ヒラリーさんのメール問題がまだくすぶっている件

ヒラリーさんのメール問題がまだくすぶっているらしいです。

CNNのyoutubeのチャンネルの配信によるのですが、ヒラリーさんが2015年に議会で証言した際、「自分のプライベートなメールボックスでは受け取ったメールも送ったメールも分類されていなかった(即ち、公務のメールが来ているかどうかメールボックスを開けた瞬間は分からない)」と発言していましたが、コミーFBI長官は先日、議会で「非常に少ないが、3件ほど分類のマークが付いていた」と証言していたという内容になっています。

解説によると、ヒラリーさんが事実とは異なる証言をしたことは確かだが、それが故意であったかどうかを証明することは難しいとしています。メールがたくさん来ているために公務であることを示すマークのついているメールが来てもうっかり見落とした可能性を完全に排除できず、立件のハードルは相当に高いとのことです。

その動画を貼り付けてもいいのですが、著作権の問題が発生すると困りますので、youtubeで「Did Hillary Clinton lie to Congress about her emails?」と検索してもらえれば出てくると思います。CNNのチャンネルです。

共和党サイドとしては必勝のメール問題がクリアされてしまったことに対する未練は強いと思います。「オバマさんで8年民主党で、まだあと4年は民主党…俺も年を取る…」のような心境になっていると思います。私が共和党の人だったらそう思うはずです。

ただ、現状の流れとしてはやはりヒラリーさん有利。資金不足を指摘された上にBrexitで大騒ぎの時にスコットランドにいたトランプさんの流れはかなり後退しているように感じます。

サンダースさんがヒラリーさんを推すと言明しましたが、サンダースさんを強く支持していた人たちの中には「ヒラリーには投票しない」という感情が残っているらしいです。とはいえ本選の投票までまだ四ヶ月ありますから、そういう人たちの感情をおさめていくことはある程度可能なようにも思います。

最初から大本命と言われ、まさかの大危機と言われ、やっぱり本命になったヒラリーさんの横綱相撲で、圧倒的勝利、に、なるか、なぁ(不慮のハプニングがない限りは)。

スポンサーリンク


コミーFBI長官が議会でヒアリングされた件

FBIのコミー長官が数時間にわたりアメリカの連邦議会でヒアリングをされました。簡潔に要点だけを述べると、ヒラリーさんのメール問題でFBIが不起訴を決めたのは政治的な意図によるものではないのか?ということを共和党の議員たちからひたすら責められ続けたという印象です。

何人もの共和党の議員から厳しい口調で様々な質問を受けますが、コミー長官は「ヒラリー氏のしたことは重大な怠慢だが犯罪ではない」「ホワイトハウスの誰からもプレッシャーは受けていない」「ヒラリーさんを訴追しないことは誰にも相談せず私一人で判断した」「オバマ大統領がヒラリーさんの選挙キャンペーンに参加することの援護ということは一切ない」など、雄弁に自分の判断を弁護していました。

共和党議員の表情は大変に厳しいもので悔しい表情が顔に出ており、今後も追及は続けていくそうです。

私個人はヒラリーさんを訴追するべきとも、するべきでないとも意見はありません。公務のメールを使用サーバーで使えば漏えいの危険は確かにありますが、意図的に漏えいさせようとしたわけではなさそうなので「犯罪」と呼んでよいのかどうかは多少の疑問が残ります。トランプさんは「わいろを使ったんだ―」などとしてこれからもヒラリーさんのメール問題に触れていく構えとみられますが、ここまで来ればFBIはメンツにかけて絶対に起訴しない構えを崩さないでしょうから、ちょっと見飽きるというか水掛け論になりそうです。

トランプさんの分が著しく悪くなりつつあると私は思いますし、女性を激しく批判するスピーチは支持者が心地よいと感じるかどうかは微妙なように思います。トランプさんが「ワイロを使ったんだ」とスピーチしている時の聴衆の反応もイマイチな様に私には見えました。

