安倍政権をそろそろ採点してみる【2020】

稀に見る長期政権の安倍政権ではあるのだが、ほんのわずかかもしれないものの、やや、陰りが見え始めている。政権は一度沈み始めれば速く、人々は泥船から飛び降りることになる。果たして安倍政権は今、政権末期なのだろうか?また、世の中や社会のために終わるべき政権なのだろうか、続くべきだろうかというような感じのことを考えてみたいと思う。キーワードは経済、新型肺炎、憲法改正あたりだろうか。

まずは経済だが、これはもはや三角というかバツに近い。アベノミクスで日本には確かに復活の兆しが見えるかのように思えた。野田政権の時代に7000円くらいだった株価が24000円くらいまで回復したのだから、これは正しく評価されなければならない。しかし、アベノミクスによって成し遂げられたのは、多分、これだけだ。「積極的な財政出動」はどういうわけか躊躇しつつの財政出動に変わっており、財政均衡主義にとらわれている。アベノミクスの3本の矢の一つである、財政出動は打ち上げ花火で終わってしまった。もう一本の産業育成はどうだろうか。何か新しい産業は育成されたのだろうか?アメリカのGAFAみたいな企業は別に登場していない。ソフトバンクは今自社株買いオペレーションで株価を持ち直しているが、全体として大変なことになっている。自社株買いオペで株価維持というのは、なかなか厳しい状態にあることを逆に示しているとすら言える。農業がその目玉というが、農業で世界競争に勝てる分野はそこでがんばって研究し、働いてきた農家の方々がえらいのであって、この分野は安倍政権が始まる前から強いし、政権に旗振りをしてもらう必要はない。旗を振るだけで何もしないのであれば、そんな政治は不要である。大胆な金融政策も申し訳ないが、あれ、そういえばそんなこと言ってましたよね。な感じである。3本の矢は、有機的なつながりを保ちながら他の政策とも融和しつつ成果を期待するものなので、それぞれが独立して行われるべきものではない。だが、長い安倍時代、3本の矢はそれぞれ気まぐれに放たれ、あんまり遠くまで飛ばず、最近は矢玉も尽きた感が強い。消費増税を2回もやっていて、3本の矢は増税の結果、その効果は吹っ飛んでしまったと言ってもいいだろう。国民生活は更に水準が下がった。このような政権が本当に必要なのか、私には疑問である。

私は安倍政権を頭からディスるつもりはないので、経済に関してはバツではあるものの、新型肺炎については△くらいにしておきたい。新型肺炎の水際せき止め作戦は失敗したが、だからと言って、それを安倍首相の責任に帰するのは、ややかわいそうではないかと思える。新型肺炎なのだ。飛沫感染する死ぬかも知れない伝染病なんて、一体、前回流行したのはいつなんだ?と思うくらい、記憶にない。それこそ1000年ぐらい前の京都みたいな話になるのではないだろうか。森鴎外はドイツでコッホという医者に学び、伝染病の権威になって帰ってきたが、はっきり言って大事なところで能力を発揮したとは言い難い。日清戦争とそれに続く台湾鎮定戦では兵隊たちが栄養失調でばたばた死んでいったが、森鴎外は伝染病だと言って譲らず、要するに誤診して兵隊の犠牲を増やした。飛沫感染で大事になることなんて、近代日本では滅多になかったのだ。731部隊はそういったことを研究していたらしいが、なにかを完成させる前に日本は戦争に敗けたような印象だ。それ以後の伝染病となると、もはやhivくらいしか思いつかず、hivの感染経路は飛沫ではないので、新型肺炎の上陸と広がりは近代日本の初めての経験なのだ。どうすればよかったという正解はなく、確かに初動で鈍かったようには思うが、それだけでバツ印を与えるのは気の毒だ。とはいえ、新型肺炎予防のために不要不急の外出を控え、マスクも買えないという不便もあるので、困っていることは確かではあるのだが。

さて、安倍首相は充分に首相生活を満喫したはずだし、政治家としてこれで満足じゃないのですかとも思えるのだが、それでも彼はオリンピックと憲法改正をなんとか実現したいらしい。オリンピックも新型肺炎で危ぶむ声が上がっており、ロンドンからは東京でできないのならロンドンで、という動きもあるようだ。オリンピックが中止になる予言はいろいろ出回っていたが、まさかここまでリアリティのある話になるとは考えもしていなかった。だが、安倍首相がやりたいのはオリンピックだけではない。憲法改正については今もかなり本気であり、可能性を追求する動きに変化はなさそうだ。安倍氏は実務は菅氏に支えられていて、内閣を麻生氏に支えられていて、党内のことは二階氏に支えられている。この3人の担ぐ神輿が安倍政権であるともいえるのだが、一蓮托生を自他ともに任じる菅氏はともかく、麻生氏と二階氏が安倍氏を支え続けるのかどうかは注目点の一つだったと言える。で、最近は二階氏が安倍氏四選を容認するっぽい発言をしていて、麻生氏も安倍氏が憲法改正したければ、四選めざさねばならないとする発言をして、要するに四選に発破をかけている。二階・麻生が四選支持ということになれば、安倍氏四選はそれなりにリアリティを持っていると言うことだ。自民党の規約を変えなければいけないはずだが、もう、どうにかしてやるつもりなのだろう。中曽根だって選挙で勝って任期を延長を勝ち取ったのだし、シャア少佐だって戦場で手柄を立てて出世したのだ。次の選挙で自民圧勝すれば、安倍四選がないわけではない。安倍氏が四選すれば、憲法改正に取り掛かるのかも知れないが、景気をなんとかしろよと私は思う。私は憲法9条を死守せよとか別に思わないが、絶対に変えなければならないとも思わない。日本人は憲法解釈と運用によって事実上改憲をしている。それは賢者の知恵みたいなものだから、それでいいじゃない、と思うのだ。それに憲法改正をしている場合ではない。経済だ。経済。

