イギリス東インド会社と江戸幕府

イギリス東インド会社は16世紀にイギリスによって設立された国策会社ですが、短期間ではあるものの、江戸幕府が施政する日本と貿易を行っていた時期がありました。

1611年、当時のイギリス国王ジェームス1世の国書をともにジョンセーリスが来日し、徳川家康と謁見し、家康の許可も得て平戸にイギリス商館が開かれ、リチャードコックスが商館長として仕事をすることになります。

リチャードコックスの在任中、平山常陳という人物がカトリックの宣教師を乗せた朱印船をマニラから日本に向けての航海中にイギリス・オランダの商戦艦隊の襲撃を受け、平戸に曳航されるという事件が起きており、江戸幕府は既に切支丹に対する禁令を出していたことから、その後の切支丹迫害に拍車がかけられていくことになります。

この事件からは1620年の段階では、ヨーロッパのカトリック系国家と新教系国家の間の東洋貿易に関する覇権争いが激しく、同じ新教の国であるイギリスとオランダの船が協力してカトリック系の排除に動いているということが分かります。イギリスとオランダとの間の貿易競争も激しかったようですが、少なくともカトリックに対する態度としては一致していたという理解の方がより真相に近いかも知れません。

1623年にはオランダ人がインドネシアのアンボイナのイギリス商館を襲撃し、商館員が全員殺害されるというアンボイナ事件が発生します。この事件をきっかけに、平戸のイギリス商館は閉鎖され、ヨーロッパの対日貿易はオランダ独占するという状況になります。

1673年にイギリス船籍のリターン号がチャールズ2世の国書を携えて長崎に入港しますが、チャールズ2世がカトリックの国であるポルトガルのカタリナ王女と結婚していることを問題視し、通商を拒否し、イギリスは対日貿易からは完全に締め出されることになりました。

江戸幕府はオランダ商館長からのオランダ風説書によってチャールズ2世とカタリナ王女との結婚を知っていたということですが、飽くまでも政略結婚だと思えば、カタリナがカトリックの国の出身者かどうかは江戸幕府にとってはあまり関係なさそうにも思え、どうでもいいような気もしますし、対日貿易の独占を狙うオランダが、カタリナ王女との結婚をことさらに大袈裟に取り立てて徳川幕府を煽ったという一面もあるのではないかという気がしなくもありません。一方で、カトリック宣教師たちは実に熱心かつ勇敢に日本に渡ってきていますので、カタリナ王女を通じてイギリスに渡りがつくのなら、それをツテにしてやはり日本上陸を狙う可能性も確かにあり、カトリックを「完全に排除したい」と考えるならば、江戸幕府の判断は妥当なものだったのかも知れません。

その後、イギリスはインド経営に軸足を移すようになり、日本からインドネシアまでのラインはオランダが握るようになりますが、情勢はゆっくりと逆転してゆき、19世紀に入るとナポレオンがオランダを自身の版図に組み入れることによってオランダに対するハプスブルク家の影響力が排除されるようになり、反ナポレオン勢力がイギリスにオランダの海外植民地の接収を依頼し、イギリス船籍のフェートン号が長崎に姿を現すというフェートン号事件が起きます。

1600年代は戦国時代の名残もあってか江戸幕府は強力で、イギリスの船を一方的に拒絶することができましたが、フェートン号事件では防衛担当の藩兵や長崎奉行所の役人が右往左往しており、時代の変化を感じさせられます。

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イギリス人航海士のウイリアムアダムスは、ロッテルダムでオランダ船籍のリーフデ号に乗り込み東洋への航海に出発します。しかし、他国船に襲われたり、寄港先で現地人に襲われたりして人員が減少していき、残り少ない乗組員たちとともに、彼は豊後の国、今の大分県に漂着します。

関ケ原の戦いの少し前の時期、徳川家康が彼と面会し、西洋事情をいろいろと問い質します。ウイリアムアダムスを江戸に招き三浦按針という名前を与え、250石の知行も与えて彼を外交・技術顧問として重宝したようです。この他にも同じ船に乗っていたオランダ人航海士のヤンヨーステンにも名前を与え、江戸で屋敷を与えたといいます。ヤンヨーステンは耶揚子という名前を与えられ、今の東京駅の八重洲口の「八重洲」は耶揚子がなまったものであると伝えられています。織田有楽斎の屋敷があったから有楽町というのと同じ感じです。他にもリーフデ号の船長だった人物も徳川家康に仕えたと言われます。

