中大兄の独裁【やりすぎ天智君】

蘇我入鹿が中大兄によって殺害された翌日、入鹿の父親の蝦夷が自害し、蘇我氏本宗家は滅亡します。蝦夷が死んだ翌日に中大兄の母親の皇極天皇は、彼女の弟の軽皇子に皇位を譲り、軽皇子は孝徳天皇になるわけです。で、入鹿が殺されてから孝徳天皇が即位するまで僅かに二日ですから、おそらくは綿密な打ち合わせが事前になされていたのだろうという気がしますね。で、中大兄は母親が元天皇で、おじさんが今の天皇で、それを自分が糸を引くという感じになるわけですから、蘇我氏を排除してから、中大兄サイドでいろいろなことが固められたと言っていいと思います。孝徳天皇は都を飛鳥から難波宮へうつしますが、これも中大兄の意思によるものと見て問題ないと思います。蘇我氏を倒したことにより、新しい政治が始まって、勝利者としての中大兄や孝徳天皇の景気のいい、明るい団結した感じをですね、当時の彼らの心境を少し想像すれば、すぐに理解できると思います。ポスト蘇我氏をエンジョイしているという感じでしょうか。入鹿が謀殺される際に、蘇我氏の人物でありながら中大兄に協力した蘇我倉山田石川麻呂という人物がいるんですが、彼は孝徳天皇の時代に謀反を計画したっていう、証拠とか全然見つからないような罪で追い詰められて自害させられているんですが、要するに中大兄と孝徳天皇にはめられたわけで、用済みだから殺されたと見るのが正しいと思います。まあ、そのような謀殺も協力してやるわけですから、中大兄と孝徳天皇は仲が良かったことは絶対に確かだと思うんですね。

ところが、そのようなハネムーン期はあまり時を経ずして終了してしまいます。仲間割れってやつですね。中大兄は難波宮から飛鳥へと都を戻すことを主張するんですが、孝徳天皇は受け入れず、結果、中大兄は飛鳥へ帰り、孝徳天皇は難波宮にとどまるという形になります。興味深いのは孝徳天皇の皇后である間人皇女(はしひとのひめみこ)という女性がいたんですが、この人は中大兄の妹なんですけど、彼女も中大兄について一緒に飛鳥に帰るんです。ですから、朝廷が分裂したというよりは、孝徳天皇が中大兄に見捨てられて、孤立しちゃって難波宮に取り残されちゃった、みたいな感じだと思った方が実情に近いと思います。このような分裂劇があった翌年、孝徳天皇は亡くなっているんですけれど、ちょっと想像力を膨らませれば、中大兄が人を送って命を奪ったんじゃないかというのはすぐに気づきますよね。この時代は不思議なタイミングで病死する人が多いんですけど、亡くなった方の立場や事情、タイミングとかを考えて、どうも殺されたんじゃないのかな…と思える人ってたくさんいるんですね。今の感覚だとかなり恐ろしいんですが、飛鳥・奈良時代の天皇家ってすさまじいんですよ。孝徳天皇の亡くなり方を見ると、中大兄がいらなくなった人物は捨てて殺すというスタンスで政局に臨んでいたことがよく見える気がします。

孝徳天皇の死後、皇極天皇だった中大兄の母親がもう一回天皇に即位するという、異例のできごとがあるんですが、この天皇が斉明天皇ということになりますね。この斉明天皇の時代になっても、中大兄は孝徳天皇と仲たがいになったことを忘れたわけじゃなくて、孝徳天皇の息子の有間皇子に対して謀反の疑いをかけ、有罪の決定をして処刑してしまっています。有間皇子が生きていた場合、天皇の息子ですから、皇位継承を主張することができるわけで、孝徳天皇の影響を完全に排除したいと思った中大兄は有間皇子を操るんじゃなくて、殺すことにしたと考えていいわけですから、邪魔者は躊躇なく排除する中大兄の冷徹さのようなものを見出すことができると思います。有馬皇子の訴因みたいなことをちょっと考えてみたいんですが、蘇我赤兄という人物が皇子に近づいてですね、「あなたのお気持ちは分かりますよ。中大兄にお父上を排除されちゃって、そりゃ、お悔しいですよね。みなまで言わなくてもとてもよく分かります。だって、私たち蘇我氏も、中大兄にやられちゃったんですから」みたいなことを言われて、あー理解者がいてくれるんだと有馬皇子は思っちゃって、二人は打倒中大兄で意気投合しちゃったって話らしいんですね。多分、お酒と肴の用意された席で、ほろ酔いで、あんまり本気じゃない会話だったと思うんですよ。で、蘇我赤兄がその時のことを密告して有間皇子が逮捕されたわけですから、ぶっちゃけ思いっきりはめられてますよね。蘇我赤兄にとって中大兄は本家が潰された仇みたいな存在みたいなはずなんですけど、こんな風に密告してご機嫌とるって、全く見るべきところがないというか、さっきの石川麻呂もそうですけど、蘇我氏で生き残ったやつってろくなのがいないのかよって気骨の無さに気の毒なくらいに思えちゃいますよね。

中大兄のサイコパスぶりは、政敵を陥れて潰しにかかるということだけじゃなくて、額田王を弟と取り合ったりすることにも現れていて、知れば知るほど恐ろしいんですが、そういった強権ぶりはいつまでも続いたわけじゃなくて、朝鮮半島での戦争で失敗して彼は一機に追い詰められていくことになります。それはまた次回ということで。ありがとうございました。



蘇我氏の滅亡【日本史探訪】【やりすぎ天智君】

蘇我氏は天皇家から恨まれてもおかしくないほどに業が深いんですよね。聖徳太子は馬子にやられたし、聖徳太子の息子の山背大兄王は一族全員、蘇我入鹿によって根絶やしにされていますから、天皇家の側の人間としては蘇我氏に対して危機感を抱くのは当然と言えます。うっかりすれば、たとえ天皇家の人物であっても、蘇我氏にやられちゃうという恐怖はあったし、臣下の身分である蘇我入鹿によって皇室の人間が殺されるという事態に対して、復讐しなければならないという思いもあったと思います。それを実現したのが、中大兄皇子、後の天智天皇ということになるんですね。