次の衆議院選挙で自民圧勝は多分ない。経済は消費増税により崩壊過程に入っているようにすら思える昨今であり、新型肺炎も収束の兆しは見えない。オリンピックももしかたらやれないということになれば、自民圧勝なんてあるわけないじゃん。としか言えないだろう。経済を良くする首相は果たしてどこにいるのか…。



令和になったら総選挙。多分。‐令和になる前に

首相、内閣が絶対にこなさなければならないのは予算を通過させることで、これは最も重要な義務だと言えると思います。で、予算が通れば首相は身軽になり、自分のやりたいことの追求について考える余裕がうまれます。それは例えば外交かも知れません、経済かも知れませんし、法律を変えることもかもしれません。或いは総選挙のような政局をやって、政権の延命ができるかどうかの賭けに出たり、勝つ自信がある場合はほくそ笑みながらドヤ顔で選挙で300議席獲ったりする一方、これは勝てないと判断すれば、総辞職でなるべく立つ鳥跡を濁さず的に花道を用意してもらって引退生活へ入って行くという選択もできます。要するに予算が通れば首相は身軽になり、選択肢の幅も広がるというわけですね。

しかし、今年に限って言えば事情が少し違います。予算が通った後、今度は時代が滞りなく、穏やかに、できればお祝いムードとともに令和に始まってもらわなければなりません。令和が始まる前にスキャンダルだの政局だのというのは絶対に避けたいはずです。それまではひたすらことなかれ主義で物事が進められているように見えます。言葉の選び方を間違えた大臣は更迭です。更迭すれば話は早く、その話題は終了ですから、安倍さんの令和を穏やかに迎えるために隠忍自重みたいな感じがよく伝わってくるようにも思えます。

さて、令和になったら首相は自由です。そして、現状では、夏の参議院選挙は自民にやや不利との見方が出ています。安倍首相は憲法改正を究極の政治目標に掲げていますから、残された任期でラストスパートをかけていきたいのなら、夏の参議院選挙でも勝つ必要があります。私は個人的には憲法改正には関心がありません。憲法の内容を現状に合わせましょうというだけのことですから、要するに私たちの生活にも、日本の世界政治の中でのアクターとしての位置も今まで通りというわけです。そのようなことのために口角泡を飛ばして議論することにあまり価値は感じません。憲法はやや曖昧でちょうどいいくらいにも思っています。明治憲法では憲法を細部に至る神学論争が行われ、統帥権の名のもとに首相が陸海軍に命令できないという意味不明な現象が生じてしまい、条文を読んで現実を見ない日本帝国は滅亡していきました。というようなわけで、憲法改正には関心はないんですが、一応、いろいろウオッチしている身としては、令和になったら解散風が吹くかもなあと思って眺めております。




2019年の政治の見どころは、衆参同日選挙の有無

このところ、安倍晋三首相に揺れを感じます。焦っているように見えるのです。安部さんの究極の目標は憲法改正で、憲政史上稀な長期政権を打ち立てて尚憲法改正ができていないわけですから、もし安倍さんが憲法改正できなければ、私が生きている間に憲法改正が行われることはないと思います。私は今の憲法が自主憲法ではないとは思っていますが、内容はなかなかいいことを書いてあると思っているので、正直に言うと憲法改正がされるかどうかには関心がありません。自衛隊は憲法に明記されていませんが、自衛隊が生まれたのはアメリカの要請があったからで、自衛隊にいろいろな制約がかかっているのも、そういう国際政治上の要請によるものですから、ぶっちゃけ憲法とは関係ないと思っています。仮に憲法に自衛隊が明記されることがあっても、国際政治上の要請から制約がかかるでしょうから、同じと言えば同じなのです。また、今の憲法はそれくらい解釈に幅を持たせることができる憲法だと考えることもできますから、解釈に幅を持たせることができるくらいでちょうどいいのではないかとも思うのです。例えば大正時代から太平洋戦争にかけての時代、「内閣が軍に口出しするのは憲法違反だ」という論法がまかり通るようになり、小さなことでも憲法違反だ、統帥権干犯だと騒ぎ立てて問題にされてしまうようになったことが、結果としては誰もが口をつぐんでアメリカとの戦争まで突入してしまったわけです。ですから、あまり些細なことで騒ぎ立てるのは少なくとも政治とか憲法とかについて考える際にはなるべく避けた方がいい、コップの中で嵐を起こしてコップが壊れたら元も子もないと思っています。

とはいえ、政局はおもしろいので気になります。選挙では苦労する人がたくさんいますから、外野でおもしろがるのはまことに申し訳ないとは思うのですが、やっぱり政局に対しては純粋に興味津々になってしまいます。私は野球を観ないのですが、野球を観るのが好きな人が今年はどこが優勝するかについて喧々諤々するのと同じような感覚です。

で、安倍さんは自分の政治目標を達成するためには、残りの任期中に与党3分の2以上を維持した状態で、与党全体を説得し、国民投票に持ち込みたいに決まっています。できるかどうかは分かりません。私個人に賛成も反対もないです。いずれにせよ、そういうわけで3分の2以上を維持するためには今年の参議院選挙で勝たなくてはいけないわけです。あと半年ですから、すぐに夏の選挙の到来です。小沢一郎さんが人生最後の勝負をかけて野党の糾合を進めています(これを野合と呼ぶかどうかは、それぞれの価値観の問題でしょうね)。安倍さんとしては今回だけは小沢さんに敗けるわけにはいきません。そうなると、中曽根さんの時のように、死んだふり衆参W選挙で圧勝パターンを狙うことは充分に考えられます。もし私だったら、人生をかけた大目標を達成するような場面が来た時、できることは全てやりますから、安倍さんもできることは全てやるはずです。衆参同日選挙になると、政権選択プレッシャーが有権者にかかってくるのでついつい自民党に票が集まりやすくなると言われています。もし安倍さんの立場なら今年やらなければいつやるのかという感じではないでしょうか。