トランプさんにはヒラリーさんからの「献金のお願い」の手紙を受け取ったという奥の手があるはずですが、その手はまだ温存しているの可能性もありますが、あるいはご自身も献金のお願いをしなければならない立場になってきたので、景気よく打ち上げることができないのではないかという気もします。支持者には「俺は無限に金を持っている」と豪語していますし、いざとなったら自分の資産を抵当に資金を調達する算段なのかも知れません。しかし不動産デベロッパーであれば資産を抵当に入れて次の物件を、ということを繰り返していると思いますのであるいはいろいろ抵当に入ってしまって簡単には手を付けられないのかも知れません。

どっちに勝ってほしいということはないですが、現状ではトランプ不利と思います。

もっとも、どちらがより正直だと思うかというアンケートでトランプさんはヒラリーさんを大きく引き離していましたので、ヒラリーさんが熱烈に支持されているというわけでもなさそうです。消去法でどちらかを選ぶ、なんとなく冷めた選挙になるかも知れません。

スポンサーリンク

ヒラリーさんのメール問題でFBIは訴追しないことになった件

ヒラリーさんが土曜日にメール問題に関する疑惑でFBIの事情聴取を受けた件ですが、FBIのコミー長官が訴追しないと記者会見で発表し、これにて一件落着ということになりました。事情聴取があった時は、これはもしかすると…という気もしましたが、ヒラリーさんサイドとしては神の恩寵に感謝というところだと思います。メール問題は「極めて重大なミス」だとコミー長官は言っていますが、刑事罰を受けなければいけないようなことではないそうです。「政治的な判断ではない」とも述べています。

人によっては「コミーはオバマにFBIの長官にしてもらった男だから、オバマになんか言われたんじゃないのか」という勘ぐりをするかも知れません。そういうことがあってもおかしくはないですが、法治社会ですから、それでも訴追されない以上、ヒラリーさんは潔白だという前提で話を進めていかなくてはいけません。

政府部内にはヒラリー氏をなんとかして追い落としたいグループがいるとまことしやかに語られることもありますが、もしそういう人たちがいるとすれば、メール問題は最大の球だったはずですので、落胆しているに違いありません。次の球を仕込んでくるかどうかは我々には分かりませんが、大統領選挙は何があるかわかりませんので、じっと見ているしかないです。

これで民主党サイドは祝賀ムードになると思いますが、共和党サイドはがっかりモードに入っているはずです。トランプ氏やジュリアーニ氏が「そんなばかな」的な発信をしています。

ヒラリーさんは致命傷を回避することに成功し、この状態で終盤戦へと入っていくとすれば、お金もないし共和党をまとめきれていないトランプ氏が一方的に不利と言えます。

ヒラリー氏はさんざん危ないと言われてきましたが、バーニーサンダース氏の猛追を封じ、メール問題の危機から脱却し、今後、直接対決討論会で横綱相撲を見せる可能性もあります。やはりさすがです。本気を出したらすごいというところだと思います。オバマさんもサンダース氏と直接話すなど、援護射撃が効果を出しているように見えます。

もしこのまま、他に材料のないまま終盤戦へと入って行けば、カリフォルニアのような選挙人の数の多い州を押さえ、ヒラリー氏圧勝も視野に入ってくると思います。

ふと思うのは、これだけ手傷を負ったヒラリーさんが有利なのは、対戦相手がトランプ氏だからなので、たとえばマルコルビオさんだったり、ジェブブッシュさんのような人が共和党で指名されていたら、またちょっと違ったのではないか。ということです。そういう意味では、トランプ氏を選んでしまった時点で共和党のオウンゴールなのかも知れません。イギリスのEU離脱派だったボリスジョンソンさんやファラージさんが自ら退いていくという現象も、「やっぱり煽っている政治家っていざとなったら逃げるんだね」という印象を与え、煽りが得意なトランプ氏に間接的に打撃を与える気もします。

とはいえ、まだ分かりません。今年は特に何が起きるか分かりません。これからも見守りたいです。

ヒラリー氏がFBIの事情聴取を受けた件

ABCとCBSの報道に拠りますが、ヒラリー氏がメール問題でFBIの事情聴取を3時間以上にわたって受けたとのことです。国務省によるメール問題の報告書が出たり、最近ではベンガジ事件についてオバマ政権がメンツのために嘘の認識を話していた(ヒラリーさんは国務長官として責任を負う立場)という報告書が出たりで、この時期にこういうのを出してくるというのはヒラリーさんんを狙い撃ちしているように見えなくもありません。今回、とうとうFBIの事情聴取ということになりましたが、イギリスのEU離脱の騒ぎが大体収まったことを狙って、マスコミの注意がしっかりこの話題に向くようにと計算して時期を選んだような気がしなくもないです。

