サンダース氏の弱点

2020年のアメリカ大統領選挙がいよいよ本格化しようとしている。
民主党指名争いでは、私はバーニー・サンダース氏が勝利する可能性が非常に高いと思っているし、実際にこれまでの流れを見ても、このままサンダース氏で決まってしまいそうな勢いだ。バイデン氏はどうしてもやや古い政治家の印象があり、多くのアメリカ人がマケインとバイデンとペンスを写真を見せられて、さて誰がバイデンでしょうと言われると間違えそうな気がしてしまう。バイデン氏は個性という点で非常に劣勢だ。ブルームバーグ氏は金持ち過ぎるのが逆効果な面がある上に、スキャンダルまで持ち上がり、しかも個性という点でとてもサンダース氏ほどおもしろくない。サンダース氏のおもしろいところは、78歳という高齢にして挑戦者という極めてアグレッシブなポジションに立っており、民主党のエスタブリッシュメントとも距離を置いている生き方にダンディズムを感じさせるところだ。

だが、彼にもやや弱点らしいところが見えてきた。彼が人気の大きな理由の一つは、彼が社会主義的な政策で社会的弱者を救おうとしているところにあるが、また同時にそれが弱点にもなっているのである。社会主義者であるがゆえに、過去にソビエト連邦とどのような関りがあったのかは陰に陽に人々が知りたがっているところで、仮にも冷戦中、事実上の敵国同士て火花を散らしたソビエト連邦と内通していたというような印象を与えるエピソードがあれば、それはライバルたちから見て、格好の攻撃ポイントになることは必至だ。前回ヒラリーが自分のメールを自分のサーバーで開いたというだけで、あれだけ大事になり、ヒラリーだけは絶対に嫌という層が形成されていったことを思えば、仮にそれが過去のことであったとしても爆弾になり得る。今は証拠がないので疑惑や悪い想像のような範囲のものだが、証拠が出てくれば何もかもめちゃくちゃになってしまうだろう。ましてやプーチンからの支援を受けているのではないかとも勘繰られているのだから、やはり証拠が出れば即アウトになる。もちろん、本人はそのようなことを認めていないし、今後も否定し続けるだろう。もっとも、ビル・クリントンがホワイトハウスの執務室で研修生と浮気したことについては、彼はテレビカメラの前で涙を浮かべて国民に謝罪し、そこまで反省しているのなら、ま、いいんじゃない。といった程度のゆるしを得たことがあるから、証拠が出てきたとしても、あのバーニー・サンダースが涙を流して国民に許しを乞うたということになれば、形成の再逆転の芽はある。

弱点はそれだけではない。今のサンダース氏の立場で社会主義という言葉を振りかざしても、人々はまだそれがどれだけ体勢に影響するのかよく分からないので様子見みたいなところがあるが、サンダース氏勝利が現実味を増してくると、そもそものアメリカの国是である自由と民主主義が社会主義と許容できるかという原則論にぶつかってしまう。ライバルはここを突いてくるだろう。共和党であれば民主党であれ、アメリカの憲法の理念を受け入れるという範囲の中での政権争いなのだから、そこから逸脱している可能性の高いサンダース氏にはやがてそれに関わる厳しい論難があると覚悟した方がいい。もっとも、アメリカの憲法が本当に社会主義を許容しないかどうかについて本気で考えたことのある人は少ないだろうから、サンダース氏が堂々と社会主義こそアメリカニズムだとするような逆転の発想的演説をして、国民がそれを受け入れるならば、サンダース氏にはまだ可能性が残されることになるだろう。

もっとも難しいのは、本当にサンダース氏が当選した場合である。有権者は今の段階で、サンダース氏がサン・シモンの空想的社会主義みたいな国を建設してくれるというある種の幻想に浸っている人が多いように思える。しかしアメリカはそのような建付けにはなっていないため、サンダース氏の社会主的政策がことごとく実現しないことは目に見えている。オバマケアのような社会主義の入り口みたいな政策であれだけ揉める国なのだ、より本質的な社会主義を目指すサンダース氏が軋轢を引き起こすことは必至だし、仮にサンダース氏が妥協的になったとすれば有権者の幻滅も必至だ。サンダース氏は早晩、進退に窮することになるだろう。

そういうわけでサンダース氏を手ぐすね引いて待っているのがトランプ氏だ。トランプ氏はおそらく民主党で勝ちあがってくるのはサンダース氏だと見ているはずだ。そして、私が上述したような諸事情はとうに承知の上でサンダース攻略の知恵を練っているに違いないし、不都合な証拠だって手を広げて探しているところかも知れない。トランプ氏としては誰が民主党で勝ち上がってきたとしても勝てると踏んでいると思うが、サンダース氏をつぶすことについてはより入念であるはずだ。サンダースとトランプという稀有な大統領選挙本選を、私は結構楽しみに待っているし、サンダース氏が勝てば、それはそれで面白く、お手並み拝見したいところだ。