しかし、衆参同日選挙の時に支持率ががたっと落ちてしまうようなことがあると、両方敗けて政権を失うという大きな賭けにもなるわけですから、なんとかして支持率を上げたいという焦りがあの手この手を打っている安倍さんの姿から見えて来るような気がします。ロシアのプーチン大統領と平和条約を結んで二島返還みたいなことが起きればぐぐっと支持率が上がるかも知れないという心境にもなるでしょうし、昨年末から急に不景気になってきましたから、景気対策を打ちたい、できれば消費税の引き上げを更に引き延ばしにしたら支持率上がるだろうか。というような心情も見えてくるように思えるのです。

個人的には消費税は上げないでほしい、できることなら下げてほしい、はっきり言うと廃止してほしいと思っているタイプなので、憲法改正には関心はないですが、安倍首相が消費税引き下げを公約に衆参同日選挙をやってほしいなあと思います。

いずれにせよ、以上のような理由で今年は衆参同日選挙の可能性は充分にあると踏んでウオッチしたいと思います。








2018年末衆議院解散説

現在(2017年)の衆議院議員は2018年末に任期の満了を迎えます。一般的な見方、政治ウオッチャーの常識みたいなことを言えば、通常、2018年になる前に首相は衆議院の解散を模索するはずです。過去の経験則から、任期満了にともなう解散総選挙では首相の求心力を維持することが難しく、スケジュール解散などと揶揄されて与党が数を減らすというのがパターン化されており、解散総選挙の先送りは現職の首相にとっては座して死を待つに等しく、政権を維持したいのであれば最後の一年に入る前に解散を打つに違いないというわけです。過去、もっとも分かりやすい例としては、小泉純一郎さんが優勢解散で大量に議席を獲得した後、後任の首相たちが自分の手で解散して敗北することを恐れて一年ごとに辞任するというなんか変な話になってしまい、ババ抜きゲームの結果みたいに麻生太郎さんがスケジュール的にやむを得ず解散を打ち、惨敗したというのがあります。もちろん、リーマンショック以来経済ががたがたで、そういう点で運が悪かったとも言えるかも知れません。

さて、現在の首相は安倍晋三さんです。55年体制が始まって以来、初めて二度目の首相の座に就いたというだけでもただ者ではないわけですが、近年稀にみる長期政権になっており、過去の長期政権の例で言えば、桂太郎さんが合計で長期やったものの、二度目、三度目の任期はかなりぼろぼろになっていたことを思えば、最盛期に迎えているように見える安倍政権は極めて珍しい、異例な、一般論では語れない状況が生まれているとも思えます。

で、安倍晋三さんには3つの目標があると言われます。1つはアベノミクス。これはまだまだ道半ばとは言うものの、失業率が3%を切るという快挙に至ったこともまた事実であり、ゆっくりゆっくりと効果を上げているとも言えますが、これは今辞められると全部沈んでしまうでしょうから、日本の本格回復までがんばってもらいたいところではあります。で、2つ目が憲法改正。果たして何をどう改正するのかというところから議論されなくてはいけない、意外と漠然とした目標で、お試し改憲みたいな話も出て、そんなことで本当に大丈夫かと私は不安に思いましたが、最近では憲法9条に第三項で自衛隊を明記するということでどうも安倍さんの腹が固まった、多分、公明党もそれならオーケーという話になった、維新も多分乗ってくるということで、ようやくどうするつもりかが見えてきた感があります。自衛隊は過去の大地震でどれほどがんばってくれたかが国民の目にもよくわかっていますので、自衛隊の存在が憲法で確認されること事態には反対しないというコンセンサスなら得られると安倍さんは考えたのかも知れません。最高裁判所は統治行為論で自衛隊が違憲か合憲かについては判断しない、ということは少なくとも違憲だという判断は出していない、悪く言えば逃げており、良く言えば司法は万能ではないから判断の分をわきまえていると考えることもできますが、いずれにせよ、公明党、最高裁等々の諸要因を考慮して、自衛隊について書き込むというところに狙いを定めたと言えるように思えます。

そして3つ目は東京オリンピックの時に自分が首相をやるという目標も持っています。これについては個人的な利得、私利私欲の範疇に入るかも知れませんし、「東京オリンピックの時に誰が首相なのか」は個人的には関心もありませんので、論じないことにします。

で、ここから何を論じるのかというと、以上の3つの目標を達成するための「解」はどこにあるのかということになります。一般論で言えば、上の3つの目標はどれもそれだけで難治であって、これを全部達成するというのはかなりの神業と言わざるを得ません。しかし、そこを狙うため、安倍さんは、どうも任期ぎりぎりまで解散しないのではないかと思えてきます。

今の若手の自民党の議員さんの中には、とても次は当選できないと言われている人が多く、実際にみっともないことが週刊誌に書かれることも多く、次の総選挙で自民党が現有勢力を維持することはまず不可能との見方があります。前回の衆議院選挙でも東北地方では小沢王国が存在感を見せており、小沢王国はさらにがちがちに固めていると考えていいわけですから、次回選挙では過半数は維持できてもそれ以上はちょっと望めないという予想が立ちます。とすれば、憲法改正を本当にやりたいとすれば、現有勢力でやるしかありません。天皇陛下のご攘夷、テロ等準備罪、〇〇学園、北朝鮮ととても選挙をやってる場合ではない課題が目白押しで、それを全部片づけてからいよいよこれから改正論議ということになれば、2018年の任期ぎりぎりまで日程を取る以外にはないのではないかという気もします。そうやって、最後は衆議院選挙と憲法改正の国民投票を同時に行い、最終判断では有権者に任せる(民主国家ですから、最終判断についてはそうせざるを得ません)というシナリオがあるのではなかろうかと思えます。私が改憲してほしいとか、してほしくないとか、そいうことではなくて、首相の胸中を「忖度」すればそういうことになると思えるわけです。