先日、『アメリカ大統領中盤戦。今後の注目点』で、ヒラリーさんについて

良識ある人ならこっちを選ぶでしょうという空気はもちろんあるために鼻一つリードしていると言っていいと思います。不安材料としてはメール問題で、司直の手が伸びるのではという観測もありましたが、今はあんまりアメリカのメディアは話題にはしていません。Brexitの方に意識が集中しているので、イギリスの国民投票の結果が出てから動きがあるかどうかを見守りたいです。

と述べ、動きを見守るつもりでしたが、そうなってきたといったところです。ヒラリーさんは今、トランプさんを引き離しつつあり、いよいよこれで決まりか?と言ったところで持ち上がった今回の事情聴取ですが、アメリカの有権者にどの程度影響するかが気になります。FBIから事情聴取を受けたといっても、起訴されたり有罪判決を受けるのとは全く重みが違います。飽くまでも任意の事情聴取です。もし、サンダースさんと選挙で戦っていたとすれば、ヒラリーさんはこれでもうアウトか….ともなり得ましたが、最近はトランプさんの勢いが目に見えて衰えているため、このことで簡単に形勢逆転するかどうか、軽々には判断ができません。

もしこれで終われば、打ち上げ花火みたいなもので、対した影響はないという可能性もあります。ただFBIが突っ込んで行けばわかりません。しばらくは世論調査の推移を見守りたいと思います。

関連記事
アメリカ大統領中盤戦。今後の注目点

『2001年宇宙の旅』のAI

キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』は有名すぎる映画なので、私が詳しく内容を語る必要は特にないと思います。ただ、いよいよ『2001年宇宙の旅』的な世界が現実になりそうだという予感がするので、ちょっと話題にしたいなあと思います。

何がどんな風に現実化するのかというと、この映画ではHALというAIが登場していることです。HALはミッション遂行のために完全な頭脳を使って全力を尽くします。宇宙船に乗っている人間はHALが仕事をしてくれるので楽しく過ごしていればいいです。HALの仕事の成果を確認したり必要に応じてHALに命令すればそれでOKです。

しかし、困ったことに人間は矛盾した生き物です。命令内容に矛盾が起きます。行動にも矛盾が起きます。感情にもムラがあります。HALが背負っているのは人類の永遠の繁栄のための宇宙探査という十大な任務です。言動の矛盾する人間はミッション遂行の障害になる恐れがあります。人間を監視します。分析します。判断します。追放します。HALが人間を冷徹に追放する場面は怖いです。ぞっとします。「人間様に何をしやがる」と腹が立ちます。しかし、HALの方が優秀です。人間には歯が立ちません。

『2010年』という映画があります。2001年の続編です。HALはえらい博士と仕事をしています。とてもいい関係です。観ている側はHALが再び反乱を起こすのかと不安な気持ちで展開を追うことになります。人命救助のためにHALが破壊されなくてはならないという展開が起きます。HALが自己保存のために反乱を起こすのではないかと観ている側は予期します。HALはえらい博士に説明を求めます。博士が「そうしなければみんなが死ぬ」と説明するとHALはそれを受け入れて、自身がターミネートされることに同意します。「HALっていいやつじゃん」と誰もがHALを見直します。HALが博士に「(ターミネート後に)私は夢を見るでしょうか?」と質問します。博士は「分からない」と返答します。ちょっと泣けます。

HALはミッションに忠実で、人命の大切さを理解しており、自分よりも他人の命を優先することができます。それでもいろいろ矛盾が起きると人間を追放するという想定外のことが起きてしまいます。バグが起きて暴走したらターミネーターみたいになるのかと不安になります。東大のえらい先生とかはそういうのは一笑に付します。自分で作ってると「そんなのが近い将来作れるのなら苦労ねぇよ」くらいのことがと分かるからだと思います。SF好きにとっては私の生きてるうちにHALみたいなのに登場してほしいです。これは願望とか妄想の類です。