ヤンヨーステンと船長はオランダに帰国するための航海でなくなってしまいますが、三浦按針は日本に残り、50歳以上まで生きて日本で亡くなります。当時としてはわりと普通の年齢で、充分に生きて死んだということができるかも知れません。
イギリス東インド会社のクローブ号が貿易を求めて平戸に来た際、三浦按針には帰国するという選択肢もあったようですが、彼は日本に留まりました。その心境というものは想像するしかありませんが、知行も与えられて専門家扱いされていたので、日本の居心地がそこまで悪いというわけではなかったのかも知れません。

三浦按針は日本人女性と結婚し、息子のジョセフと娘のスザンナをもうけたとされており、息子のジョセフは二代目三浦按針として貿易などをやっていたようです。ただし、ジョセフの晩年については知られておらず、その後、子孫が続いたかどうかも分かっていません。日本がヨーロッパとの貿易を制限する方針をとったことで、ジョセフはあまり活躍の場を得ることができなくなったのかも知れません。アンボイナ事件により、イギリス東インド会社の劣勢が決定的となり、ヨーロッパの対日本貿易はオランダが独占するようになっていきますので、そのこともイギリス人の血を引くジョセフの人生に影を落としたのではないかとも思えます。子孫がいるという噂もあるようですが、何代も続くうちに見た目も普通の日本人なのかも知れません。また、子孫の方がいらっしゃるとしても、ご本人もそのことを知らないとかそういう感じかも知れません。

アメリカ映画『トリフィドの日(人類SOS)』のマッチョな冷戦

60年代らしい、レトロな感じのSF映画です。

ある日の夜、流星群が夜空いっぱいに飛び散ります。翌日になると、流星群を見た人は全て失明しています。目の手術のために包帯をしていた主人公の男性ビルは朝になって包帯を解いてもらうはずが誰も来ないので自分で包帯をとります。世界は一変しており、街を歩く人は盲目の人ばかりです。文明が機能しなくなり、人々の規律が失われていきます。ネヴィルシュートの『渚にて』では人類が滅亡するその瞬間まで矜持を守り抜く人々の姿が描かれますが、この映画ではそんなことはありません。ここぞとばかりに悪さをする人もたくさん登場します。

トリフィドという肉食の植物が各地で繁殖し、人を襲います。植物なに動きます。まるで動物ですが植物という設定になっています。各地で人が襲われ、瞬く間に人がいなくなっていきます。

主人公のビルは荒れたロンドンで女の子に出会います。学校から逃げ出して貨車に隠れて夜を過ごしていたために流星群を見ておらず、失明していません。二人はロンドンから離れてボートでフランスに逃れます。棄てられた自動車がたくさんありますから自動車に乗ってパリに行き、パリも全滅状態だということを知ります。ラジオでは「こちら東京、街が火事です」みたいなことも流れています。日本人の役の人は全然日本語が言えていませんので「こちら東京、街が火事です」は私の好意的な解釈です。

フランスの田舎の方で目の見える人に出会います。目の見えない人たちを助けている屋敷へと誘われます。ですが屋敷には流星群を見なかったので失明から逃れることができた受刑者たちが、文明の崩壊をいいことに脱走し、屋敷でどんちゃん騒ぎをしています。なんじゃこりゃと思っているうちにも周囲は肉食植物のトリフィドに囲まれています。

慌ててビルと女の子と屋敷に住んでいた女性との3人で脱出します。残された目の見えない人々は受刑者ともどもトリフィドの餌食です。途中で馬車に乗り換えますが、他の車が見つかると馬も放棄です。わりと簡単に「現実的に」いろいろ見捨ててスペインを目指します。スペインの米軍基地ならなんとか助けてもらえるかも知れないからです。ラジオ放送はほとんど流れなくなっていますが、それでも周波数が合うとアメリカ軍の救援に関する放送を聴くことができます。潜水艦に乗っていた人たちは流星群を見なかったので問題なく行動できるため、生きている人はアメリカ軍基地へ来いと言っています。

