中国映画『陽光燦爛的日子』の失われた少年時代

北京という大都会の悪ガキどものお話しです。文化革命が終わったか終わらないかの時代、大人たちが兵隊に行っているか地方に下放されているため、子どもたちはわりかし自由に好きなことができます。馬小軍という主人公の少年はタバコは吸う、酒は飲む、更にはあちこち不法侵入する実にけしからん子どもです。悪ガキグループに入っています。

ただ、馬小軍はチームの中での序列はそんなに高くありません。群れの仲間と認めてはもらっていますが、アルファオス風のリーダーがいて、馬小軍はどちらかといえばそそっかしくてちょっとうっとうしくて、腕力も大したことはありません。

イメージとしは『ド根性がえる』の世界だけれど、『鉄コン筋クリート』並みにシビアさがあり、ヒロシの役割を山崎邦正がになっているという感じでしょうか。

馬小軍は米蘭という女の子をナンパします。女の子はチームに迎え入れられ、少年期の楽しい日々をともに送ります。ところが、実は馬小軍の記憶がはっきりしません。大人になった、老成した馬小軍のナレーションが入りますが「果たして自分が米蘭をナンパしたのかどうか、曖昧だ…どこまでが本当だったか…」と述懐します。馬小軍のような「へたれ」なキャラがナンパして仲良くなるのはちょっと不自然で、観ている側も若干「???」となるのですが、ナレーションでここまで言われるとますます「???」にならざるを得ません。

とはいえ、馬小軍がはっきりと覚えていることがあります。アルファオスキャラのリーダーと米蘭がいちゃいちゃする様子を見て、心の平衡を失った馬小軍は、米蘭の自宅へ入り込み、襲おうとして失敗します。以後、馬小軍はチームの誰からも相手にされなくなり、孤独な夏休みを送ります。

やがてアルファオスのリーダーは兵隊になり、馬小軍も兵隊として全く違う部署へ送られます。それぞれにばらばらになって、誰がどこで何をしているのか音信不通になっていきます。少年時代の友達を失くしたという心のうずきだけが老成した馬小軍の心に残りますが、年齢を重ねると心の痛みよりも当時の仲間たちとの楽しい思い出を懐かしいといった感じで語りが入ります。

映画の最後の最後の場面では、大人になった仲間たちが高級車に乗って北京の街を走ります。当時の仲間が再会して語り合うこの場面は、いわば馬小軍の願望や夢、祈り、心の中の物語です。実際にばらばらになっていて、心の中の痛みと懐かしさだけが残っています。失った友達のことをせめて自分の心の中で大切に懐かしむことは美しいことだと私は思います。このお話を考えた人の少年時代への深い思い入れを感じます。友達を失くした経験は誰にでもあると思います。それは哀しい思い出で、普段はなるべく思い出さないように心のどこかへとしまいこむものかも知れません。言ってみれば中国版の『スタンドバイミー』です。

観る人がそれぞれに自分の十代を懐かしむことができる映画です。1994年の映画ですので、中国経済がいよいよこれからという時です。最後の高級車の場面では「SANYO」の看板が映りこみます。別の意味でも泣けてくる映画です。いい映画です。ただし、馬小軍が友達を失くしたのは米蘭という女の子を襲ったからなので、彼に弁解の余地はありません。真似してはいけません。

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安倍新人事から年内解散を占う

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安倍内閣の改造が行われ、特に注目されているのは稲田朋美さんです。財政政策という点では増税派の稲田さんは安倍氏とは考えが違っているだろうと思いますが、一方で、防衛政策では考えが一致しており、稲田さんに首相の座を譲るのではないかと囁かれる昨今、「改憲」路線を継承させたいと安倍氏は思っているのかも知れません。