中大兄皇子と中臣鎌足は協力してタッグを組んで蘇我入鹿謀殺を計画するんですが、多分、中大兄が中心になっていて、鎌足はその補佐役だったんじゃないかなと思います。というのも、中大兄の人生を見ていくと実に血なまぐさいです。しかも弟から恋人の額田王を奪ったりとかしてますから、かなり気性の激しい人物なんですよ。ですんで、当時の日本の政界で最高実力者だった蘇我入鹿を本当に殺してしまおうと考えつく人物がいるとすれば、それはやっぱり中大兄だと思うんですよ。伝承では中臣鎌足が思いついたってことになってますけど、それはおそらく、鎌足の息子の藤原不比等がそういう風に創作したんじゃないかなと思いますね。不比等は自分のことを大きく見せるために、父親が如何に偉大なのかということを喧伝しようとしたふしがあるわけです。当時は本人よりも先祖がえらいかどうかで人物の値打ちが測られてしまいますし、藤原氏は鎌足が初代ですから、鎌足が偉かったということにしないと、不比等としては血統の優位性を保つことができないというそういう現実的な必要があったのだろうと思います。いずれにせよ鎌足が中大兄に協力した理由としては、中臣氏が日本神道の祭祀をつかさどる家柄というのが大きかったと思います。蘇我氏が仏教オンリーで押していた時代に、なんとか神道の方の命脈も保ちたいと考えたはずです。蘇我稲目と物部のおこしとの宗教戦争の時は、物部氏が負けちゃいましたけれど、中臣は物部サイドの家柄だったんです。鎌足は出身地が関東地方らしいんですが、こういうのも、戦争の時に負けて大和からうんと遠いまだまだ未開地だった東日本に追いやられていたと考えれば筋が通るし、それにどうにか大和に復帰できた鎌足としては、蘇我氏への復讐心もあるし、蘇我氏をやらなければいつか自分がやられるんじゃないかというそれは相当な不安はあったと思います。

要するに、中大兄としては、聖徳太子と山背大兄王という皇室の人物が殺されて、いずれ自分もやられかねないという不安と恐怖、それから復讐心があって、鎌足にも同じような感情があって、二人による蘇我氏への復讐ってことになったわけなんですね。

中大兄にはあんまり有名じゃないんですけど、お兄さんがいてですね古人大兄皇子と言うんですよ。この人もですね、蘇我氏が滅亡した後に中大兄に殺されているんですね。古人大兄皇子の場合、蘇我氏が次の天皇と思ってかわいがっていた人らしいんですが、頼みの綱の入鹿とそのおやじの蝦夷が死んじゃって、怖くなって出家して吉野へ逃げたんですよ。で、そこへ中大兄が、こいつは謀反を企んでるという理由をつけて兵隊を送り、殺している。中大兄ってかなりのサイコパスですよね。他にも邪魔ものは次々と殺していくんですけど、それについては次回以降、また述べたいと思います。

それで、蘇我入鹿が謀殺された当日のことなんですが、三韓の使者が来ているからということで、その儀式のために呼び出されて宮中に入鹿は向かいました。三韓というのは、朝鮮半島の3つの王国である高句麗と新羅と百済のことのようです。で、そんな儀式って普通に考えるとおかしいんですよ。この3つの王国は、それぞれ覇権を争ってしのぎを削っていますから、仲良く三人並ぶなんて、ちょっと考えにくい。しかも、使者が皇極天皇の前に並ぶということなんですが、それって朝貢外交スタイルってことになりますけど、朝鮮半島の国からするとわざわざ大和王朝に朝貢する理由なんてないんですよ。みんな顔は中国の隋とか唐の方に向いているわけですから。敢えて言えば百済の場合は日本の後ろ盾を得ることで新羅、高句麗に対抗しようとしていたようですから、百済の朝貢はあり得ても、3つとも来るなんて、考えにくいわけですね。ですから、このような催し自体、実は入鹿をおびよせるための偽の外交儀礼だった可能性は充分にあります。

入鹿が会場に入ろうとすると、道化が出てきて、剣を渡せと言ったそうです。入鹿は文武両道に優れていて、剣も達人級だったそうなんですが、中大兄としては入鹿から剣を取り上げておきかったんでしょうね。道化に剣を出せと言われた入鹿は多分、心理的な抵抗はあったはずなんですが、やっぱり道化に剣を渡しています。多分、当日の雰囲気は、これは外交儀礼というよりは国際交流だから、気楽に楽しくしましょうよ。というような雰囲気があって、それを道化が盛り上げていたんだろうと思います。道化がどんないでたちをしてたのかというのは全然分かりませんけれど、多分、結構楽しい雰囲気のいでたちをしていたに違いないと私は思います。なぜかというと、飛鳥地方にはいろいろな石のオブジェが残っているんですが、それが亀とか猿とか楽しい動物のものが結構あるんですよね。あつまれ動物の森みたいな楽しさがあるわけです。そういう楽しい動物の演出が好きな感性の人たちが飛鳥地方の都にいたということができると思いますので、道化もそれにふさわしい楽しい感じの人たちだったんじゃないかなって思うんですね。それで入鹿も油断があって、抵抗しきれずに剣を道化にわたしちゃったんじゃないでしょうか。