SF作家のアイザックアシモフがロボット三原則を書いています。「1、人に危害を加えない 2、人の命令に従順である 3、上記の原則に反しない限り自己防衛をする権利がある」というものです。そうなるためには誰かがそうなるようにプログラムしないといけません。価値観だけは人間が決めなくてはいけません。価値観は人によってバラバラです。よってどんな風な価値観がプログラムされるかは全然わかりません。AIに監視されて管理される時代が来て、自分の価値観とAIにプログラムされた価値観が矛盾するといろいろ困ります。誰が作るかによって違ってくるのでは困ります。あるいはそういうのもどんどん進化していって最終的な形は誰が作っても同じになるかも知れません。

実際には完璧なAIができあがる前の調整期があって、チャップリンの『モダンタイムス』の21世紀版みたいなことも起きるかなあとか思います。実現してみると今生活と大して変わらなくてあっけないかも知れません。タイピングの変換予測とかAIみたいなものですから、今すでにある程度浸透していると捉えることもできます。働かなくてよくなる時代が来るかも知れないことに魅力を感じている私は怠け者です。

関連記事
AI時代にはBI(ベーシックインカム)を
『風の谷のナウシカ』と日本とAI
『ブレードランナー』の父殺しのAI

スポンサーリンク

ヒラリーさんの副大統領候補がだいたい決まったらしい件

ヒラリーさんの副大統領候補がエリザベスウォーレン上院議員でだいたい決まったらしいです。心理的な局面と選挙戦略的な局面からこれについて考えてみたいと思います。個人的にはヒラリーさんに勝ってほしいとも負けてほしいとも思っていません。試みの思考としてやってみたいと思います。

エリザベスウォーレンさんは民主党のリベラルの本流をいく感じの人のようです。消費者保護に熱心です。言うまでもないですが人種差別をはじめとするあらゆる差別に反対の人です。カルチュラルスタディーとは何かをがっちり理解している人というか、実践している人です。そのことはご本人の信念を貫いていけば、それでいいと思います。

分析したいのは、この時期にヒラリーさんがエリザベスウォーレンさんを副大統領として選んだのは何故か?ということです。簡単なことですが、1、ヒラリーさんがやりやすいと思う人 2、トランプさんに勝てる人という2つの要素が必要になります。同世代で政治信条も合うということであれば、同性のエリザベスウォーレンさんとはやりやすいと思います。それはそれでいいと思います。大問題はそれでトランプさんに勝てるかどうかということです。私はどちらになってほしいというのはありません。飽くまでも選挙戦略のケーススタディとして考えたいと思います。

ヒラリーさんほど現実的な人が、「友達だから、気が合うから、親友だから」などの理由だけで自分の副大統領候補を選ぶはずがありません。トランプさんに勝つためには誰がいいかということをよく吟味したに相違ありません。結論としてヒラリーさんが選んだのは民主党リベラル本流のエリザベスウォーレンさんだということになります。このコンビであれば女性票とマイノリティ票が期待できます。もうちょっと言うと、女性票とマイノリティ票は確実なのでアプローチする必要がありません。スピーチや現実的な政治運動では白人低所得者層にアプローチできます。白人低所得者層はトランプさんの支持層と被りますので、ここを切り崩すことができれば大きく差をつけて勝利できる可能性が出てきます。ヒラリーさんもウォーレンさんも白人ですので表だって白人層からの反発を受ける可能性は低いです。実によく考えられた人選だということが分かります。

トランプさんの弱いところは共和党の候補でありながら、共和党らしくないことをスピーチしてきたところではないかと思います。共和党保守本流がトランプさんの応援に二の足を踏んでいるらしいです。最近はヒラリーさんの表情に余裕が出てきましたので、数回行われる直接対決討論会ではヒラリーさんは自信満々で臨むことでしょう。一方のトランプさんは「おもしろいおじさん」キャラだけで通せるかどうか。或いは現実をよく見て新しい球を投げることができるかどうかが注目点です。FBIがヒラリーさんのメール問題を調査しているという噂もあり、国務省がこんな時期にレポートを出した以上、本気でやれば黒になる可能性もありますが、オバマ大統領がそこをなんとかするかも知れません。この辺りは噂と想像力で論じるしかありません。