最終的にはビルと女の子と屋敷にいた女性は見事危機を切り抜けて、途中で出会ったスペイン人夫婦と生まれたばかりの赤ちゃんも一緒にアメリカ軍に助けてもらうことができます。

灯台で研究生活している夫婦が海水をかけるとトリフィドが溶けることを発見してめでたしめでたし。人々が神に感謝して終わります。

60年代のアメリカらしく、主人公のビルはソフトマッチョな中年男性です。力が強く、喧嘩に強く、知恵と見識があり、いろいろな道具を使いこなせます。ラジオも発電機も修理できます。私のように手先の不器用な男にとってはうらやましい限りです。第二次世界大戦後のアメリカの理想の男性像という雰囲気です。舞台はヨーロッパですが、主人公のマッチョな感じが「this is amerca」という感じです。病室でタバコを吸う場面がありますが、今では考えられません。時代を感じます。

冷戦という時代背景も見逃せません。流星群が核兵器だとすれば、トリフィドなる奇怪な肉食植物は敵のスパイか工作員、或いは敵軍の上陸を連想させます。意思を持って拡大していく様子からナウシカの腐海にもちょっと似ているかも知れません。。最後にアメリカ軍の潜水艦に助けられるというのもそういう意味ではよく考えられています。ヨーロッパまで助けに来てくれる兵隊さんありがとうという感じになっています。『風が吹くとき』の老夫婦が静かに核戦争後の誰もいなくなった世界で死を受け入れていくことを思うと、この映画はそのような危機もアメリカンスピリットで乗り越えることができるぜ、という感じです。

レーガンとゴルバチョフの会見で冷戦が終わったと知った時、少年だった私は「ああ、これからの世界は平和になるのだ。しかも日本は西側で勝った側だから気分いい」と思ったものです。しかし世界はそんなに簡単ではなかったということはその後の歴史を学べば明らかと言えるかも知れません。やがてシン・ゴジラが制作されるのだと思うと、SFから時代を読み取ることもできそうです。

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イギリスのメイ首相が「来年3月末にやるよ」と発言している件

BBCのインタビューで、イギリスのEU離脱について、メイ首相が「来年3月末にやる」と発言しています。triggerと言っていましたので、trigger何を指すのか気になるなあとも思いましたが、インタビュアーが「じゃ、その時に文書を送って、それからどうなるんですか?」と質問し、「ネゴシエーションに入っていく」とメイ首相が返答しています。そのため以上のやりとりから、「3月末にEU離脱通知の文書を送る」という意味だと判断できます。

メイ首相は当初残留派でしたし、イギリス国民もびびっているぽいので、このままぐだぐだ言って紆余曲折し、「残留」を訴えて総選挙に打って出て、国民投票の結果を事実上無効化するような奇策もあるのでは、という見方も可能でしたが、メイ首相が上記のような発言をしたことで、そのような変化球はなくなったと見ることができそうです。

メイ首相の就任当初、EU離脱の件でどういう風に落とし前をつけるつもりだろうかと誰もが感じたと思いますが、BBCのインタビューでは「(きちんと通知することで)ネゴシエーションがスムースになる」と発言していましたので、おそらくはEU委員会の方でも「早くやれよ」という態度で臨んできたため、ここは観念しようということになったのではないかと感じます。

国民投票の結果には法律的な束縛はないらしいのですが、民主主義の精神から言えば、国民投票の結果を無視したり、事実上無効にするというのは悪い前例になってしまいます。そういう視点から立てば、メイ首相の発言は至極まっとうなものだと思えます。

奇策を用いずに、正面から交渉することで、交渉次第では傷を浅くすませることもできるし、移民のことも大陸のEU諸国のお付き合いをしなくてすむのだから、禍福は糾える縄の如し、と考えたのかも知れません。

ドイツ銀行がいろいろ大変なことになってますので、「早めに切れるとまかり間違ってドイツ銀行がつぶれた際に傷が浅くて済むだろう。ドイツ銀行救済のためにイギリスもお金出してとか言われたら却って損だし、ドイツ銀行の次にはイタリアの危機もありそうだし、フランスが安泰なわけでもなし、EUでお荷物になっているのはギリシャだけではない。中央ヨーロッパの国々は移民先確保のためにもEU離脱しないと言っているし、ここは適当に関税条約だけ別に結んで先に船から脱出した方がお得だ」とまで思ったかどうか。