そういうわけで丸腰になった蘇我入鹿がしかるべきところに座ってですね。その隣には入鹿のいとこの蘇我倉山田石川麻呂(そがのくらやまだ の いしかわまろ)が座るという感じになっていたようです。この石川麻呂という男も中大兄の一味に入っていたんです。要するに同じ蘇我氏の入鹿を裏切って、中大兄についているわけです。多分、入鹿が死んだら俺が蘇我氏をしきるぜくらいに思っていたと思うんですが、実際には蘇我氏そのものがだめになっちゃって、石川麻呂も後に中大兄に言いがかりをつけられて自害に追い込まれています。やっぱり、裏切り者って駄目なんですよ。ろくな末路を迎えませんねえ。小早川秀秋だって普通に考えれば毒殺ですよね。人を裏切らないのがやっぱり一番だっていう教訓ですね。

で、この石川麻呂が文書を読み上げると、その瞬間に入鹿にみんなでとびかかって殺すってことになっていたんですが、みんな怖がって動こうとしないわけですよ。入鹿は丸腰ですから、まず大丈夫なはずですけど、万が一失敗したら我が身が滅びると思って、びびっちゃってるんですね。いかに入鹿が怖かったか、よく分かりますよね。で、中大兄が飛び出して斬りつけた。やっぱり登場人物たちの中では、中大兄が一番腹が座っている感じがしますね。第一撃で絶命しなかった入鹿は皇極天皇に助けを求めます。私は何も悪いことをしていないのですから、お助けくださいというわけです。ところが中大兄が、こいつは天皇家ののっとりを企てていますって皇極天皇に言います。皇極天皇は中大兄の話を信じて、その場を去っていきます。中大兄に対して、私は関与しないから、充分にやりたいようにやれというわけです。皇極天皇は女の人で、中大兄の母親ですから、そりゃ、入鹿よりは中大兄の味方をしますよね。道化に剣を渡さなければ、入鹿はもうちょっと戦えたかも知れませんが、気の毒なことにそういうわけではなかったので、皇極天皇がその場から立ちさった後、中大兄に討ち取られます。入鹿の父親の蝦夷は翌日自宅で自害し、自宅には火が放たれたそうです。一日時間差があるというのは、蝦夷がなんとか形成挽回できないかと試みたということだと思うんですが、中大兄の工作の方が巧妙だったんでしょうね。もはやこれまでということになったんだと思います。古代の天皇家って本当にいろいろな意味で血塗られていますけれど、中大兄あたりはそのハイライトみたいな感じです。




鎌倉のお好み焼き‐津久井‐

先日鎌倉へ行った際、ふらっと入ってみたお好み焼きのお店が、津久井である。以前からお店の存在には気づいていたし、ちょっと入ってみたい気持ちもあったのだが、今回は初めて「お庭を見ながらお食事できます」との文言のある看板があることに気づき、それはいいと思って入ってみることにした。鎌倉駅にほど近いにもかかわらず、やや小道へと入っていかなくてはならないため、一見隠れ家風で雰囲気は満点だ。都内で隠れ家風なら果たしていくら払うのかと戦々恐々としかねないが、お値段は良心的で、安心して食事ができることは請け合いだ。お店で働いているおば様たちの雰囲気は良く、きっとおば様たちは働くのが好きで、楽しみつつ真剣にお仕事をされているのだという印象を得た。素晴らしいことだ。古民家風の店内は谷崎潤一郎が陰影礼賛で述べている和風ベースの近代建築という感じで、これもまたたまらない。昭和前半の雰囲気で、レトロというよりは古き良き日本という言葉が当てはまる。

おば様たちがやや忙しすぎたからだと思うのだが、お好み焼きがいつまでも焼けなくて、その原因は火が通常の半分しか点いていなかったということが分かった。隣のテーブルの素敵なマダムたちが働いているおば様たちに声をかけてくれて、点検してもらってようやくわかった事実だった。とはいえ、そのような小さなことで動揺するような私ではないので、どうってことはない。お好み焼きが最終的に焼ければそれでいいのだ。焼きあがったお好み焼きはあんまりおいしくなかったが、雰囲気の良いお店なので、気にしない。気にしない。一休みである。



バイデン氏の躍進‐予想を裏切りサンダース超え。で、トランプには勝てるのか?‐【Watch America】

私はスーパーチューズデーでは最も注目をあつめているサンダース氏が勝つと見ていたが、実際に蓋を開けてみると、バイデン氏がサンダースを超えて一位に躍り出た。バイデン氏が我々は社会主義革命を求めているわけではないとサンダース氏を牽制する発言をしたことは、cnnの配信で見たが、その言葉の通り、民主党の多数派はサンダース氏の言うようなガチ社会主義というわけではないというわけだ。民主党はマイノリティの声を拾い上げることに存在意義があると考えられているが、彼らはその手法として社会主義を選びたいとは思っていないようなのだ。むしろ、マイノリティの人々にも自由と民主主義の良い面を謳歌してもらいたいということなのかも知れない。

バイデン氏がここまで勝ち上がってきたのは、民主党多数派がバイデン氏でいこうとまとまったのが大きいと言えるのだが、その背中を押したのは、やはりバイデン氏がアフリカ系アメリカ人からの厚い支持を得ているということは大きかっただろう。スーパーチューズデーの直前、サウスカロライナの予備選挙でバイデン氏は勝利を得たが、やはり黒人層の支持が勝因として大きかったことは誰もが認めているところだ。オバマ大統領の副大統領を務めていたという経歴が、黒人層からの厚い支持につながっている。クリントン夫妻も黒人からの支持は厚いと言われていたが、オバマ氏との距離感が微妙だったヒラリーよりも、ガチでオバマを支えた印象のあるバイデンさんの方がより信頼されているということなのかも知れない。一方でサンダース氏は黒人層からはさほど人気がないと言われてはいたものの、やっぱりそれは本当だったと弱点を見破られてしまうことになってしまった。

