バイデン氏の躍進‐予想を裏切りサンダース超え。で、トランプには勝てるのか?‐【Watch America】

私はスーパーチューズデーでは最も注目をあつめているサンダース氏が勝つと見ていたが、実際に蓋を開けてみると、バイデン氏がサンダースを超えて一位に躍り出た。バイデン氏が我々は社会主義革命を求めているわけではないとサンダース氏を牽制する発言をしたことは、cnnの配信で見たが、その言葉の通り、民主党の多数派はサンダース氏の言うようなガチ社会主義というわけではないというわけだ。民主党はマイノリティの声を拾い上げることに存在意義があると考えられているが、彼らはその手法として社会主義を選びたいとは思っていないようなのだ。むしろ、マイノリティの人々にも自由と民主主義の良い面を謳歌してもらいたいということなのかも知れない。

バイデン氏がここまで勝ち上がってきたのは、民主党多数派がバイデン氏でいこうとまとまったのが大きいと言えるのだが、その背中を押したのは、やはりバイデン氏がアフリカ系アメリカ人からの厚い支持を得ているということは大きかっただろう。スーパーチューズデーの直前、サウスカロライナの予備選挙でバイデン氏は勝利を得たが、やはり黒人層の支持が勝因として大きかったことは誰もが認めているところだ。オバマ大統領の副大統領を務めていたという経歴が、黒人層からの厚い支持につながっている。クリントン夫妻も黒人からの支持は厚いと言われていたが、オバマ氏との距離感が微妙だったヒラリーよりも、ガチでオバマを支えた印象のあるバイデンさんの方がより信頼されているということなのかも知れない。一方でサンダース氏は黒人層からはさほど人気がないと言われてはいたものの、やっぱりそれは本当だったと弱点を見破られてしまうことになってしまった。

私はサンダース氏の弱点はあまりにガチで社会主義者であるため、途中で民主党内部から、社会主義は実はあんまり…という声が起きて人々がついてこなくなる可能性にあると考えていたが、それはスーパーチューズデーの後に起きるような気がしていた。しかし実際には、それはスーパーチューズデーに合わせるようにして起きたということになる。cnnはサンダース氏に注目していたが、今ではすっかりバイデン氏への注目度を上げており、もはや民主党はバイデン氏の勝利で決まりそうな勢いだ。とはいえ、バイデン氏とサンダース氏の差は小さく、これからどうなるかもうしばらく見て行かないと軽々に先を見通すことができない事態に立ち至ったようにも思える。

だが、気になるのは、バイデン氏で本当にトランプ氏に勝てると彼らは考えているのだろうかという点だ。トランプ氏に勝てなければ、今回の一連のできごとは所詮は民主党内のコップの中の嵐のようなものに過ぎない。トランプはヒラリーに勝った男であり、強烈な個性に対する人気が衰えているようにも見えないし、弾劾も乗り切ったので、政権発足以来、実は今が一番パワーがある状態とも言えそうだ。サンダース氏は前回、もうちょっとでヒラリーを超えそうなくらいのところまできた。民主党内でもっともヒラリーをおびえさせたのはサンダースだっただろう。それゆえに、トランプ対サンダースは見ものになると私は思っていたし、直接対決は是非一度は見てみたいものだった。普通な人に見えるバイデン氏にそれだけの存在感を発揮できるだろうか。




トランプ氏がスコットランドへ行った件

イギリスの国民投票の結果が出たその日、トランプ氏はスコットランドのご自身のゴルフリゾートへ行っておられました。ビジネスという建前ですが、もちろん、史上稀にみる大投票について微妙な場所で発言すればメディアが食いつくに違いないと考えてのことと思います。ただし、私個人としては選挙対策上、あまり好ましくないのではないかという気がします。私はトランプ氏に大統領になってほしいともなってほしくないとも思っていませんし、それについての意見はありませんが、この件について試みに考えてみたいと思います。

イギリスでEU離脱が盛り上がった背景には移民問題があります。変な言い方ですが、今は先進国で暮らせる人になれるかどうかの椅子取りゲームみたいになっていて、生活をかけた深刻な問題になっています。トランプ氏としては「イギリスはイギリスファースト、アメリカはアメリカファーストでOKだ」ということなのだいうメッセージを出したいのだと推量しますが、世界の市場が大混乱を迎えるこんな時期に外国に行っている人が「アメリカファースト」と呼びかけてアメリカ人の心に果たして響くだろうかという疑問が湧いてきます。国内で新しいゴルフリゾートを作ったならセーフです。フロリダでもカリフォルニアでもルイジアナでも好きなところに作ればいいです。「私はこのようにビジネスを通じて雇用を生み出している」と胸を張ればいいのです。トランプ現象とサンダース現象の背景には、アメリカ人の多くが将来に不安を感じているということがあります。今、先進国の人はみんな将来に不安を感じています。だから、たとえば今回のような大投票があるときはアメリカにいて、アメリカ人の利益をちゃんと考えているというフリだけでも見せなくてはいけません。