個人的には民主主義の精神を守り、筋を通すと発言してくれたことはよかったと思います。アメリカの大統領選挙についつい目が行く今日この頃ですが、久々にイギリスの話題でした。

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『エリザベス ゴールデンエイジ』の大人の女性のやたら強運なことと生きる覚悟

強運であることは、人生の成功に必要なことです。果たしてどうすれば強運が得られるかは誰もが日々探求することの一つではないかと思います。

『エリザベス ゴールデンエイジ』を観ると強運は勝手についてくるもので、努力とか人間性とかは関係ないのではないかとふと思ってしまいます。『エリザベス』では若い娘さんだったエリザベスI世は続編のこの映画で、大人の見事な政治家に成長しています。素晴らしい頭脳と豪胆さで難局を乗り切ります。

しかし、観れば観るほど気づくのは、その強運です。暗殺されそうになります。助かります。反逆されそうになります。摘発します。スペインが無敵艦隊で攻めてきます。勝ちます。それらの勝利に本人の努力は関係ありません。暗殺されそうになった時は、犯人の気まぐれで運よく助かります。スコットランドのメアリー女王の謀反は側近が見破ります。スペインの無敵艦隊を撃滅したのは本人ではなく部下です。そのような視点から観ると、運が味方しているからこそいろいろな難局を乗り越え、人生が切り開かれていくことが分かります。

え…そしたら、運を良くしたいと思えばどうすればいいの…?と私たちはため息をつくしかありません。

とはいえ、この映画では強運のヒントも観客に与えてくれるように思います。それは恐怖心に捉われないことです。暗殺されそうになったら騒ぎ立てず、来るなら来いと構えます。無敵艦隊が攻めて来たときに兵隊を奮い立たせるスピーチをします。そういう時に人心を掴むためには自分の安全を気にし過ぎないことが必要です。自分も一緒に死ぬ覚悟だと伝えるためには、逃げ道を絶つ覚悟が必要です。本当に死ぬ覚悟を持たなくてはそういう時にスピーチできません。

そのように思えば、大事なところで逃げない覚悟、いつが大事な場面なのかを見極める聡明さの両方がなくてはいけないということに気づきます。覚悟があれば聡明になります。ということは結局は胆力ということに集約されそうな気もします。スペイン艦隊が攻めてくる不安に押しつぶされそうな時、星占い博士の言葉でエリザベスは勇気づけられます。必要な時に必要なことを言ってくれる友人なりブレインがいるということも、大切な条件なのかも知れません。人を見る目も大切です。無敵艦隊が焼き討ちで滅びる様子を陸からエリザベスが見る姿はカタルシスに満ちています。形勢を逆転させ重圧から解放される、助かったという安堵、奇跡が起きたことへの感謝に溢れています。スペインの側に立てば不愉快だと思いますが、そんなことは考えずにエリザベスの側に立って観れば感動します。

全てが強運と胆力によってうまくいっているように見えますが、一つだけどうしてもうまくいかないことがあります。男性との恋愛がうまくいきません。第一作では元恋人に裏切られます。続編のゴールデンエイジではアメリカ大陸を探検する男に恋をしますが、彼はエリザベスの侍女と結婚してしまいます。眉毛が濃くて髭をそらずに色黒なので、男の目から見ると暑苦しいです。ですが、こういうタイプがもてるのかと思うと、私も見習わなくてはいけないかも知れません。うまくやらないとたんに暑苦しいのだけなので自分に合わないスタイルなら諦めた方がいいかも知れません。

エリザベスは政治家としては素晴らしい歴史的な成功を収めたとしても、一人の女性としては成功できなかったという言い方もできるかも知れません。そこに空虚が入り込んできます。しかし、そのようにして運命のバランスがとられていると見ることもできますし、政治家としては成功しても恋愛運には恵まれないということを受け入れることが人生をうまく回していく極意なのではないかという気もします。生きていれば嫉妬もします。落胆もします。不安で押しつぶされそうになる時もあります。狂喜乱舞する時もあります。この映画ではエリザベスが一人で観客の人生が投影できるようになっていると私は思います。観る人がそれぞれに自分の不安や苦しみや生きる喜びをエリザベスに投影できます。この映画を作った人はただものではありません。