もちろん、自民党が政権党から転げ落ちるという不安要素は残ります。なにしろ任期満了に伴う解散ですし、小選挙区制の選挙制度では、ちょっとした風向きの違いで大きく勝ったり大きく負けたりするわけですから、任期満了解散はリスクです。繰り返しになりますが、小沢一郎さんにそれだけ時間を与えてしまうのもリスクと考えているはずです。もちろん、任期満了に伴う解散が政権党に不利なのは、解散の大義名分に乏しく、有権者に訴えかける材料が少なくなってしまうというものがあるからなのですが、憲法改正もセットでやるとなれば、賛成反対はともかく、大義名分としては充分です。

個人的には、更に消費税の減税を公約に入れてもらえないかと、どさくさでもいいので、消費税増税をねじ込んでもらえないかと思います。金融緩和はそれなりに効果を上げているわけですから、ここで消費税の減税があれば、日本経済は一機に回復。東京オリンピックもシナジー効果になって日本は一機に21世紀バブルも夢ではないと思うのですが。

広告



広告

安倍首相は現段階で解散を打ちたくても打てないように見える件

政治的なイベント、または外交的なイベントがあれば、すぐに解散説が出てきます。たとえば、森友学園問題では、証人喚問の終わり、出るべき話はだいたい出尽くした感があり、これを境に解散か?というような観測もなかったわけではありません。内閣支持率は概ね好調で、森友学園問題で騒ぎになってからは少しは下がりましたが、現状では回復が見られます。尤も、森友以前までほどには回復していませんから、同じやるなら今の時期は外してもう少し様子が見たいというところはあるはずです。

外交で得点して解散への流れを作りたいと安倍首相が考えていたことはまず間違いないと思いますが、プーチン訪日は実際的には空振りみたいなもので、北方領土で一機にという感じではなくなってきました。また、北朝鮮で開戦前夜(?)の空気が漂う現在、邦人保護の観点からみても米韓合同軍事演習が終わるまではとても解散している場合ではありません。外交的にはこつこつと小さく積み重ねてきた点は正当に評価されるべきと思いますから、概ね高い支持率はそのことも反映しているかも知れないですが、前回のように大きく勝てるという見込みが立つほどの感じでもなし…。というところではないかと思えます。

経済に関しては、金融緩和がそれなりに効果を上げていると思える一方で、日銀頼みの感が強く、もう一歩、抜け切れていない様子であり、失業率が史上最低レベルにまで下がったという事実は正当に評価されるべきと思いますが、21世紀バブル、21世紀元禄という感じにはほど遠く、長い目で見ると悲観したくなる材料が山積みですので、選挙で大勝利の確信を立てられるところまで来ているとも言い難いところがあります。個人消費は伸びておらず、明らかに消費税の増税の影響を引きずっていると思えますから、長い目で見るとずるずると衰退していきそうにも思えてしまい、なんとかしてくれ…。とついつい思ってしまいます。せめて東芝が救済されれば、ちょっとは明るいニュースになるようにも思うのですが、外資に買われる可能性の方が高いように思え、どうしてもぱっとした感じにはなりません。リフレ派の論客の片岡剛士さんが日銀の審査委員に就任する見込みですので、黒田総裁就任以降のリフレ政策は維持される、或いは更に深堀りしていくことが予想できますが、日銀頼みになってしまっているところが軛のようになっているとも思えますから、もう少し明るい材料がほしいところです。

しかし、安倍さんが憂慮する最大の要因は自民党の若手の議員の人たちが枕を並べて討ち死にする可能性が高いというところにあるそうです。確かに育児休暇をとると言っておきながら、不倫をしていた国会議員、重婚疑惑の国会議員など、たるんだ感じのスキャンダルが多く、20世紀型の大金を集めていたとかの話に比べれば小粒なスキャンダルとも言えますが、小粒なのに品がないという関係者であれば絶望したくなるような話題が目立っており、党の執行部であれば「このメンバーでは戦えない。外交で得点して何とか、粗を隠せないか…」という心境になるのではないかと想像できます。

2017年秋の解散説がありましたが、最近では2018年解散説まで出ています。勝てる目算が立つまではぎりぎりまで待つというわけです。追い込まれ解散になる可能性もあるけれど、それまでにいいニュースを発信できるかどうかということに賭るということらしいです。

自民党の支持率は4割近くあり、小選挙区中心の日本の選挙制度から考えれば上々と言えますし、民進党の支持率は全く上がらないというか、下がり気味であり、通常であれば自民党は楽勝とも言えますが、最近は当日になって誰に投票するかを決める人も多く、そのあたりの有権者の気まぐれの恐ろしさをよく知っているからこそ、メンバーのたるみを危惧していると言えそうです。小池百合子さんが手駒をどれくらい揃えてくるかによって今後の流れは変わってきますから、そういう意味では東京都議会選挙には注目せざるを得ません。ただし、小池さんは最終的には自民党と組む形で、細川護熙さんの時のように、少数与党ながら首班指名を勝ち取るというあたりを狙っていると思われるものの、自民党は正解遊泳型の政治家を絶対に認めないという空気も持っていますので、そのようなある種の伝統を小池さんが打ち破るかどうかは見届けたいところです。豊洲移転問題のもたつき、東京オリンピックの準備のもたつきが指摘される中、小池さんの演説力で乗り越えるのかどうかは日本の政治の将来を占う重要な材料になるように思えます。

最後に、安倍さんにとって恐るべしは小沢一郎さんかも知れません。前回の衆議院選挙でも、東北地方では自民圧勝という結果を得ることができず、小沢一郎王国が奥州藤原氏の如き強靭さを持っていることをうかがい知ることができましたが、解散時期が遅くなればなるほど、小沢さんに合従連衡の時間を与えることになります。小沢さんは党名を自由党というかつての政党名に戻しており、そこに心境の変化、心構えを見ることができます。