一方で、注目したいのは自民党内の人事で二階さんが幹事長に就任したことです。二階さんは外交について安倍氏と考えが一致していないように見えますが、状況次第で党の規約を変更し、安倍氏の任期延長を受け入れるという主旨の発言をしていますので、その人が選挙の責任を持つ幹事長に入ったというのは今後の展開について想像を逞しくしたくなる要素です。

現状では選挙をやればほぼ与党が勝つという状況が続いています。そういう意味ではいつ解散しても不思議ではありません。東京都知事選挙では小池さんが勝ちましたが、小池さんは今も自民党員ということを踏まえれば、保守系の政治家にはこのところいつも追い風が吹いている状況が続いていると言っていいように思います。一方で、参議院選挙では優勢だった自民党が、東北地方に限っては劣勢になった、一人区でいくつも落としたということは、小沢一郎さんが巻き返しを地道に図っていることの現れで、ぼやぼやしていると以前のような拮抗、伯仲、或いは逆転されるということも(少し長めのスパンで見れば)、あり得ないわけではないです。

安倍さんの最終的な目標は憲法改正に違いなく、問題は些細なことを変えるのか、それとも9条に切り込むのかどちらかのようなところだと思いますが、とても9条にいきなり切り込めるという情勢ではありません。周辺から行くにしても、9条に切り込むにしてもまだ時間がかかります。そういう意味では現状の衆参ともに改憲勢力3分の2を抑えるという状況が保てている間に改憲に乗り出すか、それとも、もう一回衆議院を解散してもう少しゆっくりとした速度で進めていくかという話になり、現状のように選挙をやればだいたい勝てるという状況が続くうちに、解散総選挙してしまいたいという発想が生まれてもおかしくはありません。

経済で言えば、アベノミクスの息切れが指摘されています。一方で、財政出動も見かけは大きく真水はまあまあな感じですが、一応は財政出動である程度、短い期間とはいえ潤うことが予想されます。来年になれば、いろいろ厳しいという指摘も多く、となれば、やはり年内解散を具体的に狙っているのではないかと勘ぐってしまいます。

小池さんが勝つと予想してその通りになったので気分が良く、またしても次の予想をしていますが、Brexitで外しているので、予想なんてそんなものです。

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東京都知事選挙を振り返る

今回の東京都知事選挙では、小池さんが勝つと予想していましたが、まさかかくも300万近い票を得てライバルに大差をつける圧勝になるとは想像していませんでした。

私が小池さんが勝つと考えていた理由として一番大きかったのは、三人の主たる候補がそれぞれに票を均等に分け合う事態に陥った場合、実際の街頭での演説が実は大きな要素になるのではないかと考えるに至り、演説力という点では小池百合子さんが圧倒的に強いだろうと思った次第です。小池さんの場合、演説すればするほど増田さんの票を奪うだろうと考え、増田さんの場合は逆にしゃべればしゃべるほど票が減る。鳥越さんの場合も同じ。と考えていました。

東京はリベラルが比較的強い地域だと私は思いますので、野党共闘の鳥越さんがなんだかんだいって有利という観測もあり、私もその可能性はあるかなあとも思いましたが、たとえば宇都宮さんのことは好きだから票を入れたいけど、強引に鳥越さんになったので、ちょっと白けてしまった…という有権者も多かったのではなかろうかなあと思います。

ただ、民進党支持で小池さんに入れたという人が意外と多く、小池さんが自民党から飛び出して選挙戦に臨んだということを評価した人が多かったことを示しています。自民党支持層の半分は小池さんに流れたようなので、今回は自民党の組織選挙が十全に機能しなかった、締め付ければみんな言うことを聴くだろうという考えが甘かったということが言えそうです。

小池さんが最初に手を挙げて、自民も推薦でというパターンなら舛添さん的な展開で無難に当選という流れになったかも知れません。そうすれば都連はメンツを保つこともできたという面は否定できないように思います。しかしながら、小池さんのことを嫌いな人がいるからという理由でここまでもつれたという面があるので、場合によっては誰が責任を負うのかということが問われるかも知れません。

