遠藤周作さんを推します。今も慶応大学では毎年周作忌を開催し、遠藤さんを知る人たちが思い出を語り、新しく発見された原稿について議論したりするなどしており、故人が愛されていたことが良く分かるのですが、遠藤さんがかくも今も議論の対象になる理由としては、作品が東洋と西洋の対立という文明論やキリスト教の受容という宗教論の外観を有しているにもかかわらず、よく読んでみると幼少期の思い出などのごくごく個人的な、文明論とかは全く関係のない私小説としても読み解くことができるという多層性にあると私は思います。そのため、誰が読んでも何かを感じ取れる普遍性を持つことができ、且つ、どうとでも解釈できる部分が多いため延々と議論できるという便利さもあると言えますから、将来的にも議論される、即ち、読まれる作家であると私は感じます。