宮澤賢治‐図書館幻想

宮澤賢治の『図書館幻想』は、500文字あまりの掌編ながら、宮沢賢治の世界観をよく表していると言えます。彼の作品は、たとえば『注文の多い料理店』のように、時にややグロテスクです。また『銀河鉄道の夜』は友愛や家族愛を描こうとしていますが、むしろその限界に注目しており、冷静になって読み返せば残酷な物語であるとすら言えます。そういった要素が『図書館幻想』には盛り込まれています。大した筋はありません。500文字ですから。教訓があるのかとか、主張があるのかとか言えば、何もなさそうにすら思えます。ただ、そこには宮沢賢治という稀代の書き手の心の中の世界が存在します。それはただ、存在しているだけであり、意味があるのかないのかすらよく分かりません。しかし、このような世界の存在が好きな人にとっては、たまらなく素晴らしい世界ではないかと思います。私個人としても嫌いではありません。不思議で興味深い世界です。宮澤賢治の作品の特徴として、ところどころに自然科学の知識が入れ込まれているということがありますが、この短い作品でもそれは貫かれています。宮澤賢治らしいと言えるでしょう。人の愛を描く前に、どうしても物理を書きたくなるのが彼の本当の姿だったのではないか、私は今回、この作品を朗読してみて、そのように思いました。一つの作品を朗読するためには、何度か練習をします。練習を重ねる過程は、作者との対話のようなものです。なぜここに句読点があるのだろうか、どうしてこの単語を選んだのだろうかというようなことを考えながら朗読の練習をします。そうすると、作者の息遣いのようなものが感じられ、書き手の心の中に少し触れることができるように思えます。小説やエッセイを読む際、作者の心に触れることほど贅沢な読書経験はないかも知れません。下に朗読動画を貼っておきますので、ご関心のある方はどうぞ聴いてやってください。最近、体調不良が続き、舌の呂律がやや不安定です。申し訳ありません。