太宰治‐青森

太宰治は弘前中学へ進学したことをきっかけに、親戚の家に寄宿する。寄宿先は豊田家というその土地の名士で、遠い親戚だったらしい。太宰はその豊田家の家長を「お父さ」と呼び慕っていたことの思い出が、この『青森』という短いエッセイで述べられている。言葉をあまり選んでいるという印象は受けず、素直に心に浮かんできた言葉をそのまま書きつけているように感じられる。それだけ素直な愛情関係がったのだろう。棟方志功の初期の仕事に触れられている部分があるが、太宰は彼の仕事を非常に高く評価していることが分かるのと同時に、棟方が出世した後の雰囲気についてはやや違和感を感じているらしいことが分かる。そのようなちょっとした心の機微のことについては、もし目で追って読んでいるだけなら読み飛ばしてしまいそうなものなのだが、朗読していると一字一字をきちんと読もうと努力するので、より文章への理解が深まり、些細な機微にも近づけるように思える。既に20本以上朗読音源を上げているが、だんだん朗読もうまくなってきたし、エッセイに込められた些細な筆のトーンの違いから、より敏感に書き手の心の動きを察せられるようになってきたと思う。まだしばらくは【朗読】という新しい試み、個人的にはふと思い立って気づいたフロンティアを前進していきたい。




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