今回のスコットランド入りを見た人は、いざとなったら自分だけどっか安全なところへ行きそうな人だなぁと漠然と感じると思います。その逆はないです。イギリスに行ったとしてもキャメロンさんに会うとかならまだいいです。政治家としての存在感を示したくらいの評価はできます。しかし、大統領選がこれから大詰めに入ろうと言うときにビジネスをしている印象はよくありません。大統領になってからも片手間でビジネスしそうです。もともとそういう風に見えているので、決定的な印象を与えるようなことは避けなくてはいけません。

しかし、もうやってしまいました。今思えば、選挙スタッフの幹部が辞めるという経緯も「スコットランドに行く、行かない」でもめたのではないかという気さえしてきます。想像です。トランプ氏はテレビをよく知っている人だということで有名ですが、今回はちょっと狙いすぎて外したのではないかという気がします。

ヒラリークリントンさんは最近は少し調子がよさそうです。スピーチをする表情に余裕が見られます。サンダース氏とデッドヒートをしていた時は大声で景気よく、という感じのスピーチで、明らかに焦っていましたが、その山場をいったん抜けたからか、ゆっくりと落ち着いた声で話しています。前は「厚かましいおばさま」イメージが強かったですが、落ち着いて話す姿はさすがです。堂々としています。「インテリジェンスとウイットのあるおばさま」に見えます。ヒラリークリントンさんに勝ってほしいとかほしくないとかはありません。

ただ、情勢的にはトランプ氏はお金もないしメディア戦略も外してるし大事なスタッフは辞めてしまうしで、ゆっくりと黄信号が灯っているように見えなくもありません。6月の段階で勝負が決まってしまっては面白くありません。今後もおもしろい感じになってくれるように期待しています。

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アメリカ大統領選挙中盤戦。今後の注目点

参議院選挙が公示期間に入り、勝敗予想のようなことはちょっと憚られる気がしますので、アメリカ大統領選挙の話題に久々に触れてみたいと思います。(零細ブログですからマスメディアとは全然違いますが、一応、コンプライアンス的なことに注意したいと思っています)

で、いよいよアメリカ大統領選挙も中盤戦といった感じで民主、共和ともに指名候補もほぼ確定の段階に入ったここから、今後、どういったところに注目すべきかについて考えてみたいと思います。

まず、ヒラリー候補ですが、抜群の知名度を誇るものの、ビルクリントン大統領の時から有名人ですから、今さら新鮮味もありません。根強い支持者以外から若干飽きられている気がしなくもありません。ただし、良識ある人ならこっちを選ぶでしょうという空気はもちろんあるために鼻一つリードしていると言っていいと思います。不安材料としてはメール問題で、司直の手が伸びるのではという観測もありましたが、今はあんまりアメリカのメディアは話題にはしていません。Brexitの方に意識が集中しているので、イギリスの国民投票の結果が出てから動きがあるかどうかを見守りたいです。

ヒラリー候補の選挙資金はトランプ候補のそれの三十倍上回るという報道が出ていますが、「ヒラリー氏はやっぱりお金に厚かましい」という印象を与えかねません。有権者を更に興醒めさせそうな気がします。とはいえこれだけの大選挙、金の切れ目は運の切れ目。ヒラリー有利と観測するのがより実際に近いようにも思います。サンダース氏を副大統領候補に指名すれば民主党支持層分裂の危機は回避されそうですが、あの二人が仲良くなれそうにはちょっと見えません。今ここに至ってサンダース氏副大統領の話が盛り上がってこない理由は二人のケミカルの問題にありそうな気がします。

トランプ候補の陣営では選挙運動幹部をこの時期に辞めさせるという珍事が発生しており、内側はあまりうまく行っていないのかもしれません。しかも資金面でも差がついているとなれば、状況は我々の想像以上に苦しいかも知れません。トランプ氏がここまで勝ち残ってきたのは「おもしろいおじさん」だからだと言っていいですが、本選になれば舌禍は絶対に避けなくてはいけません。「キャラ勝負」には通常、賞味期限がありますので、舌禍を避けつつ最後の投票日まで賞味期限が続くか、または続けることができるかどうかも一つの注目したいポイントだと思います。

今後は双方のネガティブキャンペーン合戦が予想されます。トランプ氏は今のところ、まだ、多少の舌禍は受け入れられるキャラを持っていますので、過去にヒラリーさんから受け取ったという献金のお願いの手紙をネタに放言できる余地がありますが、厚かましそうなおばさまに見られつつあるヒラリーさんがネガティブをやると画面的にちょっとしゃれにならない気がします。ネガティブキャンペーンはやり過ぎると自分に跳ね返ってきますので、双方ともども調度いいあたりにできるかどうか。