私はサンダース氏の弱点はあまりにガチで社会主義者であるため、途中で民主党内部から、社会主義は実はあんまり…という声が起きて人々がついてこなくなる可能性にあると考えていたが、それはスーパーチューズデーの後に起きるような気がしていた。しかし実際には、それはスーパーチューズデーに合わせるようにして起きたということになる。cnnはサンダース氏に注目していたが、今ではすっかりバイデン氏への注目度を上げており、もはや民主党はバイデン氏の勝利で決まりそうな勢いだ。とはいえ、バイデン氏とサンダース氏の差は小さく、これからどうなるかもうしばらく見て行かないと軽々に先を見通すことができない事態に立ち至ったようにも思える。

だが、気になるのは、バイデン氏で本当にトランプ氏に勝てると彼らは考えているのだろうかという点だ。トランプ氏に勝てなければ、今回の一連のできごとは所詮は民主党内のコップの中の嵐のようなものに過ぎない。トランプはヒラリーに勝った男であり、強烈な個性に対する人気が衰えているようにも見えないし、弾劾も乗り切ったので、政権発足以来、実は今が一番パワーがある状態とも言えそうだ。サンダース氏は前回、もうちょっとでヒラリーを超えそうなくらいのところまできた。民主党内でもっともヒラリーをおびえさせたのはサンダースだっただろう。それゆえに、トランプ対サンダースは見ものになると私は思っていたし、直接対決は是非一度は見てみたいものだった。普通な人に見えるバイデン氏にそれだけの存在感を発揮できるだろうか。




東京オリンピックは延期がベストなのではないかなあと思う件

疫病の流行で、東京オリンピックの開催すら危ぶまれる昨今ではあるのだが、IOCのけっこうえらいおじさまが、東京オリンピックは来年やればいいじゃないかと通信社のインタビューに答えていたのを見た人は多いと思う。私は、これはIOCが日本にかけた温情とか武士の情けみたいなものであると同時に、利権共同体♪として、おいしい思いも諦めなくていいよね!とするIOCからのシグナルなのではないかと私には思える。中止論とか、ロンドンでやったらどうか説とかあるが、それはあまりにかわいそうなので、来年にずらして東京でやらせてあげようということだ。アメリカのテレビ局が大金をはたいて放送権を買ったりとかの都合もあって、それでIOCは潤うはずなので、みんなでせかっく潤えるのに、中止にしたら、もったいなさすぎる。来年に持ち越そうよというわけだ。

安倍首相は今のところ、なんとかして今年の夏に東京でオリンピックの開催を果たそうとしているように見える。4月ごろには収束したと世界に発表したいので、ここで感染の拡大をなんとしてもとどめるために記者会見まで開いて学校は一斉休止という思い切った措置に出た。私はこの措置自体はこれでいいと思う。インフルエンザでも学級閉鎖があるというのは、そういう措置が有効だと認められているからだ。なら、一斉にそうすれば新型肺炎はある程度押しとどめることができるかも知れない。但し、会社もお店も開いていて、人々は電車に乗っている。学校が休みになってうかれた子どもたちは街を出歩くに決まっているようにも思えるし、なんといってお卒業式の生徒さんだったら、私的にパーティでも開いて卒業式をやろうとするだろう。卒業式がないのもあんまりと言うものだ。というわけで、学校閉鎖は多少の効果はあっても、完璧な効果を期待できるようなものではないということだ。感染はかなり広がっているらしいので、学校だけ休みにしても追いつかないのではないかとの不安が残る。

軽症のかぜだったら病院に行かないでほしいとのお上からのお達しも、変な話だとは思うが、合理性が全くないわけではない。患者が病院に押し寄せれば、病院が主たる感染ルートになりかねないし、患者が多すぎて医療崩壊してしまい、致死率が上がるというのも避けたいに違いない。気持ちはよく分かる。しかし、どうも、新型肺炎が多くの場合、軽症で改善するとの指摘を信じ、できることなら、仮に新型肺炎に感染していたとしても軽症で済むのならそのまま自宅で自力で治してもらい、感染していたことすら無かったことにしてほしいとの、涙ぐましい願いを感じ取ることは難しいことではない。これ以上、感染者がバンバン出ているとの報道が世界に流れるのはなんとかして食い止めたいし、海外メディアは結局のところ日本の報道を参考にして本国にニュースを送っているので、日本の報道にあんまり騒いでくれるなとの願いもにじんでいて、実に涙ぐましい。だが、翻せば、それくらい楽観できないほど広がっているとの見方もできるわけで、仮に一定期間、新しい感染者が0である状態が続かなければ収束宣言が出せないという場合、それは当面難しそうだ。毎日数名、或いは十数名、日によってはもう少し多く報告されている。全体から見れば少ない数字かも知れないが、収束宣言は出せない。

さて、ここでもうちょっと考えてみたいのだが、仮に収束したとして、夏の東京オリンピックは盛り上がるだろうか?世界中の人が感染を警戒して、集まって来ないだろう。それは風評被害かも知れないが、外国の人からすれば、わざわざ感染するかも知れないと思って日本に渡航する義理はないため、やっぱり敬遠されてしまうだろう。閑散としたオリンピックはきっと悲しいものに違いない。私は最近は、どうも東京オリンピックがバブルを産み、その後のバブル崩壊の要因にすらなるのではないか、だったらいっそのことやめてしまえばいいのではないかと思っていたが、最近は少し考えが違う。というのも、関係した人たちの苦労を考えると、やっぱり気の毒で、やめればいいじゃんとは言えない。ならば、延期でどうだろうか?IOCも助け船を出してくれているのだから。もうちょっと言うと、欧米での感染の流行はこれからだ。仮に日本で収束しても、世界中から人が集まれば、やはり東京が主たる感染ルートということになってしまう。それを避けるためにも、来年でいいのではないだろうか。