この映画を観て運勢について考え、自分の生き方を省みることも有意義なのではないかと思います。

完全についでの話ですが、イングランドに攻めてくるスペインのフェリペII世が登場する場面はなんとなく手抜きです。一方でスコットランドのメアリー女王が処刑される場面は涙が出そうになるほど荘厳で作り込まれています。メアリー女王の処刑は日本で言えば大坂夏の陣の秀頼と淀殿と同じくらいにイギリスでよく語られる悲劇ですので、どこからも異議が出ないようにと特にエネルギーそ注いで作られたのかも知れません。

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ボリスジョンソン氏「EU離脱とヨーロッパ離脱は違う」の件

イギリスの新しい首相がテリーズメイさんに決まり、ボリスジョンソン氏は外務大臣として入閣しました。毒を以て毒を制す人事なのでは?という気がしなくもありません。外務大臣の立場になれば、以前のような言いたい放題というわけにはいきません。仮にもよその国とうまくやっていく責任者ということになりますので、「イギリスファースト」とか「イギリスを取り返す」とかみたいなことも、立場上、軽々しく言うわけにもいきません。

ボリスジョンソンさんの外務大臣として仕事をする初日になって、メディアに対し「EU離脱はヨーロッパ離脱を意味しない」と言っています。しかも「in any sense」ということですので、一切、意味しない、全然違うということみたいです。要するにトーンダウンしています。ヨーロッパに気遣いを見せています。

国民投票以前のボリスジョンソンさんを知っているメディアの人たちからは、ちょっと唖然…な感想が漏れてきそうな気がします。EU離脱派だった人たちは本当に離脱するとは思わなかった…と今は発言も抑制的で、軸がぶれ始め、できれば話を元に戻したいという様子を見て取れなくもありません。できるだけEU脱退通告の時期を遅くし、可能ならうやむやにし、場合によっては総選挙で問い直すという選択肢も出てきているあたり、イギリスはもしかするとなんだかんだ言ってEUから離脱しなくてすむように手を尽くすような気もします。

ドイツのメルケルさんとか欧州委員会のユンケル委員長とかは「出ていくなら早く出て行ってくれたほうがせいせいする。他に出て行きたい国は、イギリスがこれからどんな目に遭うかみきわめてからにしたほうが身のためだ」的な姿勢ですが、イギリスがEUを離脱しないことになったら胸をなでおろすでしょうから、双方、水面下でいろいろ模索しているかも知れません。ただ、けじめはつけさせるでしょうから、詫びを入れさせる、以前のような特別扱いを変更する、シェンゲン協定にも入らせる、なんならポンドもユーロにしてもらいましょうか、という話も出てくるかも知れません。

意外なところで打撃を受けているのはトランプさんではないかと思います。わざわざBrexitの日にスコットランドへ出かけて「これからはみんな自国ファーストだ」みたいな感じのことを言ってアメリカの有権者にいいアピールになると考えていたと思いますが、当のイギリスが二の足を踏み始め、ボリスジョンソンさんは転向気味でファラージさんはある意味逃走。トランプ節の決め手に使えなくなってしまった感じです。スコットランドに行ったのも無駄足を運んだというところではないかなあと思います。もちろん、まだ、アメリカの大統領選挙は分かりません。今はほぼほぼヒラリーさんの勝ちが決まりに見えますが、双方の党大会が終わり、直接対決がなされる中で、どんなハプニング、スキャンダル、失言問題が飛び出すか分かりません。トランプさんにとっても欧州情勢は複雑怪奇なのではないでしょうか。