無所属で支持を集めて当選したということになれば、強いリーダーと認識されるでしょうから、小池さんの立場から見れば実にうまくことが運んだように見えるに違いありません。

今後、まず注目されるのは都議会との関係です。当初、小池さんは都議会の解散を訴えていましたが、制度的にそういうわけにいかないので、現状では都連との歩み寄りを目指しているようです。安倍さんは当初から小池さんと敵対するつもりはなく、都連が完敗を認めれば、意外とうまくいくかも知れません。このあたりは当事者にしか分からないであろう間合のこともあるでしょうから、簡単には言えないですが…。

鳥越さんの敗因として、週刊誌報道をあげる方もいると思いますが、あまり大きな要因ではなかったように思います。小池さんと増田さんの戦いがメインで、鳥越さんは注目されたわりには早い段階で有権者の目には「…..」と映っていたような気がしなくもありません。

共和党大会を振り返る

ジュリアーニ氏のスピーチは聴衆の心を掴んだ感じでした。大会全体を盛り上げるために、とりあえずジュリアーニ氏がどかんとスピーチしてもらうという作戦は良かったように思います。

とはいえ、以前も書きましたが、共和党大会にはブッシュ親子も来ない、ルビオは動画のみ、クルーズはスピーチには来たけど支持はしないと、どうも顔ぶれ的にぱっとしません。クルーズ氏の奥様に物理的な嫌がらせをしようとした人物がいて、慌てて退場したという報道もあり、ぱっとしない話題が積み重なります。トランプ氏がクルーズ氏の奥様についていろいろ悪く言ったことが、どうも両者の間、或いは双方の支持者の間にも、感情的なしこりを残したように見受けられます。

トランプ氏の若くて美しい奥様ですが、英語のスピーチが酷評されています。英語ネイティブの方ではないのですし、そもそもいろいろな国から人が集まってできているアメリカで、英語が下手なことを揶揄するのは酷ではないのかと思います。トランプさんがヒスパニックをいろいろ悪く言ったことのブーメランと言えばそうかも知れないですが、やはり、英語ネイティブでない人に英語が下手だと言ってバカにするのをいいことだとは思えません。一方で、奥様のスピーチはオバマさんの奥様のスピーチのぱくりがあったということも話題になりました。これはスピーチライターが悪いです。人材がいないということをここでも露呈したように感じられます。

トランプさんの政策のトーンダウンが指摘されている一方で、メキシコとの国境に壁を作ることを共和党として正式に決めたということですが、これはアメリカの領土の内側で作るものですから、壁を作ること自体には外国との交渉を必要としませんし、壁を実際に作らなくても、メキシコと「金を出せ」「だすわけねえだろ」のやりとりをぐだぐだ続ければいいので入れたのではないかと思います。トランプ色を薄め過ぎないというのが狙いだと思いますが、まあ、ここまでぐだぐだぼろぼろだと勝機ははっきり言ってだいぶ低いと思いますので、どうでもいいといえばどうでもいいことにように思えてきます。

「アメリカは素晴らしい」「アメリカは神の国」的なことを言うと聴衆が盛り上がるのは、アメリカの国情というものですが、そういうアジテーションの部分だけが大いに盛り上がったというように私には見えました。ジュリアーニが大統領候補になっていたら、いろいろ違ったかも知れないですが、どうやら民主党のヒラリーさんで大体、決まるのではないかと改めて思った次第です。

次は民主党大会です。ヒラリーさんとサンダースさんの支持者の間でどの程度和解が進むかが注目されます。オバマさんも出てきて、サンダースさんもヒラリーを支持すると言明すれば、和解がそれなりに促進されていくと見ていいのではないかと思います。

ということは、これはもう決まったようなものですねぇ。

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いよいよ共和党大会

共和党大会がそろそろクリーブランドで始まります。トランプさんが正式に指名される運びとなるとのことです。ただ、ブッシュ親子、マケイン、ロムニーが出席を見送るということで、共和党内部が固まっていないことを示しています。