安倍さんとしては憲法改正可能な議席を維持したいという思いがあるでしょうけれど、上に述べたような各種不安要素を並べてみると、次も前回と同じだけの議席を確保できる見通しは必ずしも高いわけではなく、仮に現状に大きな変化が生まれないまま解散総選挙ということになれば、憲法改正はあきらめざるを得ないという結論にも至りかねません。私個人は無理をして憲法改正をする必要はないと思っていますから、3分の2以上の議席をとれるかどうかにはあまり関心はないのですが、憲法よりもまずは経済で、消費税の据え置き、できれば減税、可能なら撤廃(日本は一挙にバブル期なみの好況に恵まれることになると思います)で選挙をやってもらえないものだろうかと願う次第です。

スポンサーリンク


北朝鮮は戦争ではなく外交を選んだ。勝ったのは中国だった。

現在、2017年4月15日の午後2時ごろです。政権に近い人たちからはXデーとささやかれ、あわや第二次朝鮮戦争、または第二のキューバ危機かとすら思えた緊迫感のある日々が続きましたが、もっともやばいと言われた15日の午前が何事もなく穏やかに過ぎましたので、戦争になるリスクは大きく減少したと思えます。安全資産である日本円に買いが集まっていましたが、週明けからは円高に揺り戻していくのではないかと思えます。数日前、私なりに戦争にはならないと思うという主旨のことをなるべく穏やかに書いたのですが、やっぱり戦争にはならなかったと言うことになります。北朝鮮にとっては核実験という派手なことはやれなかったものの、「SLBM持ってるぞ。ついでに言うとICBMも持ってるぞ。なめんなよ」と世界に見せることができたわけですから、それなりに満足できる内容だったかのも知れません。

一時、軍需産業関連の関連の株価が上がっていると話題になりましたが、数日前から下げ始めており、株式市場でも戦争は回避されるという見方が強まりつつあったとも思えます。週明けからは反動もあってもっと下げるのではないかという気もします。

振り返ってみれば、アメリカがどこまで本気で戦争するつもりだったのかは微妙と思えます。まず第一にシンガポールからオーストラリアへ向かうはずだった空母カールビンソンが思いつきのように日本海行きを命じられ、一週間くらいかけて(要するにわりとゆっくり)北上したという辺り、「カールビンソンが行きますよ」という威嚇以外の意味はなかったとも思えます。

もし戦争になった場合、懸念されるのはソウルに大量の砲弾が撃ち込まれることと、日本に何が飛んでくるか分からないというところでしたが、38度線の砲台は固定されたものなわけですから、トマホークで計算して打ち込めばよく、カールビンソンの戦闘機が出ていく理由はありません。ミサイルを打つための可動式の発射台については、トマホークで狙うことには限界がありますから、戦闘機を使うことは理解できますが、仮に数時間で全て叩く(一つでも残っていれば日本に何かが飛んでくる)ということであれば、横須賀のロナルドレーガンも日本海に行っているべきで、わざわざ狙ってくださいと言わんばかりに横須賀で整備しているのは悠長な話です。ということは、最初から必ずしもアメリカは本気を出していなかったのかも知れません。やろうと思えば勝てるだけの戦力は集めた上で、場合によっては韓国と日本が焦土と化しても、ま、いっか。という感じで考えていたのかも知れません。少数精鋭の暗殺部隊を送るという話もありましたが、山の中の個人宅を狙うのではなく、警護の固い宮殿の中に複数の影武者たちと警備兵を充実させている国家元首をこっそり空挺部隊のようなもので送り込み、目的を達成するというのは土台からしてやっぱり無理な話だったと言えなくもありません。

それでも、戦争になったら日本と韓国に向けて存分に大暴れして滅びゆく覚悟を北朝鮮がしたならば、そうなったかも知れません。しかし、今この段階で核実験をしていないということは北朝鮮の側は矛を収め、アメリカも矛を収めるのをじっと待つという戦略を採用したものと見受けられます。何にもやらなければ滅亡必至の戦争を回避できるのですから、何にもやらないというのは理にかなった判断と思えます。太平洋戦争が始まる前に昭和天皇が「戦争準備を主とするのではなく、外交を主とせよ」と意思表示したことは全くまともな判断であり、それでも戦争をした当時の日本の指導者の愚かさということまでが私の脳裏を去来します。

一連のできごとで最も印象に残ったのは中国の立場が大きく好転したことです。中国は北朝鮮を説得するとアメリカに約束し、実際に北朝鮮を思いとどまらせることができたわけですから、堂々とその成果を主張することができます。一部では今の北朝鮮を中国がコントロールすることはできないとも言われていましたが、滅亡必至の行為を思いとどまらせるのはそんなに難しいことではなかったかも知れません。やったら死ぬよと言われれば、大抵の人はやらないのが合理的というものです。その結果として得るものは大きいもので、トランプさんは中国を為替操作国とは認定しないと発言し、今後の貿易不均衡についてもあんまり厳しいことは言わないともツイッターでつぶやいています。先日の米中首脳会談では、「100日以内になんとかしろよ」と約束させられた習近平さんですが、この約束はチャラにしたところで誰に文句を言われるわけでもなく、大手を振れるというものです。今回のことで一番お得な思いをしたのは中国だったかも知れません。北朝鮮に対しても、アメリカに「体制の変更は求めない」とも言わせたわけですから、これからは命の恩人です。

