿易の利権争いという面もあったわけですから、仮に戦国時代にならなかった場合、室町幕府が海外へ出て行った可能性はなくもないと思います。世界史で言えば大航海時代に入って行くわけですから、日本の艦隊がスペインの艦隊とフィリピンで出会うというようなことがあっても全くおかしくはなかったと思います。

で、徳川幕府ですけれど、この幕府は成立の経緯から言って豊臣政権を否定せざるを得ませんから、秀吉が構想したアジア征服計画のようなことに対しても否定的だったというのはあると思います。家康が教養人で、当時の教養人は漢籍をよく読むということになりますから、本家の明王朝や先輩格の李朝へ攻めて行くというのは日本の知識人には本来あまり馴染まない発想法であるということもあったと思います。それに加えて、徳川幕府は安定志向・ことなかれ主義ですから、海外との交渉(戦争でも貿易でも布教でも)は不安定要因を呼び込むことになりかねませんので、わざわざ外国へ攻めて行ってスペインなりオランダなりが首を突っ込んでくるのは嫌だというのもあったんじゃないですかね。