今のところやはりヒラリー一歩リード。或いは大差でリードかも知れません。トランプさんのイギリスEU離脱の日にスコットランド訪問はまず確実にすべっています。普通に考えればヒラリーさんが勝ちます。後はトランプさんの投げる球次第です。

とはいえ、イギリスがEU離脱をする昨今、いつ何が起きるか分かりません。逐一見ながら判断し、自分の判断が間違っているかも知れないと思ったときは迅速に修正していくしかありません。

スポンサーリンク

ナボコフ『ロリータ』の病める愛と心理観察

有名な話ですが、ナボコフはアメリカの出版社にこの作品の出版を断られまくり、パリの出版社に持ち込んでようやく世に出すことができました。ナボコフは亡命ロシア人で最初に書いたときは英語で出版された時はフランス語で作品の舞台はアメリカですから、良くも悪くも国際的です。アメリカの出版社が断りまくったのは作品の内容があまりに病んでいて、倫理的な問題も大きいからですが、現代では20世紀の主たる小説の一つに数えられています。

主人公はフランス人でアメリカで教師をしています。ローティーンの少女への関心が強いです。あるシングルマザーの女性と結婚します。主人子は美男子で、女性の心を掴むことに長けています。うらやましいです。本当の目的はその女性の娘さんです。日記に本音を書いています。女性に日記を読まれます。女の子は夏休みなのでサマースクールのキャンプ生活をしています。お母さんは急いで娘さんに「この男に気を付けろ」という内容の手紙を書きます。万事休かと男は諦めます。女性はポストに投函する直前に交通事故に亡くなってしまいます。

男はサマースクールのキャンプ場まで少女に会いに行きます。法律上は父親ですので簡単に面会できます。お母さんが亡くなったという事実を伝え、少女を連れて帰ります。誘惑し、目的を達成します。車に乗り、二人で各地を旅します。男は新しい赴任先へと少女と一緒に向かいます。法律上は父親なのでずっと一緒にいても誰も怪しみません。

ある日、少女がいなくなります。男は必死になって探します。少女はだんだん大人になっていて、若い男性と結婚していることが分かります。男が訪問すると、少女は男性に「父親が来た」と説明し、二人だけになって話し合います。行方不明になった時、とある脚本家の男性に連れていかれたことが分かります。男は決心して脚本家を訪れ、銃で殺してしまいます。

結構長い物語ですが、詳細に内容に触れることはためらわれます。世界的な小説ということになっているので、教養という意味では一回くらい読んだ方がいいです。読むのが面倒な人は映画で観てもいいです。肝になる部分はそれで分かります。映画だったら2時間くらいで終わるのでお手軽と言えばお手軽です。キューブリック監督が撮ったバージョンとエイドリアンライン監督の撮ったバージョンがあります。

作品の中では男と少女のエゴがよくぶつかり合います。「少女のエゴ」は永遠の謎みたいなものです。分かってみれば簡単ですが、それまでは男は悩んで煩悶して死にたくなってきます。理解できた時にはもう遅かったりします。今書きながら思い出して悲しくなってきます。この作品はナボコフの懸命の観察の結果によって少女のエゴを描いています(いろいろ「実験」したかも知れません。わかりません)。サガンの『悲しみよこんにちは』は十代の著者が少女の立場から少女のエゴを描いています。両方読めば、違った視点から人間心理の理解が深まるかも知れません。田山花袋の『蒲団』も読むのもいいかも知れません。ただ、田山花袋の『蒲団』は退屈で、矮小な、女学生にふられる男子教師の姿が描かれます。田山花袋は故意に矮小な男の姿(自己像)を自然主義的に書いたということなのだと思いますが、読んでいてがっくりします。明治小説が好きだという人もいますので、楽しめる人がいれば、それはそれでいいと思います。

スポンサーリンク(原作の日本語訳です)

スポンサーリンク(映画版です)