サンダース氏の弱点

2020年のアメリカ大統領選挙がいよいよ本格化しようとしている。
民主党指名争いでは、私はバーニー・サンダース氏が勝利する可能性が非常に高いと思っているし、実際にこれまでの流れを見ても、このままサンダース氏で決まってしまいそうな勢いだ。バイデン氏はどうしてもやや古い政治家の印象があり、多くのアメリカ人がマケインとバイデンとペンスを写真を見せられて、さて誰がバイデンでしょうと言われると間違えそうな気がしてしまう。バイデン氏は個性という点で非常に劣勢だ。ブルームバーグ氏は金持ち過ぎるのが逆効果な面がある上に、スキャンダルまで持ち上がり、しかも個性という点でとてもサンダース氏ほどおもしろくない。サンダース氏のおもしろいところは、78歳という高齢にして挑戦者という極めてアグレッシブなポジションに立っており、民主党のエスタブリッシュメントとも距離を置いている生き方にダンディズムを感じさせるところだ。

だが、彼にもやや弱点らしいところが見えてきた。彼が人気の大きな理由の一つは、彼が社会主義的な政策で社会的弱者を救おうとしているところにあるが、また同時にそれが弱点にもなっているのである。社会主義者であるがゆえに、過去にソビエト連邦とどのような関りがあったのかは陰に陽に人々が知りたがっているところで、仮にも冷戦中、事実上の敵国同士て火花を散らしたソビエト連邦と内通していたというような印象を与えるエピソードがあれば、それはライバルたちから見て、格好の攻撃ポイントになることは必至だ。前回ヒラリーが自分のメールを自分のサーバーで開いたというだけで、あれだけ大事になり、ヒラリーだけは絶対に嫌という層が形成されていったことを思えば、仮にそれが過去のことであったとしても爆弾になり得る。今は証拠がないので疑惑や悪い想像のような範囲のものだが、証拠が出てくれば何もかもめちゃくちゃになってしまうだろう。ましてやプーチンからの支援を受けているのではないかとも勘繰られているのだから、やはり証拠が出れば即アウトになる。もちろん、本人はそのようなことを認めていないし、今後も否定し続けるだろう。もっとも、ビル・クリントンがホワイトハウスの執務室で研修生と浮気したことについては、彼はテレビカメラの前で涙を浮かべて国民に謝罪し、そこまで反省しているのなら、ま、いいんじゃない。といった程度のゆるしを得たことがあるから、証拠が出てきたとしても、あのバーニー・サンダースが涙を流して国民に許しを乞うたということになれば、形成の再逆転の芽はある。

弱点はそれだけではない。今のサンダース氏の立場で社会主義という言葉を振りかざしても、人々はまだそれがどれだけ体勢に影響するのかよく分からないので様子見みたいなところがあるが、サンダース氏勝利が現実味を増してくると、そもそものアメリカの国是である自由と民主主義が社会主義と許容できるかという原則論にぶつかってしまう。ライバルはここを突いてくるだろう。共和党であれば民主党であれ、アメリカの憲法の理念を受け入れるという範囲の中での政権争いなのだから、そこから逸脱している可能性の高いサンダース氏にはやがてそれに関わる厳しい論難があると覚悟した方がいい。もっとも、アメリカの憲法が本当に社会主義を許容しないかどうかについて本気で考えたことのある人は少ないだろうから、サンダース氏が堂々と社会主義こそアメリカニズムだとするような逆転の発想的演説をして、国民がそれを受け入れるならば、サンダース氏にはまだ可能性が残されることになるだろう。

もっとも難しいのは、本当にサンダース氏が当選した場合である。有権者は今の段階で、サンダース氏がサン・シモンの空想的社会主義みたいな国を建設してくれるというある種の幻想に浸っている人が多いように思える。しかしアメリカはそのような建付けにはなっていないため、サンダース氏の社会主的政策がことごとく実現しないことは目に見えている。オバマケアのような社会主義の入り口みたいな政策であれだけ揉める国なのだ、より本質的な社会主義を目指すサンダース氏が軋轢を引き起こすことは必至だし、仮にサンダース氏が妥協的になったとすれば有権者の幻滅も必至だ。サンダース氏は早晩、進退に窮することになるだろう。

そういうわけでサンダース氏を手ぐすね引いて待っているのがトランプ氏だ。トランプ氏はおそらく民主党で勝ちあがってくるのはサンダース氏だと見ているはずだ。そして、私が上述したような諸事情はとうに承知の上でサンダース攻略の知恵を練っているに違いないし、不都合な証拠だって手を広げて探しているところかも知れない。トランプ氏としては誰が民主党で勝ち上がってきたとしても勝てると踏んでいると思うが、サンダース氏をつぶすことについてはより入念であるはずだ。サンダースとトランプという稀有な大統領選挙本選を、私は結構楽しみに待っているし、サンダース氏が勝てば、それはそれで面白く、お手並み拝見したいところだ。




【アメリカ大統領選挙】3月3日のスーパーチューズデーでは、サンダース氏が圧勝する

共和党はトランプ氏でいくとして、トランプ氏をなんとか倒したい民主党の候補者選びのための予備選挙が熱い。だが、本当は熱くない。既に結果は大体見えている。サンダース氏が今後もあらゆる予備選挙で他候補を圧倒し、民主党の大統領選挙候補者としての地位を獲得するのはほぼ間違いないと私は見ている。以下にその理由を述べる。