というより、共和党のエスタブリッシュメントがトランプさんに拒否反応を示しているように見えます。ケーシック氏やクルーズ氏が指名争いから撤退した時、「お、これはエスタブリッシュメントと話がついたか?」と私は思ったのですが、どうやらそういうわけではなかったようです。もちろん内側でどのように話がどう紆余曲折したかは想像もできませんが、選挙参謀が辞めたというのが今思えばメッセージのようなものだったのかも知れません。スコットランドに行ったのが潮目の変わったときかも知れません。お金がないのもエスタブリッシュメントの協力がないからです。残り期間を自前でやれというわけです。トランプさんは場合によっては不動産を担保にお金を借りて選挙を続けるということになるかも知れません。不動産は大方担保に入っているでしょうから、これはなかなか厳しいです。

最近のトランプさんのスピーチ動画を見ると、聴衆に元気がありません。大統領選挙となれば、支持者がそれぞれに大声を出してわーわー盛り上げお祭り騒ぎするものと決まっています。なぜそうなるのかは分かりませんが、そういうことになっています。ところが、ペンスさんを大統領候補に指名するとスピーチした時の観客の反応は「一応」わーわー言っている。程度にしか感じません。心からはじけているという印象を得ることができません。聴衆が冷め始めてる、不安を感じているのではないかという気がします。トランプ側の陣営は焦りを感じているに違いありません。ペンスさんはきっと良い人だと思いますが、どうしても平凡に見えてしまいます。ヒラリーさんとウオーレンさんのような華々しさに欠けています。

最近はトランプさんが「こんな発言をした」というような話題はありません。本選を意識して派手な発言を控えていることがわかります。もちろん、言いたい放題の暴言がまかり通ることは良くありませんが、暴言、或いは控えめに言っても放言がないとトランプさんはただの人です。もともと政治についての哲学も見識もないので静かに語るという芸ができていません。アメリカファースト、メイクアメリカグレイトアゲインしかないのはここに来てきついことでしょう。ヒラリーさんはできています。見事なものだと感嘆します。私はヒラリーさんのことが特に好きだとかそういうのはないですが、静かに語る芸をしたときの役者の違いは明らかです。メール問題を切り抜けてから運が向いてきたように見えます。さすがです。強運なのです。

もちろん、直接討論会までにトランプ氏がよく練習して静かに語る芸を身につけるという促成作戦はあり得ますが、多分、そんな芸はできないだろうなと私は感じます。

共和党の人たちは「あぁ、やっぱりジェブブッシュにしておけばよかった…」と後悔しているかも知れません。一時はエスタブリッシュメントもトランプに乗るのではという気配が見えていましたが、今はほぼ完全に冷め切っているように見えます。次の4年間は諦めた..。という感じかも知れません。

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ボリスジョンソン氏「EU離脱とヨーロッパ離脱は違う」の件

イギリスの新しい首相がテリーズメイさんに決まり、ボリスジョンソン氏は外務大臣として入閣しました。毒を以て毒を制す人事なのでは?という気がしなくもありません。外務大臣の立場になれば、以前のような言いたい放題というわけにはいきません。仮にもよその国とうまくやっていく責任者ということになりますので、「イギリスファースト」とか「イギリスを取り返す」とかみたいなことも、立場上、軽々しく言うわけにもいきません。

ボリスジョンソンさんの外務大臣として仕事をする初日になって、メディアに対し「EU離脱はヨーロッパ離脱を意味しない」と言っています。しかも「in any sense」ということですので、一切、意味しない、全然違うということみたいです。要するにトーンダウンしています。ヨーロッパに気遣いを見せています。