ざっとポイントを整理しましたが、世論調査的にはヒラリーさんが基本的には若干のリードを保ち続けてきたと言っていいと思います。トランプ氏がかなり追い上げ、少し追い抜いたという世論調査もありましたが、一時的なものに留まっています。経験的には若干のリードを保ち続けてきた方が最後に勝ちを制します。じわじわとひっくり返すということはあり得ても、仮にこの趨勢が直前まで続いた場合、急転直下に変化が起きるということはまずありません。ということは、やはりヒラリー有利。という結論でございます。

個人的にどちらに勝ってほしいとかはありません。

サンダース現象とアメリカの中産階級

サンダース氏の陣営が総力をあげて取り組んだカリフォルニア予備選ではクリントン氏が勝利という結果になりました。時差の関係でニュージャージーの票が先に開き、クリントン氏が代議員の過半数を獲得したことで、カリフォルニアの票が開く前に民主党の大統領候補が決まったという意味では、カリフォルニアの開票への関心はさほど集まらなかったようにも見えます。

サンダース氏側としては、ニュージャージーはそもそも捨てていたので、ニュージャージーで負けても別にいいと思っていたでしょうけれど、カリフォルニアでも負けたというのは、象徴的な意味も含んで、結構、がっかりしたのではないかという気がします。

とはいえ、サンダース氏陣営は民主党大会の当日に自由に投票できる特別代議員を説得する方針で、最後まで退かない姿勢を貫くようです。

サンダース氏はアメリカの若者を中心に支持を集めていると言います。よく言われることですが、アメリカの格差社会があまりにひどいために将来の展望を持ちにくい若者たちがサンダース氏の社会主義的格差解消政策を強く支持しているそうです。サンダース氏は必ずしもルックスがぱっとするとかそういう感じではありませんが、怖い校長先生みたいな感じの見た目は無私の人という印象も与えるもので、そういうのも含んで若者の期待を得ているのかもしれません。その背景には中産階級の没落があるということなのでしょう。

中産階級の没落が語られるようになって久しいですが、昔の中産階級と今の中産階級ではかなり違ったものになっているのかも知れません。アメリカの普通で平凡な中産階級とは、芝生付きの家で暮らし、車が一台か二台あって、日曜日の午前中は教会へ行き、午後はピクニックでもして楽しむ。子どもはだいたい三人ぐらいいて、一人ぐらい出来のいい子は有名な大学に進学し、20代になれば幸せな結婚を。というイメージのものだったように思います。Back to the futureとか、そんな感じの描かれ方です。そんなに贅沢はしないけど、そこまで贅沢する必要も感じず、ちょっとくらいは高価なものも持っている。

ですが、最近つくづく思うのですが、どうもそのような中産階級は社会全体が順調に経済成長している時だけに見られる現象のようです。経済成長が順調な時は誰にも潤沢な資金がいきわたり、小貴族のような暮らしができるのですが、低成長社会に入ると一部の成功者は十分に贅沢な生活ができるものの、それ以外の人たちは来週の支払いのために今を我慢するという状態を甘受しなくてはいけなくなるというものだったのではないかと思うのです。例えば日本でいえばドラえもんののび太の家庭が日本的な中産階級のイメージで郊外に小さいけれども庭付き一戸建てを持っていて、ローンはしんどいけれど、お父さんは終身雇用の会社で働いているので大丈夫。という感じのものですが、今は日本でもそういうイメージは崩れているように思います。衣食住に満たされ、少しは贅沢もできるのが中産階級というのは特定の時代だけにもたらされた錯覚だったのかも知れません。

20世紀は中産階級と大衆消費の時代でしたが、21世紀に入ってからはだんだんとそういう感じではなくなってきました。

アメリカでも日本でもそうですが、今後はどのような社会を目指すのがいいのか、選択する必要があるかも知れません。低成長社会でも中産階級を維持するために再分配に重点を置くのか、それとも格差の存在を受け入れて、その代わりに成功者がイノベーションや設備投資で進歩を目指す社会を選ぶのか。私の受ける感覚としては再分配重視を希望する人が多いように思います。アメリカのように成功者を尊敬し、格差が存在するのは当然と考える人が多い社会でもサンダース現象が起きるのだということを思えば、日本では尚のことのように思います。

今後はAIが仕事する社会になり、人々が労働して税金を払うことによって国や社会を支えるというモデルそのものが過去のものになる可能性も出ています。私は最近は、そういうことなら、再分配重視でいいのでは?と思うようになっています。太平洋をへだてた日本人の私にまで影響するのですから、サンダース現象、おそるべしです。