まず第一に、圧倒的な知名度である。サンダース氏に匹敵する地名を有する候補者はいない。バイデン氏は確かに有名だが、インパクトが少なく、ぱっと見凡人であるため、現状ではややもすると忘れられてしまいがちだ。ブルームバーグ氏の場合、確かに知名度はあるが、それはブルームバーグニュースを見るインテリ層に限られている。特に民主党員の場合、社会的な弱者が集まって人にやさしい政治を求めるという傾向が強いため、インテリだけに知られているブルームバーグ氏はさほど強力な対抗馬とはなり得ないと私は見ている。しかも、こう言ってはなんだが、ニュース配信サービスに自分の名前をつけるというのは、ちょっとこの人物の性格に疑問を持ってしまう。たとえば正力松太郎氏が日本テレビを作った時に、正力テレビにしていたらどうだろうか?フジテレビが鹿内テレビとか、ライブドアが堀江インターネットサービスとかであれば、みんなドン引きである。そういうわけで、私はややブルームバーグ氏そのものにちょっと懐疑的な面があるのだが、それをおいておくとしても、圧倒的な大金持ちで、お金にまかせた緊急選挙活動が本当に有権者の心に届くかは、どうしても疑問に思えてならないのだ。

第二に、サンダース氏に対する民主党有権者の厚い信頼感を無視することはできないだろう。社会主義はアメリカの国情とは違うものだ。だが、社会的弱者の人たちは、社会主義的なメッセージをサンダース氏が発することに強い共感を示しているように私には見える。サンダース氏が社会主義的なメッセージを発することによって、世の中は、弱い人たちがいるということを思い出し、話題にし、気にかけてくれる。経済的に恵まれない人であっても、暖かいベッドとスープを得る権利があるのだということに気づかせてくれるのだ。そのような人たちのサンダース氏への信頼は厚い。ブルームバーグ氏が巨大な資金力で選挙活動をやればやるほど、そういった人々はしらけてしまい、サンダース氏へのより強い支持を誓うことになるだろうから、ブルームバーグ氏に勝ち目があるとはとても思えない。場合によっては、ブルームバーグ氏は選挙戦の途中で撤退するのではないだろうか。弱い人の味方であるサンダース氏というイメージは多くの人々を魅了しており、このようなことはリンカーン以来くらいの感じではないだろうか。ヒラリーは人気のある候補だったが、大金持ちで多分実はいやな感じの人に違いないと多くの人が感じていたし、ケネディも人気はあったが、大金持ちのおぼっちゃまで、やや距離のある人だった。サンダース氏にはそのような嫌味がない。

第三に、サンダース氏への注目度が圧倒的である。私はこの記事を書く前に、サンダース氏が風邪を引けばニュースになって、ブルームバーグ氏が風邪をひいてもニュースにならないだろうというようなことを考えていた。ところが、先ほどBBCのニュースで、サンダース氏の演説中に小鳥がやってきて近くにとまったという話題をしていた。小鳥が来ただけでニュースになるのである。サンダース氏を支持するかしないかは別にして、彼の動静についてはみんな知りたがっていると言うことの証左であるように私には思えた。

前回、トランプ氏が勝利したのは考えてみれば妥当なことで、トランプが好きな人も嫌いな人もトランプ氏のことを話題にしていた。誰もヒラリーのことをそこまで話題にしなかった。選挙は話題になった方が勝つし、サンダース氏は今、ノリに乗っていて、誰もが話題にしたくなるキャラクターになっている。ネバダでも圧勝したサンダース氏は、この勢いで最後まで走り切りそうに思える。

もちろん、長い選挙戦には何があるか分からない。実はサンダース氏がアンドリュー王子と同じ趣味を持っていたなどのことがあれば、一機に風向きは変わるだろう。だが、サンダース氏ほどスキャンダルがなさそうな候補者はそうはいない。やっぱりこのまま行くのではないだろうか。




新型コロナウイルスがどうやらアメリカで流行しているらしい件

アメリカで多くの死者を出しているインフルエンザだが、最近まで新型コロナウイルスとアメリカのインフルエンザが別のものと考えられていたのに対し、実はインフルエンザみたいな症状はあるけれど、インフルエンザではないケースが時々あるとの発表がCDCからなされた。CDCというのは、アメリカの保健衛生管理局みたいな感じのところで、保健衛生のFBIみたいに思っておけば多分大丈夫な役所だ。

で、アメリカではコロナウイルスの感染爆発が始まろうとしているように見える日本へは渡航しない方がいいみたいな話も流れていたし、最近の英語圏のニュース番組でも、東アジアで蔓延している変な病気、大丈夫?対岸の火事なんだけど、うちに飛び火しないように注意しよう。というようなトーンのニュースが多かった。

ところがだ、アメリカのインフルエンザの患者の何パーセントかが新型コロナウイルスだとしたら、とてつもない数の感染者が存在することになり、致死率が高いわりには感染しやすい新型コロナウイルスは、とっくにアメリカで猛威をふるっていたということになる。アメリカではこれからインフルエンザの患者に対して、もしかしたらコロナウイルスかもという態度で検査なり再検査なりを進めていくらしいのだが、そんなことをしているうちにどんどん広がるかも知れず、現状で既に収拾不可能なくらいなことになっているかも知れない。私はアメリカをディスりたくないが、ダイアモンドプリンセスでの日本の対応がお粗末すぎると英語圏から冷笑的な視線を向けられたことを思うと、いえいえ、日本を笑ってる場合じゃないじゃないですか。とつい、言いたくなる。

アメリカでは近いうちに新型コロナウイルスが大流行する可能性があるとの発表もあり、皆さま、心して準備してくださいね。みたいな話になってきている。既にコロナウイルスは広がっているのだが、これから広がるということにして、当局の発見が遅れたことのミスを隠蔽しようとしているのではなかろうか…などと勝手な想像も働いてしまった。

ダイアモンドプリンセスに乗っていたアメリカ人の中から複数の感染者が発見されていることには英語圏のメディアの注目も集まっており、どうも、このままいくと、日本がダイアモンドプリンセスのことで頭の悪い対応していたからアメリカ人が感染して、アメリカに感染が広がったじゃないか。日本のせいだ。という言説が形成されていくのが目に浮かぶようだ。