国民投票以前のボリスジョンソンさんを知っているメディアの人たちからは、ちょっと唖然…な感想が漏れてきそうな気がします。EU離脱派だった人たちは本当に離脱するとは思わなかった…と今は発言も抑制的で、軸がぶれ始め、できれば話を元に戻したいという様子を見て取れなくもありません。できるだけEU脱退通告の時期を遅くし、可能ならうやむやにし、場合によっては総選挙で問い直すという選択肢も出てきているあたり、イギリスはもしかするとなんだかんだ言ってEUから離脱しなくてすむように手を尽くすような気もします。

ドイツのメルケルさんとか欧州委員会のユンケル委員長とかは「出ていくなら早く出て行ってくれたほうがせいせいする。他に出て行きたい国は、イギリスがこれからどんな目に遭うかみきわめてからにしたほうが身のためだ」的な姿勢ですが、イギリスがEUを離脱しないことになったら胸をなでおろすでしょうから、双方、水面下でいろいろ模索しているかも知れません。ただ、けじめはつけさせるでしょうから、詫びを入れさせる、以前のような特別扱いを変更する、シェンゲン協定にも入らせる、なんならポンドもユーロにしてもらいましょうか、という話も出てくるかも知れません。

意外なところで打撃を受けているのはトランプさんではないかと思います。わざわざBrexitの日にスコットランドへ出かけて「これからはみんな自国ファーストだ」みたいな感じのことを言ってアメリカの有権者にいいアピールになると考えていたと思いますが、当のイギリスが二の足を踏み始め、ボリスジョンソンさんは転向気味でファラージさんはある意味逃走。トランプ節の決め手に使えなくなってしまった感じです。スコットランドに行ったのも無駄足を運んだというところではないかなあと思います。もちろん、まだ、アメリカの大統領選挙は分かりません。今はほぼほぼヒラリーさんの勝ちが決まりに見えますが、双方の党大会が終わり、直接対決がなされる中で、どんなハプニング、スキャンダル、失言問題が飛び出すか分かりません。トランプさんにとっても欧州情勢は複雑怪奇なのではないでしょうか。

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東京都知事選挙予想。結論。小池さんが勝つ。

今は7月13日の夕方です。東京都知事選挙は明日告示です。選挙運動で苦労している人に申し訳ないので、告示後はあれこれとは述べず、この話題は封印するつもりです。開票の時に答え合わせしたいと思います。

先ほどまで煩悶するように考え抜きましたが、結論としては小池さんが勝つと思います。考え過ぎて胃の調子がよくありません。

Brexitの時に予想を外していますので、そんなにえらそうなことは言えません。以上です。個人的には誰に勝ってほしいとかそういうのはありません。少し休みます。

東京都知事選挙を予想する

今日は7月11日です。14日が告示になります。告示後にブログでいろいろ書くのは選挙運動で苦労している人に申し訳ない気がしますので、告示前に書きたいと思います。東京都知事選挙は後出しじゃんけん有利説があるため、明日、思いもよらぬ大物が名乗りを上げるということもあり得ないわけではないですが、明日明後日が仕事が忙しいので今日のうちに書くことにしました。参院選が終わったばかりでなかなか目まぐるしいです。

自民は増田さんと小池さんの分裂選挙になります。小池さんは落下傘で東京選出の政治家になった方ですが、もう10年くらい経ちますのでそれなりに地盤を作っていると思います。今回の小池さんの先出しじゃんけん作戦はそこそこ悪くなかったと思います。果たして誰がいいのやら…とみんながうなだれているときに自分が手を挙げて流れを作ろうとするのは後出しじゃんけんでサプライズ当選を狙うよりはよほどまっとうで健全なことのように思います。民主主義の理想にも近いやり方のように思います。

しかしながら、自民党の都連が小池さんを推したがりません。前回は舛添さんを推すことすら辞さなかった自民党ですが、ここまで小池さんが声を上げても推さないということは、党内の味方がかなり少ないのだろうと思います。一方で増田さんは東京出身ですが、岩手県知事の印象が強く、なんとなく元官僚落下傘候補風に見えてしまいます。自民の都連は増田さんを擁立していますが、必ずしも増田さん有利とも言えません。