今後は米中蜜月も視野に入る可能性もあります。トランプさんが大統領に就任する前、台湾の蔡英文総統と電話で会談したことを自らツイッターで明かしたことで大いに話題になり、CIAはトランプさんの就任前にアメリカに立ち寄った蔡英文さんと直接会談させることも狙っていたフシがありますが、これは実現しませんでした。CIAとトランプさんの関係は現在に至るまでも微妙というかかなり隙間風が入り込む状態と見てまず間違いないと私は見ていますが、これは世界最大の予算を持つインテリジェンス機関をトランプさんが活用できていないということも意味しています。政府人事は現在に至るまで不安定で、人事の目玉であったとも言えるバノンさんも冷遇されつつあるわけですから、トランプ政権は足元がまだまだ弱いということは間違いないと言えそうです。当初、明らかに中国に対して冷たい態度をとっていたトランプさんは、就任後少しずつ態度が穏健になり、おそらくは中国ロビーの涙ぐましい努力があったものと想像できます。娘さんと娘婿だけを頼りに政治をしているトランプさんは裸の王様状態になっており、中国ロビーにとってはそれが幸いして、入り込みやすかったのかも知れません。トランプさんは今後も情報源が乏しい中でのかじ取りをせざるを得なくなるため、中国ロビーの努力次第では米中蜜月大いにあり得ると思えます。北朝鮮が核実験を見合わせたことで、米中蜜月のお膳立ては整ったとも言えますから、今後はアメリカのAIIB参加なども含んだ方向転換も考えられます。その場合、戦争になったら有事モードで返り血も覚悟していたフシが見受けられる安倍首相は踊らされた感が残ってしまい、うまく形容することのできない、わけのわからない感じになってしまうということにもなりかねません。国際社会は一寸先は闇でござんす。安倍首相はオバマさんに対しては平身低頭で何とか乗り切り、トランプさんに交代してからはもうちょっと伸び伸びやれるかもと期待していたはずですが、ところがどっこい…相手にされなくなる…。ということもないとは言えません。こういうことを書いたからといって、私がそれを望んでいるというわけではないですよ。念のため。

とはいえ、戦争になっていたら、数百万人の死者が出ることも不思議ではなく、コロニー落としなみのマスマーダーになった可能性もあるわけですから、戦争にならなかったということは、祝すべきとも思います。

金正恩さんは、このたびのことで「強いことは正義だ」と学んだのではないかと思います。シリアのアサドさんやリビアのカダフィさんのような半端なことをしていればトマホークも撃ち込まれるし、場合によっては殺される。しかし、自分は強いのだ。強いからアメリカも手を出すのをためらったのだと認識したはずです。そう認識するのが普通です。もし、金正恩さんが賢明な人であれば「力は使うものではなく、見せるものだ」とも学んだかも知れません。日本はそれを見せられる側であり続けることになります。日本は外交で負けたと判断してもさほど間違っていないのではないかという気がします。

広告


アベノミクスをここでちょっと振り返ってみる

日本のGDPは540兆円弱になるようなのですが、そのうち20兆は過去に計算に入れていなかった研究開発費などを加えて下駄をはかせた数字であるため、過去と比較するとすれば、520兆円弱くらいあたり見てよいのではないかと思います。一番ひどい時に490兆円くらいまで落ち込んでいましたから、安倍政権に入って30兆増えたことになり、下駄をはかせた分も、そっちの方が国際標準らしいので、それを額面通りに受け入れるとすれば、50兆円くらい伸びてますので、まあ、まあ、まずまずだと評価してもいいのではないかと思います。

これくらいまで伸びた背景は一重に黒田バズーカによる金融緩和がおおいに仕事をしてくれたと言ってよいとも思えます。とはいえ、これは金融緩和が来たぞ!ということで外国人投資家による日本株の買いによる日経平均の上昇と、結果として含み益を得た日本人投資家の利益の面が大きく、実体経済、即ち誰かが商売を始めて、それで雇われる人も増えるし、みんなもほしいものが買えてみんながハッピーという状態まで行けたかと言えば、残念ながら疑問を感じざるを得ないところです。

日本経済は60パーセントが個人消費に支えられているにもかかわらず、個人消費はほとんど伸びておらず、消費税の増税によってどちらかと言えば冷える傾向にあると言えます。敢えて言えば、消費税を3パーセントも上げたのに冷え込みがこの程度で済んでいる、なんとか現状を維持できているということの方が不思議なくらいで、一部の指摘にあるように高齢者層がお金を使うことで、どうにか持ちこたえているというあたりが実際的なところなのかもしれません。

失業率は堅調に下がっており、それをしてアベノミクス効果と称揚する人もいますし、確かにまずはなんといっても失業対策が肝心で、個人的には所得よりもまず雇用と思いますから、これについてはめでたいわけですが、これはアベノミクス効果ではなく、少子化で新卒の人の人数が少ないために、結果としてみんな内定がもらえるようになったからだとする指摘もあり、とすれば、アベノミクスとは関係ないと見ることもできるかもしれません。政治家が結果責任だとすれば、結果として失業率は下がっているわけですから、そこは評価されてもいいのかもしれません。今後、賃金が上がるかどうかというところに世論は移っていくのをとりあえずは見守りたいと思います。

ゆゆしきことと思えるのは、今後も消費増税を控えており、おそらく財務担当省庁の思惑としてはヨーロッパ型の高負担税制国家にしたいというところが見えますので、消費税はこれからも粘り強くじわじわと上げられていく可能性が捨てきれないということです。過去の流れを見ても、どうにか日本経済が復活しそうになったところで橋本龍太郎さんの時代に消費税増税が行われたことで景気の腰折れがあり、今回の安倍政権になってからも、消費増税によってかなりの分が吹っ飛んでしまっています。残念至極と言わざるを得ないのですが、今後も担当省庁が上げ続けることを狙っているとすれば、日本の個人消費はお先真っ暗で、希望が見えません。日本では司法が財政均衡主義に立った判断を下した判例がいくつかあるので、公務員の人たちとしては財政均衡主義的な方向についつい進んでしまうのかもしれません。

また、財政出動もやってるのかやってないのか…であり、産業育成も日本人としてはAI開発におおいに取り組んでもらって個人的にはベーシックインカム社会来るべしと思っていますが、なんとなくアメリカや中国に水をあけられつつあるような…ところではあります。

アベノミクスに点数をつけるのであれば、日銀の金融緩和が90点(短期的には効果はあるけど、あんまり長くやると銀行の体力が尽きてばたばた倒れる…)、財政出動は50点(高すぎるかも)、産業育成も一時TPPで農協改革というちょっと的外れな方向に進んだので30点。総合すると、90+50+30=170点で、それを3で割ると56点(小数点以下切り捨て)といったところでしょうか。