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映画『エリザベス』の戦う女性の成長と演説力

イギリス映画の『エリザベス』は、ケイトブランシェットが主演し、深い歴史考証とリアリティの宿ったディテールなどで世界的に高い評価を得た映画です。

私も何十回も観ましたが、何度観ても飽きません。時代は16世紀の終わりごろです。日本では信長の時代です。イギリス王ヘンリー8世がローマカトリックから独立した英国教会を立ち上げ、イギリス国内は新教と旧教の間で血で血を洗う争いになっています。ヘンリー8世の娘のエリザベスは、王位継承権争いと宗教争いの両方の煽りを受け一度はロンドン塔に収監されますが、カトリック教徒のメアリー女王が亡くなったことで王位に就きます。スコットランドにも王位継承権を持つ者がいます。スコットランドのバックにフランスがいます。血縁と宗派で人間関係が複雑に入り組んでいて、誰がどういう順番で王位継承権を持っていて、なんでフランスが絡んでくるのか、調べれば調べるほどよく分からなくなってきます。保元の乱みたいです。

いずれにせよ、エリザベスは王位に就いた後も各方面から反発を受け、命を狙われます。議会にはノーフォーク公があわよくば自分が権力者になろうとしています。国内のカトリックの偉い大司教様もいらっしゃいます。フランス王にもスペイン王にもスコットランドもそれぞれに動機があります。イギリスのEU離脱騒動はこの辺まで絡んでくるので根が深いです。何百年も前のことが未だに影響しています。

この時代、イギリスはまだ強くありません。当時、最も成功しているヨーロッパの国はスペインで、世界の中心はトルコです。イギリスは辺境です。他の国に頭を下げなくては独立を保つことができません。強い国の王家の人と結婚して半分属国みたいにしないといけないというプレッシャーがかかってきます。当時はまだ政治は男性がするものという意識が強いです。女性が政治をすることへの反発もあります。

エリザベスはまず国内の議会を説得します。演説がうまいです。演説の練習をする場面が出てきます。ユーモアと反対者にとっての都合の悪い事実関係を織り交ぜて議論を自分にとって有利な方へと導いてきます。口八丁かというとそういうわけでもありません。常に誠実に自分の考えを言葉に出そうとしています。ただ、相手に伝わる言葉を選ぶために慎重に言葉を選びます。論的からいろいろ言われてさっと切り替えすのは天性の強さです。自分が有利になるために偽りを言うはないです。頭に来たら頭に来たと言います。感情を隠しません。自分に対して正直でいつつ、論敵、政敵、外敵と渡り合います。

王位に就いたばかりのころはまだまだ子供な感じです。戦争したり暗殺されかけたりを繰り返すうちにだんだん強くなっていきます。成長していきます。表情に変化が出てきます。大人の顔になっていきます。強さが出てきます。よくもこんな演技ができるものです。凄いとしか言えません。映画の最後はゴッドファーザー的解決で外敵政敵論敵を一掃します。観客はカタルシスを感じます。外敵の代表はローマ法王庁からエリザベス暗殺の目的で派遣されてきた修道士です。007のダニエルクレイグがその役をしています。この映画の時はまだまだ若いです。007シリーズのダニエルクレイグと比べると、この映画ではまだまだ子どもの顔をしています。今の方がかっこいいです。自分の鍛え方はんぱないのです。きっと。見習わなくてはいけません。

当時、イタリアはすでにルネッサンスですが、イギリスはまだまだ中世です。中世の終わりかけです。映画の雰囲気づくりが半端ないです。それぞれのワンショットが美術館の絵みたいです。中世のイギリスってこんな感じだったんだろうなぁとただただ感嘆するだけです。イシグロカズオさんの『忘れられた巨人』みたいな世界の延長みたいな感じです。役者さんたちの目の演技がいいです。目は口ほどのモノを言います。一瞬の目の動きで多くのことを語っています。一度か二度観ただけでは全部に気づくことはできません。ノーフォーク公に送り込まれた女スパイの目の動きに何度目かに観たときに気づきます。気づくと見事です。はっきりと、気づいた人にはしっかりと分かるように作られています。何十回観た後でも、演出の全てに気づいているかと問われれば不安です。まだまだ気づいていないディテールがあるに違いありません。

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ファラージ氏の手のひら返しになんじゃこりゃぁぁぁぁっな件

イギリス独立党のファラージ氏が党首辞任を表明したことは周知のことですので、詳しくは触れません。ファラージ氏のようなEU独立派が懸命に旗を振り、とうとう国民投票ではEU離脱に決まってしまいました。しかし、そこからどうも、離脱派が振るいません。というか脱兎状態になっているように見えなくもありません。