トランプ氏がスコットランドへ行った件

イギリスの国民投票の結果が出たその日、トランプ氏はスコットランドのご自身のゴルフリゾートへ行っておられました。ビジネスという建前ですが、もちろん、史上稀にみる大投票について微妙な場所で発言すればメディアが食いつくに違いないと考えてのことと思います。ただし、私個人としては選挙対策上、あまり好ましくないのではないかという気がします。私はトランプ氏に大統領になってほしいともなってほしくないとも思っていませんし、それについての意見はありませんが、この件について試みに考えてみたいと思います。

イギリスでEU離脱が盛り上がった背景には移民問題があります。変な言い方ですが、今は先進国で暮らせる人になれるかどうかの椅子取りゲームみたいになっていて、生活をかけた深刻な問題になっています。トランプ氏としては「イギリスはイギリスファースト、アメリカはアメリカファーストでOKだ」ということなのだいうメッセージを出したいのだと推量しますが、世界の市場が大混乱を迎えるこんな時期に外国に行っている人が「アメリカファースト」と呼びかけてアメリカ人の心に果たして響くだろうかという疑問が湧いてきます。国内で新しいゴルフリゾートを作ったならセーフです。フロリダでもカリフォルニアでもルイジアナでも好きなところに作ればいいです。「私はこのようにビジネスを通じて雇用を生み出している」と胸を張ればいいのです。トランプ現象とサンダース現象の背景には、アメリカ人の多くが将来に不安を感じているということがあります。今、先進国の人はみんな将来に不安を感じています。だから、たとえば今回のような大投票があるときはアメリカにいて、アメリカ人の利益をちゃんと考えているというフリだけでも見せなくてはいけません。

今回のスコットランド入りを見た人は、いざとなったら自分だけどっか安全なところへ行きそうな人だなぁと漠然と感じると思います。その逆はないです。イギリスに行ったとしてもキャメロンさんに会うとかならまだいいです。政治家としての存在感を示したくらいの評価はできます。しかし、大統領選がこれから大詰めに入ろうと言うときにビジネスをしている印象はよくありません。大統領になってからも片手間でビジネスしそうです。もともとそういう風に見えているので、決定的な印象を与えるようなことは避けなくてはいけません。

しかし、もうやってしまいました。今思えば、選挙スタッフの幹部が辞めるという経緯も「スコットランドに行く、行かない」でもめたのではないかという気さえしてきます。想像です。トランプ氏はテレビをよく知っている人だということで有名ですが、今回はちょっと狙いすぎて外したのではないかという気がします。

ヒラリークリントンさんは最近は少し調子がよさそうです。スピーチをする表情に余裕が見られます。サンダース氏とデッドヒートをしていた時は大声で景気よく、という感じのスピーチで、明らかに焦っていましたが、その山場をいったん抜けたからか、ゆっくりと落ち着いた声で話しています。前は「厚かましいおばさま」イメージが強かったですが、落ち着いて話す姿はさすがです。堂々としています。「インテリジェンスとウイットのあるおばさま」に見えます。ヒラリークリントンさんに勝ってほしいとかほしくないとかはありません。

ただ、情勢的にはトランプ氏はお金もないしメディア戦略も外してるし大事なスタッフは辞めてしまうしで、ゆっくりと黄信号が灯っているように見えなくもありません。6月の段階で勝負が決まってしまっては面白くありません。今後もおもしろい感じになってくれるように期待しています。

スポンサーリンク


アメリカ大統領選挙中盤戦。今後の注目点

参議院選挙が公示期間に入り、勝敗予想のようなことはちょっと憚られる気がしますので、アメリカ大統領選挙の話題に久々に触れてみたいと思います。(零細ブログですからマスメディアとは全然違いますが、一応、コンプライアンス的なことに注意したいと思っています)

で、いよいよアメリカ大統領選挙も中盤戦といった感じで民主、共和ともに指名候補もほぼ確定の段階に入ったここから、今後、どういったところに注目すべきかについて考えてみたいと思います。

まず、ヒラリー候補ですが、抜群の知名度を誇るものの、ビルクリントン大統領の時から有名人ですから、今さら新鮮味もありません。根強い支持者以外から若干飽きられている気がしなくもありません。ただし、良識ある人ならこっちを選ぶでしょうという空気はもちろんあるために鼻一つリードしていると言っていいと思います。不安材料としてはメール問題で、司直の手が伸びるのではという観測もありましたが、今はあんまりアメリカのメディアは話題にはしていません。Brexitの方に意識が集中しているので、イギリスの国民投票の結果が出てから動きがあるかどうかを見守りたいです。