うーむ…黒田さんに頼り切ってしまい、黒田さん効果もあんまり上がらなくなった今、財政出動も研究開発もばしっとやってほしいところです。アメリカと北朝鮮が戦争になるかならないかで世間が騒いでいるところですが、ちょっと落ち着いてみたくて、アベノミクスについて考えてみました。

スポンサーリンク


2017年秋衆議院解散説

安倍晋三首相が年頭の記者会見に臨み、まず冒頭で小泉純一郎さんの時の郵政解散、宮澤喜一さんの時の55年体制崩壊の解散、更に佐藤栄作さんの時の解散に触れていたことはなかなか意味深なようにも思えます。新聞記者から衆議院の解散時期について質問され「今年に入って解散の二文字は全く考えていなかった。アベノミクスが最優先。予算の成立が最優先」と答えています。

では、以上の安倍首相の言葉から、解散の時期について考えてみたいと思います。まず第一に衆議院の解散について首相は嘘をついていいというのが日本の憲政の慣習になっています。また、衆議院の解散は首相の最大かつ絶対的な権能とも言えますので、首相に就任した人は誰でも常に衆議院の解散については考え続けるに違いありませんから「解散の二文字は全く考えていなかった」というのは100パーセント嘘と言ってもいいですが、慣習上全く問題ありません。

2018年まで解散がずれ込めば任期満了が近づきますのでスケジュール的に後がない解散になってしまい、麻生太郎さんが首相だった時のように苦しい立場に置かれてしまいます。安倍首相の支持率は上々の状態が維持されている昨今、敢えて不利な立場に追い込まれる来年まで解散しないということは考えにくく、年内には解散があると考えるのが妥当ではないかと思えます。

安倍首相としては弱い所を衝かれない状態で解散を打ちたいところと思いますが、今日の記者会見で「経済最優先」を首相が強調していたということは、予算を危機にさらしかねない年度内解散は考えていないとも受け取ることができます。今年早期の解散は「予算より党利党略が大事なのか」という批判を招きかねず、「経済最優先」の旗印を充分に振ることができなくなります。実際に株価などに微妙な影響を与えるでしょうから、年度内の解散というのはなさそうに思えます。

また、今年は国会で天皇陛下のご譲位に関する議論がなされなくてはならず、デリケートな問題ですので、この件についてけりが着くまでは解散のような緊張を強いる日程は組みたくないという心理も働くのではないかと想像することができます。仮に関連する法律が成立する前に解散を打てば「天皇陛下より党利党略が大事なのか」という批判を招きかねず、そこは避けたいはずです。またTPP法案のようにしらばっくれ強行採決というわけにもいかない案件ですので「議論を尽くす」と言い切れる状態にする必要があるでしょうから、日程的に何日までに法律を成立させるという性質のものではありません。充分に時間を取りたいはずです。そうすると今年前半から夏にかけては解散の日程は組みづらいということも言えそうです。

もう一つ、安倍首相の不安材料としては、若手議員の質に対して疑問符がついているということも払拭できないところと思えます。2012年当選組が風に乗っかって当選してきた人たちなので、よほどの風が吹かないと枕を並べて討ち死にということも考えられないわけではなく、石破茂さんが幹事長になった時に、相当締め付けようとしたようですが、有権者の目からは小学生を相手にしているような指導をしているようにも見え、かって良くなかった気がしないわけでもありません。追い込まれてはいないと言い張れるギリギリまで現状を維持し、風を吹かせて再選させるというシナリオを私だったら考えるかも知れません。

そういう風に考えると、天皇陛下のご譲位に関連する法律を成立させた後で、選挙で訴えることのできる目玉なり大義名分を用意して解散を打つということをざっくりと想定することが可能です。「経済優先」は「財政優先」ではありません。やはり前回の総選挙では消費税増税先送りを訴え、野党が消費税の増税を訴えるというなんかあんまり見たことのない選挙になりましたが、与党が増税の先送りなり減税なりを訴えるというのはなかなか鬼に金棒的な強さを発揮するものと考えることができます。となれば、次は2019年まで先延ばしされた消費増税を更に先送りするか、或いはこれ以上増税しないと法律を書き換えることを公約にするか、場合によっては消費税を5パーセントに戻すために新しく法律を作るというような公約で、どどーんと減税与党という看板で押し出してくるのではないかという気がしなくもありません。消費税を下げてほしいというのは個人的な願望も入ってはいますが、以上、2017年秋衆議院解散説でした。

第一次安倍晋三内閣‐窮する

賛否両論ある小泉純一郎の長い時代が終わり、第一次安倍晋三内閣が登場します。安倍氏は保守色が強いことで知られていたため、強い拒否反応を示すメディアもありましたが、当時の安倍氏には批判を恐れずに信念を貫くという意識がおそらくは強かったのではないかと推察できます。

北朝鮮の核実験に対する経済制裁の方針を打ち出し、国連北朝鮮制裁決議を引き出したり、韓国の廬武鉉大統領との会談や中国の胡錦涛主席との会談するなどして、北朝鮮封じ込めの戦略をとっていたようです。

一方で国内政治では、小泉改革への反動の機運のようなものが生じており、安倍氏は小泉氏によく仕えた人で、路線的にも継承していますので、そういう意味での風当たりは強かったかも知れません。大臣の不祥事の続発も安倍政権に打撃を与えていました。また、小沢一郎さんが民主党党首に迎え入れられ、選挙で安倍氏を苦しめることになっていきます。

小沢一郎は小渕恵三首相が倒れた後は、ただただ黙して選挙で手勢を増やして行くということに徹しており、それが自民党の議席ではなく民主党の議席を奪っていくという形で進んだため、当初非小沢野党として結党した民主党としてはこのままでは小沢氏の党に野党第一党のポジションを奪われるという危機感があり、小沢一郎を民主党に取り込むことで、小沢に食われるという現象を食い止めたという面があったように思えます。参議院選挙で民主党が大躍進を果たし、自民党としては小沢一郎の選挙の強さに改めて舌を巻かざるを得なかったわけですが、これを受けて、自民党内では安倍おろしが表面化し、福田康夫首班が取り沙汰されるようになります。