東京は自民と民進が拮抗しています。参院選では民進2、自民2、公明1、共産1ときれいに分け合っています。そのため、候補の一本化が勝敗に大きく影響するように思います。これまで自民は著名人を組織で擁立するというスタイルで組織票+浮動票を得て都知事の座を維持してきましたが、今回は厳しいかも知れません。

野党が候補を一本化できれば、相当に有利になるはずですが、共産からは宇都宮さん、民進からは古賀さんがそれぞれに立候補することになるらしいので、野党も分裂していると言えば分裂しています。民進党としては参院選で共産党と協力してみたものの、共産党の議席は増えて民進党の議席が減るという結果が出たため、都知事選で協力するという空気は吹き飛んでしまったのかも知れません。宇都宮さんはそんな諸事情はどこ吹く風で我が道を行く感じに見えます。現状では意外と宇都宮さんが有利に見える気がします。知名度、何度でも立候補するガッツ、弁護士の経歴、清廉潔白そうなイメージなので、当選するかどうかはともかく、いい線いきそうな気がします。東京のバーニーサンダース的なイメージを確立すると風が吹くかもしれません。投票日までに風が吹くかどうかは分かりません。風が吹いてほしいと思っているわけではありません(念のため)。

石田純一さんは民進・共産連携の流れを作るための半分アドバルーンのようなもので、背後に絵を描いた人がいるはずですが、それが誰かはさっぱり分かりませんし分からなくても困りません。意外と小沢一郎さんかも知れません。

以上のように、今回は本命も対抗もありません。したがって大穴もありません。敢えて言えばマック赤坂さんが大穴といえば大穴ですが、これはさすがにご冗談でしょうファインマンさんです。盛り上がりに欠ける白けた選挙です。

参院選の結果を振り返る

参議院選挙では自公維新と共産が議席を伸ばし、民進が議席をかなり減らし、日本のこころや社民のような小さい政党は議席を減らすかゼロになるという結果になりました。大きい政党に票が集まりやすい選挙になったとも言えますが、大きい政党の中では民進だけが議席を減らしているのが目立ちます。民進支持層だった人のうち、保守寄りの人は自民か維新へ投票し、革新寄りの人は共産に投票したことが伺えます。「民主」と書かれた票がどれくらい無効票扱いになったのか選管によって判断が変わってくるらしいので、なんとも言えませんが、わりと出ているらしいです。

それはそうとして、気になるのは改憲勢力が与野党合わせて三分の二以上を獲得したということです。次の衆議院選挙で今までと同じように自民党が勝てるかどうかは分からないという前提に立てば、改憲を望む人は、次の衆議院選挙までに改憲を発議したいと考えるに違いないと思います。とはいえ、何をどう変えるかはこれからの議論であり、改憲といっても人それぞれに意見が違い、自民党の改憲草案でまとまっているわけでもありませんので、わりと道半ば感もあるように思います。いずれは衆議院の解散が視野に入ってきますので、時間的にゆっくり議論すればいいというわけでもないように思います。或いは国会で発議して、衆議院と国民投票のダブル選挙ということもあるかも知れません。

橋下さんのいない維新ではなかなか難しいのではないかと私は思っていましたが、今回のように議席を伸ばしたということは、関西での草の根レベルでの支持が固まっていることを示しています。橋下さんに首相になってほしいともほしくないとも思っていませんが、維新が結果を出している以上、橋下さんが首相になるシナリオは今も生きているという気がします。飽くまでも思考の訓練です。

私個人はどうしても憲法を変えなくてはいけないとも、どうしても憲法を変えてはいけないとも思いません。これまでも憲法典は触らずに解釈や運用や習慣や実情によって柔軟にやってきているように思いますし、事実上状況に合わせて改憲してきたとも言えそうに思いますので、今後もそれでいいのではないかと思います。大騒ぎして書き換えなくてはいけないことは特にないように思えます。