ヨーロッパでも既に感染者が見つかっているし、油断していただろうから、あちらでも燎原の火のようなことにもなりかねない。ロンドンの市長選挙では候補者が、今年の東京オリンピックは無理だから、ロンドンが代替地になりましょうと呼び掛けているそうだが、ロンドンもどうなることやら…である。

このまま世界的パンデミックになってしまったら、世界は12モンキーズというブルース・ウイリスが出ていた映画みたいなことになってしまうのだろうか。それは困るので、なんとか収束してもらいたいものではある。不要不急の外出は控え、注意はしているのだが、いつまでこの緊張状態と戦うのかと思うと、心が折れそうになる。地球にがんばってもらいたい。新型肺炎は一度治ってもまた罹患する可能性があることが指摘されており、それって治ったんじゃなくて単に症状がおさまっただけなんじゃ…とも思えて、得体の知れない不気味さ満点ではあるのだが、がんばれ人類。生き延びよう。きっと生き延びることはできるはず。

ダウンタウンのエキセントリック少年ボーイの歌でも歌おう。

がんばれ地球。がんばれ地球。僕は限界だ♪

って、限界だったらダメじゃん。希望はあると信じて生き延びましょう!






安倍政権をそろそろ採点してみる【2020】

稀に見る長期政権の安倍政権ではあるのだが、ほんのわずかかもしれないものの、やや、陰りが見え始めている。政権は一度沈み始めれば速く、人々は泥船から飛び降りることになる。果たして安倍政権は今、政権末期なのだろうか?また、世の中や社会のために終わるべき政権なのだろうか、続くべきだろうかというような感じのことを考えてみたいと思う。キーワードは経済、新型肺炎、憲法改正あたりだろうか。

まずは経済だが、これはもはや三角というかバツに近い。アベノミクスで日本には確かに復活の兆しが見えるかのように思えた。野田政権の時代に7000円くらいだった株価が24000円くらいまで回復したのだから、これは正しく評価されなければならない。しかし、アベノミクスによって成し遂げられたのは、多分、これだけだ。「積極的な財政出動」はどういうわけか躊躇しつつの財政出動に変わっており、財政均衡主義にとらわれている。アベノミクスの3本の矢の一つである、財政出動は打ち上げ花火で終わってしまった。もう一本の産業育成はどうだろうか。何か新しい産業は育成されたのだろうか?アメリカのGAFAみたいな企業は別に登場していない。ソフトバンクは今自社株買いオペレーションで株価を持ち直しているが、全体として大変なことになっている。自社株買いオペで株価維持というのは、なかなか厳しい状態にあることを逆に示しているとすら言える。農業がその目玉というが、農業で世界競争に勝てる分野はそこでがんばって研究し、働いてきた農家の方々がえらいのであって、この分野は安倍政権が始まる前から強いし、政権に旗振りをしてもらう必要はない。旗を振るだけで何もしないのであれば、そんな政治は不要である。大胆な金融政策も申し訳ないが、あれ、そういえばそんなこと言ってましたよね。な感じである。3本の矢は、有機的なつながりを保ちながら他の政策とも融和しつつ成果を期待するものなので、それぞれが独立して行われるべきものではない。だが、長い安倍時代、3本の矢はそれぞれ気まぐれに放たれ、あんまり遠くまで飛ばず、最近は矢玉も尽きた感が強い。消費増税を2回もやっていて、3本の矢は増税の結果、その効果は吹っ飛んでしまったと言ってもいいだろう。国民生活は更に水準が下がった。このような政権が本当に必要なのか、私には疑問である。

私は安倍政権を頭からディスるつもりはないので、経済に関してはバツではあるものの、新型肺炎については△くらいにしておきたい。新型肺炎の水際せき止め作戦は失敗したが、だからと言って、それを安倍首相の責任に帰するのは、ややかわいそうではないかと思える。新型肺炎なのだ。飛沫感染する死ぬかも知れない伝染病なんて、一体、前回流行したのはいつなんだ?と思うくらい、記憶にない。それこそ1000年ぐらい前の京都みたいな話になるのではないだろうか。森鴎外はドイツでコッホという医者に学び、伝染病の権威になって帰ってきたが、はっきり言って大事なところで能力を発揮したとは言い難い。日清戦争とそれに続く台湾鎮定戦では兵隊たちが栄養失調でばたばた死んでいったが、森鴎外は伝染病だと言って譲らず、要するに誤診して兵隊の犠牲を増やした。飛沫感染で大事になることなんて、近代日本では滅多になかったのだ。731部隊はそういったことを研究していたらしいが、なにかを完成させる前に日本は戦争に敗けたような印象だ。それ以後の伝染病となると、もはやhivくらいしか思いつかず、hivの感染経路は飛沫ではないので、新型肺炎の上陸と広がりは近代日本の初めての経験なのだ。どうすればよかったという正解はなく、確かに初動で鈍かったようには思うが、それだけでバツ印を与えるのは気の毒だ。とはいえ、新型肺炎予防のために不要不急の外出を控え、マスクも買えないという不便もあるので、困っていることは確かではあるのだが。