安倍晋三さんはこの難局を内閣改造で乗り切るつもりだったようですが、改造後一か月ほどで体調不良を理由に総辞職を表明します。安倍さんが若いころ胃腸がよくないという話は流れていましたが、それを理由に総辞職するというのは多くの人に衝撃を与えたようです。強いプレッシャーによる健康不安は普通の人でもあることですから、そういった諸事情で心が折れてしまったのかも知れません。

安倍晋三さんは後に、55年体制以来初となる首相再登板を果たしますが、人間修行を積み、より柔よく剛を制す感じになっており、長期政権になっています。安倍さんを支持するか支持しないかは別の問題として、失言、失態、凡ミスが少ないという点に、過去の失敗からよく学んだのだという印象を受けます。


プーチン来日後の衆院解散を想定してみる

スポンサーリンク



安倍首相の支持率は概ね高い数字が出ています。就任以降、周到かつ慎重に仕事を進めていることの結果を出しているように思います。安倍さんのことが好きか嫌いかは別にして、周到に準備をして大きなポカが出ないように注意をしていることは誰もが認めるところではないかと思います。

安倍首相の選挙に向けての戦略としては、外交面でウルトラCを出し、ばーっと人気が上がったところで解散を打つ、ということを想定しているように見えます。拉致被害者の方が少しでも帰国して、そこで解散するというのを考えて来たように思います。もし、拉致被害者の方が帰国すれば、政局的に安倍さんにとって有利なことはもちろんのこと、政治信念という意味でも安倍さんの本望でしょうし、国民としても歓迎する人が当然たくさんいると思います。

ただ、残念ながらその方面での進展はありません。一方で、成果を挙げていると思えるものも多く、安倍政権の外交の現状は

1、アメリカのオバマ大統領は安倍首相のことを話しのできる相手だと認めている(ただし、退任が近い)
2、韓国の朴クネ大統領も安倍首相とは話しができるようになったと考えている(ただし、退任が近い)
3、中国とは対立が鮮明化している(賛否別れると思います)
4、ロシアのプーチン大統領と仲が良い(ただし、アメリカはいい顔をしない)
5、中央アジアを訪問したり、インドとの距離を近づけたりと多元的な外交をしている

ざっくり言って上述のようなところだと思います。更に付け加えるならば、オバマ大統領の広島訪問は、これも賛否あるとはいえ、私は自分が生きている間にあのような光景を見る日が来るとは思いませんでしたし、「訪問したから、なんなの?それで被爆者は救われるの?」という疑問を持っていた一方で、やはり感動しました。それが参議院選挙で勝利したことの一因になったことは敢えて論じるまでもないことと思います。また、もうちょっと付け加えると、フィリピンの新しい大統領が、おそらくは大アジア主義的な発想法を持っている人であるため「アメリカ人は嫌いだが安倍とは仲良くしようぜ。もちろん中国とも仲良しだ」というスタンスで外交で臨んでいるように見え、これは想定外のちょっとどう考えていいのかよく分からない不確定要素と呼べるもとも思えます。

いずれにせよ、今、支持率は高いですから、仮に今解散しても充分に自民党は勝つと思えます。自民党が好きか嫌いかは関係なく、ちょっと引いた目で見てもそう思えます。自民党がいいというよりも、民進党の両院議員総会の様子を見ても分かるように、ほぼ空中分解に近く、民進党所属議員の中に「もう、民進党のことはどうでもいい」と思っている人が結構いるように見受けられ、安倍政権としては敵失に助けられているという部分もあるかなあと個人的には感じます。そういうあれやこれやを含めて、いつ解散しても良く、先日の参議院と同日選挙をやっても勝っていたと思いますが、安倍首相は憲法改正を最終目標に入れていますので、そのためにはどうあってもせっかく手にした衆議院の3分の2の議席を減らすわけにはいかず、これまた慎重に、ちょうどいい解散の時期を見定めている状況だろうと思います。あまり慎重になりすぎると任期満了の追い込まれ解散になってしまいますので、そうなる前に解散したいわけですが、プーチン大統領訪日で北方二島先行返還で話を収めて人気を高め、解散してもう一回大勝ちするというシナリオがあちこちから聞こえてきます。

さて、問題は交渉相手はかなり手ごわいということです。日本側としては「四島の主権が日本にあることを認めるなら、二島先行返還で、択捉国後はゆっくりと話そう」という姿勢らしいですが、その見返りとして相当に高く売りつけてくる、或いは二島返還で問題は終了させようとしてくるなどのロシア側の反応が予想されます。また、クリミア併合以後、ロシア締め付けを続けてきたアメリカの反応も心配しなくてはいけないように思います。今後の東シナ海でどのような動きになるかは、日米がどれだけ協力を維持できるかによって変わってきます。そういう意味では、ロシアとは日本は先抜けして仲良くするけど、東シナ海のこともよろしく、がどこまで通じるかという疑念も湧いてこないわけではありません。

それやこれや、見守らなくてはいけない要素が沢山あります。そもそも本当に二島が帰ってくるかどうかも分かりません。子どもの時から「北方四島」という言葉を聴かされてきましたので、二島だけでも帰ってくるとは心情的には信じることがうまくできません。また、二島だけで済ましてしまおうとされたら、却って良い結果とも言えなくなってしまいます。

そうは言っても二島返還が現実化するとなれば「まさか、そんなことが生きているうちにあるなんて」的なお祭りムードになるでしょうから、その後選挙ということならば自民圧勝ということになることでしょう。そういうシナリオで行くかどうか、行けるかどうか、しばらくは見守りたいと思います。二島返還で、残りの二島は長期租借というところまで漕ぎつけることができれば凄いと思います。

スポンサーリンク