トランプ大統領は、もう限界かも知れない

ドナルド・トランプという人をどう評価するかはそれぞれの自由だが、シリア撤退で一機に風向きが変わったのではないかと私には思える。アメリカが有形無形にイスラエルを支えてきたことは周知の事実で、イスラエル支援は第二次世界大戦後の世界ではほとんどアメリカの国是と言えるほど明確なものであり続けた。

ドナルド・トランプ大統領には様々なスキャンダルが湧いて出て、いちいち確認するのも面倒なくらいで、個人的に彼のスキャンダルはどうでもいいと言えばどうでもいいことではあるが、様々な関係者が驚きあきれる中で、娘さんのイヴァンカさんとその旦那さんのクシュナーさんが絶対的な親イスラエルを貫いていることで、おそらく多くの人が「イスラエルを支え続けるのなら、少々のことは大目に見る」と考えていたはずなのだが、シリアから撤退するということは、中東から手を引くということであり、控えめに言ってイスラエルに関することも手を抜くという風に受け取ることができるだろう。というか、そういう風にしか見えない。

で、トランプ氏の本心は分からないものの、今後は中国を主敵にするのだとの観測がある一方で、中国・北朝鮮とは手を結ぶのか結ばないのかよく分からない駆け引きが続き、トランプ政権を支えるメンバーの交代が相次いでいるのは、そういうトランプ氏の動きについていけない人が大勢いるということも示している。特にマティス氏の国防長官辞任はかなりヤバい事態になっていると見るのが相当ではないかと思う。

イスラエルを支える意思がないのであれば、これだけ悪評の高い人物を大統領として支え続ける義理はないと多くの関係者が考えるようになれば、ドナルド・トランプ大統領は仕事を継続することができなくなるだろう。共和党としても自滅のシナリオみたいで歓迎はしたくないだろうが、FRBの利上げによる景気の減速はトランプ大統領の足を引っ張っているし、ロシアゲートも片付いていないだけでなく、下院では民主党が盛り返した。共和党内部でトランプ氏を支える理由はなくなりつつあるように見えるし、もはや一度は大統領の座に就いた身である本人も弾劾される前に早々に身を引いて勝ち逃げしようと考えるかも知れない。

トランプ相場も訳の分からないまま終わろうとしているし、はやりおもしろいだけのおじさんを大統領に選んだことの代償は大きかったのかも知れない。政権運営そのものが不可能になって自発的な辞任になるかも知れないし、次の大統領予備選挙で共和党の指名が獲れないということもあり得るし、共和党の指名が獲れても民主党の候補との戦いに敗れるかも知れない。今の段階では上に述べたどのシナリオも実現し得る。親イスラエルを貫かないおもしろいだけのおじさんは、共和党にとってももはや不要な存在になったのではないかと私には思える。トランプ政権っていったいなんだったんだろうと首をかしげる2019年初頭なのでした。









トランプ大統領は移民制限で危ない橋を渡っている

トランプ大統領が、自分の裁量でやれる大統領令なるものを濫発し、その中にはメキシコとの国境の壁建設や特定の属性の人の移民制限などを含んでおり、TPPからの離脱は賛否あれ、まあ、政治判断と言えますが、それ以外の部分ではやはりちょっとヤバいのではないかという気がしてきます。

この大統領令に則り、数百人の人が空港で足止めをされたということなのですが、そんなことをして大丈夫か…人間性に対する重大な挑戦となってしまわないのか…と見ている側も心配になってきます。イスラム圏でのトランプさんへの不評はもとより、メキシコでもアメリカ製品の不買運動が起きているらしく、そのうえ、これは関係ないかも知れないですが、パナソニックの掃除機部門がアメリカから撤退するという話まで出ています。

もし、人口の比率のようなものを考えた場合、空港で足止めされた人の数は、母数に対して決して大きい比率を占めることはありません。しかし、その事実によって自尊心を傷つけられる人の数10億人を超えるものになるはずです。その人たちがトランプ大統領とアメリカに対して遺恨を持つという流れになっていますので、事態は想像するよりも遥かに深刻なものだと言えるかも知れません。

ソクーロフ監督は昭和天皇を描いた『太陽』で、日本人がアメリカと戦争することを決心した理由の一つに排日移民法があったと示唆しています。これは『昭和天皇独白録』をその根拠にしていると思われます。日本人でアメリカに移民したいと思っていた人は日本の総人口と比べれば決して多数ではありません。ほんのごく一部と言っていいかも知れません。しかし、自尊心を傷つけられたという無念さのようなものは、日本社会で共有されたと見てもいいように思えます。日本がアメリカと戦争したことが正しいとは思いませんが、自尊心を傷つけられるというのは、戦争を決心させる大きな要素だということは否定できないのではないかと思えます。

まさかこれですぐに新しい戦争が起きるとは思いませんし、今までも散々戦争が行われてきたことを思えば、戦争なんかやってほしくないですが、戦争はどちらか一方が決心すれば起きるということを考えれば(また、正規軍が交戦するという要件が現代は必要ないことも合わせて考えると)、トランプさんは実は危ない橋を渡っているのではないかという気がしてこなくもありません。

トランプさんの外交姿勢はまず絶対にぶれないものとして親イスラエルがあります。そのことに特に文句はありません。アメリカにはアメリカの事情があるでしょう。プーチンさんに接近する理由としては、ロシアと仲良く中東を分け合って、イスラエルの安定を目指すというシナリオがあるのかも知れません。その場合、アサドさんが追放されるのか、亡命するのか、それともちゃっかり居座るのかは分かりません。中国・台湾のことは有体に言えばどうでもいいと思っているはずで、日本には「応分の負担」を求めるものと推察します。一方で、トランプさんのスタッフには反ロシア、反中国の人が顔を揃えてさおり、はっきり言えばわりとバラバラというか、チームとしての体をなしているかどうかすら疑問に思えなくもありません。

トランプさんの大統領就任前は世界はあっけにとられつつ、その去就を見守るという印象でしたが、今はかなりはっきりとアゲインストの風が吹いているように思えます。トランプさんとしては中間選挙で勝たなくては再選まで行けないという思いがあるでしょうから、元々の支持者に応えつつ、アゲインストの風に対応することが迫られるわけですが、現状のところ、あまりいい知恵を持っているわけでもなさそうに見えます。私がヒラリークリントンさんだとすれば次の大統領選挙を目指して準備を始めると思います。中間選挙で勝てなさそうな場合、議会もトランプさんには嚙みつくでしょうから、予算を人質に取られるうえに重要な法律がそもそも提出できないという事態も起きないとは言えません。

世の中とにかくトランプ、トランプで、ちょっとトランプの話題はやりたくないとも思っていたのですが、どうも、注視せざるを得ないようです。

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