イギリス国民投票が行われた日の翌朝、Good Morning Britainというイギリスのテレビ番組にファラージ氏が出演した際、女性キャスターから「今後はEUに分担金を払わないことになったわけですよね」と質問され、ファラージ氏は「そうだ」と答えます。しかし、続いて女性キャスターが「その分NHS(イギリスの国民保健サービス)にお金が使われるということですよね」と女性が念押しするように質問すると、ファラージ氏は「いや。そんなことは私には保証できない。そのようなことを言ったこともない」と返します。生でこの番組をみていた人はここに来ての手のひら返しに椅子から落ちたのではないかと思います。

女性キャスター半分キレかけで「イギリス税金をNHSに使うというのは、離脱派が約束していたことではないのですか?」と突っ込むとファラージ氏は「それは有権者が誤解したのだ」と切り返します。なんじゃそりゃぁぁぁぁっと誰もが思ったに違いありません。

youtubeの動画をここに貼り付けてもいいかなぁとは思うのですが、もし著作権的な問題があると困るので、「Nigel Farage Good Morning Britain Brexit」というタイトルの動画をyoutubeで検索してもらえればすぐに見つかると思います。

離脱派の政治家たちが本当に離脱してしまって内心、まさかこんなことになるとは思わなかった…と思っているとすれば、国際連盟を離脱した時の日本政治家たちと同じ状態なのかも知れません。

ボリスジョンソン氏は党内の支持を集めきれないと判断し、更に言うと自分の手で離脱を進められないという判断もあって、首相候補から離脱。ファラージ氏は欧州議会の議員なので、この人もイギリス政治から離脱です。

ゴーブさんという人が次の首相やる気満々で、この人は粛々と(多分、強い意志を持って)EU離脱を進める模様とのことです。多くの人が「離脱派にペテンにかけられた~~~」と嘆く中でのゴーブさんの登場は、あるいは関係者の中でシナリオができていたとか…とふと思わなくもないです。推測です。欧州情勢は複雑怪奇です。

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ボリスジョンソン氏が保守党の次の党首にはならないと発表した件

BBCに拠ると、ボリスジョンソン氏が次の保守党の党首にはならないと発表したそうです。というか、本人がそう発言しているところをBBCが配信しているのでボリスジョンソン氏本人がそう言っています。

イギリスがEU離脱するかどうかは世界的な関心事で、私たち日本人も注目していましたが、ボリスジョンソン氏が次の保守党の党首になるかどうかとか、次の首相になるかどうかとか、関心を持っている人はあんまりいないと思います。私もボリスジョンソン氏ご本人に特に関心があるというわけではないです。

ただ、そんなことよりも、ボリスジョンソン氏がなぜ保守党の党首を目指さないことにしたのかというのは、イギリスのEU離脱事情を観察する上で考える価値のあることのように思います。

ボリスジョンソン氏はEU離脱派のリーダーで、国民投票になるまでさんざん離脱を煽って来た人です。しかし、実際に国民投票の結果が出てみると人々が動揺し、後悔の声が上がっていることは知られています。言い換えると「ボリスジョンソンに乗せられてえらいことになってしまった」と思っている人が多いため、党首になっても選挙に勝てない、かえって批判票が出やすいという判断が働いたように私には思えます。政治家は上を目指すのが基本です。首相になれる可能性があるのなら、目指したいはずです。しかしご本人の弁によると周囲と相談して決めたとのこですので、周囲から「やめたほうがいい。あなたでは選挙に勝てない」というような声があがり、ご本人もあまり傷が深くならないようにしたという感じがします。

国民投票そのものは法的拘束力がないそうです(なんじゃそりゃ!)。キャメロン首相は国民投票をやることが公約でしたので、その結果を尊重しないわけにもいきませんが、次の首相は知らぬ顔で通すことも法律的には可能です(民主主義の精神を無視することになりますので、誰が次の首相になっても、それをやる度胸のある人はいないでしょうけれど)。また、表面的にはEU離脱ということにし、EUと関税協定を結びなおすとかの方法で事実上何も変わらないと言う裏技も現状では模索されているものと考えることができます(EU側は「世の中そんなに甘くないですぜ」という対応をするでしょうけれど)。その際、ボリスジョンソン氏では裏技は使いにくいです。それまで煽って来ただけに、きっぱりと別れるという方向に事を運ばざるを得ません。そういう意味ではイギリスの国益的にも「ボリスジョンソン氏ではちょっと…」ということも言えそうです。