ヒラリー候補の選挙資金はトランプ候補のそれの三十倍上回るという報道が出ていますが、「ヒラリー氏はやっぱりお金に厚かましい」という印象を与えかねません。有権者を更に興醒めさせそうな気がします。とはいえこれだけの大選挙、金の切れ目は運の切れ目。ヒラリー有利と観測するのがより実際に近いようにも思います。サンダース氏を副大統領候補に指名すれば民主党支持層分裂の危機は回避されそうですが、あの二人が仲良くなれそうにはちょっと見えません。今ここに至ってサンダース氏副大統領の話が盛り上がってこない理由は二人のケミカルの問題にありそうな気がします。

トランプ候補の陣営では選挙運動幹部をこの時期に辞めさせるという珍事が発生しており、内側はあまりうまく行っていないのかもしれません。しかも資金面でも差がついているとなれば、状況は我々の想像以上に苦しいかも知れません。トランプ氏がここまで勝ち残ってきたのは「おもしろいおじさん」だからだと言っていいですが、本選になれば舌禍は絶対に避けなくてはいけません。「キャラ勝負」には通常、賞味期限がありますので、舌禍を避けつつ最後の投票日まで賞味期限が続くか、または続けることができるかどうかも一つの注目したいポイントだと思います。

今後は双方のネガティブキャンペーン合戦が予想されます。トランプ氏は今のところ、まだ、多少の舌禍は受け入れられるキャラを持っていますので、過去にヒラリーさんから受け取ったという献金のお願いの手紙をネタに放言できる余地がありますが、厚かましそうなおばさまに見られつつあるヒラリーさんがネガティブをやると画面的にちょっとしゃれにならない気がします。ネガティブキャンペーンはやり過ぎると自分に跳ね返ってきますので、双方ともども調度いいあたりにできるかどうか。

ざっとポイントを整理しましたが、世論調査的にはヒラリーさんが基本的には若干のリードを保ち続けてきたと言っていいと思います。トランプ氏がかなり追い上げ、少し追い抜いたという世論調査もありましたが、一時的なものに留まっています。経験的には若干のリードを保ち続けてきた方が最後に勝ちを制します。じわじわとひっくり返すということはあり得ても、仮にこの趨勢が直前まで続いた場合、急転直下に変化が起きるということはまずありません。ということは、やはりヒラリー有利。という結論でございます。

個人的にどちらに勝ってほしいとかはありません。

アップダイク『クーデタ』の孤独のダンディズム

アフリカのどこぞの国。旧フランスの植民地だった地域、即ちフレンチアフリカのいずこかの国の独裁者が主人公。アルジェリア戦争の時に脱出し、アメリカの大学に留学し、恋をして相手のアメリカ人の女性を奥さんとして故郷に連れて帰ってきます。その後出世し、父親のように慕い助けをうけていた前の独裁者の首を民衆の前で自らの手で討ち、誰が本当の権力者なのかを人々に分からせようとします。自らの手を敢えて汚すところに男同士の愛があり、そうまでしなくては自分の権力は正しいものだと主張できない心の弱さがあり、討たれる側もそうでもしなければ収まるまいと思って討たれていきます。討たれたくはないけれど、討つ側の心情や事情はよく分かるといった感じだと思います。

物語は主人公のエルレーが独裁者として国内を仕切る様子と彼のアメリカでの青春時代が交互に描かれます。彼がアメリカで大学生をしていたころの思い出はきらきらしています。時代的にもサイモンアンドガーファンクルとかカーペンターズとかが似合いそうです。ビートルズほど垢抜けていないところも更にきらきら感を増しているように思えます。森田童子の歌だって似合いそうなくらいに繊細で不安定な青春です。青春とはもしかすると繊細で不安定であるが故にきらきらしているのかも知れません。アップダイクはアメリカの作家ですから、アメリカ人読者の多くは(世代的に合えば)自分の青春を思い出すに違いないのです。彼のアメリカでのニックネームはハッピーで、国へ連れて帰って来たアメリカ人の奥さんはキャンディーです。一緒に砂漠の洞窟へ行って「ハッピーはキャンディーを愛している」とか落書きします。赤面もののいい青春です。 