今後は曲学阿世の徒もぞろぞろ出てくるでしょうし、言を左右にする人、エピゴーネン、デマゴーク、煽りなどいろいろな人が様々なことを言うことになると思います。いざ本当に改憲することになったら、Brexitの後みたいに腰が引けてしまう政治家が出てくるなどということもあり得ます。

今後は、憲法をどう改正したいのかという議論と、衆議院解散はいつになるのかという議論がごっちゃまぜになってそこに消費税やら金融緩和やらが乗っかってくるので当面は頭の中を整理するのに苦労するかも知れません。見守りたいです。

天皇とお米

縄文時代と弥生時代の決定的な違いは米作の有無にあります。縄文時代は狩猟採集が中心ですので、獲物がとれればいいですが、そうでなければ明日をも知れない日々を送らなくてはいけません。獲物の肉は干したり焼いたりすれば保存できますがお米ほど手軽でもなく、お米ほど長く保存することもできません。

米作するようになると、お米は長期保存が可能なために「貯蓄」できます。耕作面積を確定して水田を整備すれば毎年の収穫量が分かります。もちろん天候に左右されますが、狩りに行くよりは安定しています。人口も劇的に増えます。一般的には米作により土地を多く持つ人とそうでない人に分かれ、貧富の差が生まれ、身分の差が生まれたと説明されることが多いです。そういう面は確かにあると思います。

ただ、身分の差という意味では、縄文時代に絶対になかったかと問われれば、そういうことはないと思います。狩りが上手な人、体力的に優れている人、性的な魅力が高い人、宗教的な意味で高貴だと認められていた人などが存在したのではないかなぁと私は想像しています。一万年も続いた時代ですし、日本各地に集落があったとすれば、そのような想像した通りの社会構造があった「場合もある」くらいは考えていいと思います。お墓の様式や副葬品は年代や地域によって随分差があると思いますが、身分の差という視点で分析するといろいろ見えてくるのではないかなぁと思います。

いずれにせよ、お米が貧富の差に決定的な意味を持ったということはきっと間違いないと思います。お米は戦略物資です。天皇は大嘗祭と新嘗祭でお米を食べます。大嘗祭は即位の時に行われ、新嘗祭は毎年行われます。五穀豊穣に感謝すると同時に、戦略物資を食べることによって統治権を確認するという象徴的な意味もあるのではないかと思います。お米は一本の苗にたくさんの実をつけますから子孫繁栄にも通じて大変縁起がよいのだとも思います。

東京の皇居には小さな水田があって、今も毎年天皇陛下が親しくお田植をされるそうです。お米を大切にするという意味の表現があると思います。戦略物資をコントロールするという意味ももしかするとあるかも知れません。ただ、平安時代の天皇が御所でお田植をされていたとか聞いたことも読んだこともありません。京都御所を拝観した時にお田植されていた場所みたいな表示も見たこともありません。なので、近代になってから、天皇家が東京に移ってからそういうお田植が行われたのではないかなぁと思うことがあります。推し量ってばかりで申し訳ないです。

天皇家のルーツは諸説あります。今となってはもちろん分かりませんし、はっきりさせる必要もありません。神話があってそこに想像の余地があるのがおもしろいのだと思います。ただ、お米が戦略物資で、大嘗祭と新嘗祭があるように天皇家もお米を重視していて、縄文と弥生をばっさりと区分できるほどの重みがあるのなら、実は天皇家は米作技術を持って大陸から渡ってきた人で、独自の米作技術によって富と権力を確立し、全国に統治権を広げたと想像することも可能です。想像ばっかりで申し訳ないです。お米というキーワードで天皇家のルーツを推量するのもおもしろいかなぁと思ったという程度のお話です。

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