2017年秋の選挙期間に突入しましたから、選挙で苦労している人に対して申し訳ないので、揶揄するでもなく、嘲笑するでもなく、真面目に小池百合子と石破茂と小沢一郎と渡辺美智雄と加藤紘一という題で考えたいと思います。
小池百合子さんは選挙後に石破茂さんの首班指名を模索したとの話が飛び交っています。私がもし石破茂さんと親しい関係であれば、断るように進言すると思いますし、多分、石破さんサイドは断っていると思います。自民党でもうあとひきなんだけれど首相になれないという人を引き抜こうとした例としてぱっと思い出すのが小沢一郎さんが渡辺美智雄さんを引き抜こうとした時のことです。一時期、渡辺美智雄さんは乗り気だったようなのですが、小沢さんとの会談予定の前日、眠れないために睡眠薬を使用した渡辺さんが朝起きれずに会談に遅刻。小沢一郎さんは予定通りに現れないのならそれまでよとピーターパンのステージを見に行ったということがありました。
小沢一郎としては渡辺派の人数が欲しかったし、渡辺美智雄さんとしては、自民党を割って出てでも首相になりたい、健康状態がよくないので今しかないという追い詰められた状態でしたが、互いに利害は一致していたとも言えます。しかし、小沢一郎がピーターパンを優先したことや、渡辺派からついてくる議員があまり多くないということで、相互の関係がぎくしゃくし始め、渡辺さんも意欲をなくし、この話はお流れになったと記憶しています。
小池百合子さんは石破茂さんに同じ手口で仕掛けたということになりますが、最近の小池さんは策士策に溺れる感が強く、今回の選挙では希望の党は必ずしも有利とも言えないようです。
さて、首相になりたくて反乱を起こした人物と言えば加藤紘一さんです。森喜朗首相の不信任決議案に賛成する構えを見せ、加藤紘一待望論が出たらそこに乗るようにして首相になるつもりだったのが、果たせませんでした。涙を拭おうともせずに自派の議員たちに敗北を告げる場面は今も鮮やかに脳裡に浮かびます。この時、「あんたが大将なんだから、あんたが行けと行けばみんな行くんだ」と励ましたのが谷垣禎一さんでした。
日本の議会制民主主義でやっかいなところは、建前では政策を同じくするものが集まって政党を作ることになっていながら、現実には権力を得るための合従連衡、個利個略が優先されてしまうことです。加藤紘一さん、渡辺美智雄さんにはある種の悲劇性がありましたが、それも政策よりも権力を優先しようとしたからとも言えます。いっそのこと党議拘束というのをなくしてしまえば、そのような悲劇も少しは減るのではないかという気がします。