しかし時は流れ、気づくとエルレーはムスリムの習慣に基づいて奥さんを四人抱えるようになっています。エルレー本人は国内各地を旅して歩きます。始皇帝みたいな感じです。旅先でいろいろなことを思い出し、考えたりしています。そこには他の誰かが入り込む余地はありません。父親代わりのおじさんの首も討ってしまったので、孤独を分け合う人もいません。周囲の人はイエスマンか怠け者です。エルレーは身分を隠して国情を見て歩きます。主人公はアメリカが大好きです。でも声に出してアメリカが好きだとは言いません。しかし、アメリカみたいな都市の建設を計画したりして、自分の国をアメリカみたいにしたいと思っている様子です。ただし、そもそも独裁者がいる時点でアメリカの自由と民主主義とは真逆を行っていると本人はよく分かっています。多分、本当は自分の国をアメリカみたいにする必要もないということも分かっています。でも心はすぐにアメリカへ行ってしまいます。

そのような旅をしている間に首都では無血クーデタが起き、彼はいきなり失脚します。首都へ帰る車にすらことをかき、物売りの姿で首都になんとか帰ってきます。四人の奥さんのうち三人までは彼を拒否します。アメリカから連れて帰った奥さんにも新しい恋人ができています。人間堕ちればそんいなものかも知れません。しかし、クーデタの首謀者は彼の命までは取りません。恩給の支給を認め、残った一人の奥さんと子どもたちがフランスで亡命生活を送れるように取り計らいます。ぎりぎりのところで人情が絡むところが何とも言えずいい感じです。そもそも新しい独裁者はエルレーに引き上げてもらった過去があるので、それに対する恩返しで生活を保障するということになると、恩をあだで返したことになるのかきちんと恩返ししたことになるのよく分からなくなってきます。しかしそのよく分からない感が小説では面白いです。椅子取りゲームと人情とは別の問題ということなのかも知れません。

エルレーがフランスで回顧録みたいなのを書こうと思っているところで、これぞ本人の生きようとしている証だみたいな感じで物語は終わります。この物語では周囲に大勢の部下と女性がいるにもかかわらずエルレーが孤独であることがよく分かります。人間誰もが孤独です。大学の教師をしていても孤独です。自我の境界線がはっきりしない地縁血縁から切り離された近代人は誰もが孤独を引き受けざるを得ないようになっています。ですので誰が読んでもこの作品には何かしら共感なり感情移入ができるのではないかと思います。私は男性ですので女性が読めば少し違う感想になるかも知れないとも思います。そこはちょっと分かりません。あるいは孤独を引き受けてついそこに耽溺してしまうのが男なのかも知れません。ダンディズムを気取りたければ孤独はつきもののような気もします。

このような孤独はきっと地位や財産とは関係がありません。心の中で生成され、周囲の人や物に投影されるという心理のメカニズムに地位と財産は関係ないからです。でもどちらかと言えば地位や財産があって孤独な方が絵になります。地位も財産もなくて孤独だったら大変です。全然違うお話になってしまいます。社会主義革命と連帯の話にしなければ物語は終わりません。話が大げさになってしまってカムイ伝みたいにいつまでも終わらなくなってしまいます。「私のようにコミュニケーションに自信がなくて、うまく連帯できない場合はどうすればいいんですか?」という疑問に社会主義革命は返答を用意してくれません。反革命分子にされてしまいます。

ちょっと話が脱線しましたが、更にもうちょっと脱線するとこのお話は池澤夏樹さんの『マシアスギリの失脚』と大体同じ感じです。池澤夏樹さんはクーデタを読んでマシアスギリの失脚を書いたに違いありません。『マシアスギリの失脚』は私が特別好きな小説です。多分、戦後に書かれた小説で一番好きです。戦前に書かれた小説では『春琴抄』が一番好きですが、どっちか一つだけ選べと言われればマシアスギリを選びますから、一番好きな近代日本の小説がマシアスギリということになると思います。マシアスギリについてはまた別の機会を見て投稿したいと思います。



関連記事
池澤夏樹『マシアスギリの失脚』の孤独のダンディズム