さて、安倍首相は充分に首相生活を満喫したはずだし、政治家としてこれで満足じゃないのですかとも思えるのだが、それでも彼はオリンピックと憲法改正をなんとか実現したいらしい。オリンピックも新型肺炎で危ぶむ声が上がっており、ロンドンからは東京でできないのならロンドンで、という動きもあるようだ。オリンピックが中止になる予言はいろいろ出回っていたが、まさかここまでリアリティのある話になるとは考えもしていなかった。だが、安倍首相がやりたいのはオリンピックだけではない。憲法改正については今もかなり本気であり、可能性を追求する動きに変化はなさそうだ。安倍氏は実務は菅氏に支えられていて、内閣を麻生氏に支えられていて、党内のことは二階氏に支えられている。この3人の担ぐ神輿が安倍政権であるともいえるのだが、一蓮托生を自他ともに任じる菅氏はともかく、麻生氏と二階氏が安倍氏を支え続けるのかどうかは注目点の一つだったと言える。で、最近は二階氏が安倍氏四選を容認するっぽい発言をしていて、麻生氏も安倍氏が憲法改正したければ、四選めざさねばならないとする発言をして、要するに四選に発破をかけている。二階・麻生が四選支持ということになれば、安倍氏四選はそれなりにリアリティを持っていると言うことだ。自民党の規約を変えなければいけないはずだが、もう、どうにかしてやるつもりなのだろう。中曽根だって選挙で勝って任期を延長を勝ち取ったのだし、シャア少佐だって戦場で手柄を立てて出世したのだ。次の選挙で自民圧勝すれば、安倍四選がないわけではない。安倍氏が四選すれば、憲法改正に取り掛かるのかも知れないが、景気をなんとかしろよと私は思う。私は憲法9条を死守せよとか別に思わないが、絶対に変えなければならないとも思わない。日本人は憲法解釈と運用によって事実上改憲をしている。それは賢者の知恵みたいなものだから、それでいいじゃない、と思うのだ。それに憲法改正をしている場合ではない。経済だ。経済。

次の衆議院選挙で自民圧勝は多分ない。経済は消費増税により崩壊過程に入っているようにすら思える昨今であり、新型肺炎も収束の兆しは見えない。オリンピックももしかたらやれないということになれば、自民圧勝なんてあるわけないじゃん。としか言えないだろう。経済を良くする首相は果たしてどこにいるのか…。



満鉄調査部事件とゾルゲ

一般に、ゾルゲ事件はよく知られている。同盟国ドイツからやってきた大の親日家として名が通り、日本の名士たちの間でも信頼を勝ち得ていたゾルゲが、実はソビエト共産党のスパイだったということが分かり、逮捕され、死刑の判決を受け、執行された一連の事件だ。

この事件と並行するようにして満州国で関東軍の憲兵隊が捜査を進めた同様の事件に、満鉄調査部事件というものがある。ゾルゲ事件と満鉄調査部事件は尾崎秀実という人物を通じてつながっている。戦争が終わるときに、ソ連軍が満州国の憲兵隊の資料を押収し、そこにゾルゲ事件関連の記述を見つけたと言うことからも、ゾルゲ事件は日本と満州をつないでいたことは分かるだろう。

で、今回の主題は満鉄調査部事件の方がメインだ。満鉄調査部はもともと、後藤新平が、台湾で調査組織を作ったことの経験から、満州でも同じことをしようと思って始めたのがきっかけで生まれたものだ。後藤新平は児玉源太郎に説得され、台湾の民政局長から満州鉄道総裁に栄転し、満鉄調査部を作ったというわけだ。長い歴史があるため、組織の人物や主な仕事などは紆余曲折があり、私もまだいろいろと手を付けることができていない部分もあるのだが、満鉄という国策会社のシンクタンクとして機能し、関東軍とも連携しつつ、関東軍とは張り合ってもいた。意外だが、満鉄は関東軍よりも権威ある組織として認められていて、必ずしも関東軍の言いなりになっていたわけではないらしい。傍若無人で知られた関東軍からすれば、満鉄はなんとなく嫌な連中の集まりに見えたかも知れない。というのも、満鉄の方が歴史が長いのだ。満鉄は日露戦争が終わってすぐに設立されたが、関東軍の設立は第一次世界大戦が終わるまで待たなくてはならない。その差が、権威の差として敗戦まで残った。一方、権力は言うまでもなく関東軍の方が強かった。そのねじれた感じもある種のひずみを生んだのかも知れない。

関東軍憲兵隊は、満鉄調査部の中に共産主義者が紛れ込んでいるのではないかとの疑いを抱き、内々に捜査を進め、満鉄調査部の職員たちを二度にわたり大量逮捕するに及んだ。取り調べが行われ、裁判にもかけられたが、獄中死を迎えた人たち以外は執行猶予がついた。全員に執行猶予がついたということは、関東軍が充分な証拠固めをできていなかったことをなんとなく匂わせるもので、今でも関東軍による満鉄憎しの感情が先走った自作自演的事件ではなかったかとの疑いは晴れない。

とはいえ、満鉄の嘱託として日本で働いていた尾崎秀実は、本当に共産主義者で、しかもスパイだった。思想弾圧や政治弾圧はあってはならない。共産主義者だというだけであれば、政治犯であり、現代の日本には政治犯は存在しないため、尾崎がそのことで死刑になったとすれば、事態が重大すぎ、そのようなことも時にはあるさ、などと気楽なことを言うことはできない。尾崎は更にゾルゲのスパイ組織に参加していた。満鉄調査部への捜査が進むうちに尾崎の名が上がったのであろうとの推測は成り立つが、その点についてトレースできている研究を見たことがないし、書類があまり残っていないので、不可能なのかも知れない。なので、多くの想像や類推、憶測を呼んだし、今後もそうだろう。私の今回のブログ記事もその手の文章の一つということになる。スパイだからといって死刑も考え物である。現地の戦場でスパイがいたら、すぐに仲間の生死にかかわるため、これは重大問題になると思うが、ゾルゲ・尾崎のスパイ組織は、長い目で見て日本帝国に影響力を発揮し、ソ連と戦争しないように仕向けようとする地下政治団体の性格も強いため、やはり死刑は重すぎるのではないかとも思える。ゾルゲ・尾崎の話題はどうしても暗くなる。

ゾルゲ事件という重苦しい副産物を伴ってはいるが、満鉄調査部事件そのものは、どうってことはなかった。実態のない事件だった。獄中死した人は本当に気の毒だし、獄中死の責任は関東軍にあると思う。責任者はどうしたのだろうか。シベリアに抑留されたのだろうか。因果は巡るのかも知れない。

起承転結の少ない内容で申し訳ないのだが、備忘のめに付け加えることにした。