もしトランプ氏が大統領になって、ボリスジョンソン氏が首相になったら両者の首脳会談は見ものでしたが、そういうことにはならないようです。イギリス人が決めることですので、私がどうしたほうがいいとか言うことではないですが「おもしろい」首脳会談が見れなくなったのはちょっと惜しい気もします。

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イギリスのEU離脱による市場の混乱は早晩調整されるが、長期的にはじわっと響いてくる

イギリスのEU離脱により、月曜日は市場の混乱が見られ、あちこちでパニック売りに近い現象が見られましたが、東京が若干持ち直しており、今後は人々も冷静になって徐々に混乱は調整されていくと思います。

ではそれで安心かというと、そういうわけではなくて、数年かけてじわっと影響してくるはずです。ドイツはイギリスのEU離脱に対して冷たい視線を送っていますが、イギリスでは「まさか本当に離脱するとは思わなかった」「これからどうなるのか不安だ」「国民投票をやり直してほしい」という声が出ており、なんかちょっとよく分からないドタバタ的な綱引きが行われています。EU離脱を決めたら2年で離脱するということになっていたのが、イギリス側からは手続きには「6年かかる、いや7年だ」という声が出ており、おそらくは引き伸ばしたいという心理が働いているように思います。「2年後」とは正式表明から2年後で、今は国民投票の結果が出ただけですから、正式表明もなるべく引き伸ばして、時間稼ぎがしたいように見えます。首相が交代すれば国民投票の結果に縛られないということらしいので、本当にそうするかどうかはともかく、新首相が国民投票の結果はどこ吹く風とそ知らぬふりしてEUに留まり続けるという選択肢もないわけではありません。ただ、民主主義の根幹に関わってくる別の問題になってしまいます。

いずれにせよ、すぐに離脱するわけではなく、いわば黒田日銀総裁のマイナス金利導入と同じで、実はよく考えると短期的には何も変わらないということが分かってくるので、パニック売りされた分は徐々に調整され、落ち着きを取り戻すと思います。とはいえ、新規のイギリスへの投資は減り、流出は増えるため、工場やオフィスの移転などでじわっと影響してきます。大陸側も無傷ではなく、EUよりもイギリス市場を優先する企業もそれなりにいるはずですので、イギリスの存在によるスケールメリットは相当に損なわれます。

シティとフランクフルトの証券取引所の合併話は消えたわけではなく、今後は諸般の展開次第でこっちの話もはっきりしてくるとは思います。ニューヨークがいっちょかみしたいらしいという話もありますが、EUから抜けたイギリス、イギリスのいないEUに無理してまでいっちょかみしなくていいかということもあり得ます。そうすると現状は変わらないものの、起爆剤材料が少しずつそがれていき、やはりじわじわと沈んでいくイメージになりそうです。EUとイギリスだけの関係を見れば、どちらもじわじわ傷を受けるということですが、その他の要因が加わると、更に複雑になってきます。アメリカでは金利上げようかなどうしようかなという状態が続いてますが、今金利を上げればポンドユーロの値崩れ必至で、不安でやれないかもしれません。もしやったら更なる不安材料になります。数年のスパンということで言えば、安倍首相の次の首相の経済政策の見通しが立ちません(もちろん、今の段階で立つわけがないのですが…)。

中国の行方も絡んできます。中国の李克強首相はダボス会議で「ヨーロッパは今後も中国にとって重要なパートナー」だとスピーチしましたが、イギリスをステップにしてEU市場を狙うという戦略を考え直すことになると思います。ロイターによると中国のワイン市場が低迷段階に入っており、以前ならビンテージものが先を争うように買われていたのが最近は財布が固くなっているらしいとのことです。消費者が賢くなろうとしているのか、それともただの沈下なのかもう少し様子を見ないといけません。中国はこれからいろいろ剣が峰かも知れません。中国のヨーロッパへの投資がどういう展開になるのかは時々チェックしておきたいです。

やっぱり今年は凄い年です。大相場です。

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