香港理工大学に学生たちが立てこもり、それを警察部隊が包囲殲滅したことは記憶に新しい。細部が分からないため、安易な独断は避けたいが、一部報道では実弾が使用されていたとも言われているし、逮捕された学生たちがその後どうなっているのか定かではないということも気がかりでならない。香港理工大学の学生たちからの情報発信が極端に少なく、オンラインで探しても彼らの直接のメッセージが見つからないので、不可解ではあるが情報が限定的になってしまい、もどかしい思いをした。一部では相当数の命が失われたのではないかとの不安をかきたてる内容のものがインターネットで出回ってはいるが、一方で辛くも脱出した学生たちの姿もあったようなので、助かった人がいるということは大変にいいことなのだが、全体像が見えないのでもどかしい。最後まで残った少数の学生たちが降伏する様子はyoutubeでみることができた。一時は千人にも上る学生たちが立てこもっていたにもかかわらず、降伏した学生の数が極端に少ないように見えたが、そこもはっきりとしたことは分からないのである。
香港理工大学が「戦場」になり、事実上の包囲戦が行われたことは世界中に知れ渡り、多くの人が不安や恐怖を感じたはずである。そのような中、アメリカではマルコルビオと確かもう一人の協力者の二人の上院議員が提出した香港人権法が通過した。香港の一国二制度を揺るがせにした場合は相応しいペナルティを与えるとする内容のもので、中国側は激しく反発しているらしい。アメリカの中華圏へのコミットメントを考えてみた場合、台湾に対しては長年、台湾関連法によって武力行使を名言する形で厚い支持を与えていたと言えるが、香港の場合は中英が同意した一国二制度があるため、やや距離をとった傍観のようなところがあり、台湾に対する態度と香港に対する態度には温度差があった。また、香港人権法も、ペナルティを与える程度のことであって、武力行使などは全く選択肢に入っておらず、コミットメントの意思・度合い、ともに台湾に対するそれと比べればやはりやや低いと言えるだろう。ただ、私がオンラインでマルコルビオの演説の動画を見たところ、中国語の熱い感謝のコメントが多くみられ、香港のことで心を痛めている多くの人が、マルコルビオたちの今回の行動に支えられているということが分かったような気がする。
香港の一連の騒動は、双方関ヶ原のつもりで臨んでいることは間違いないのだが、互いに出口戦略らしきものが見当たらず、予断を許さない。このまま旧正月までもつれ込めば、北京政府が最終的な問題解決を選ぶことも決して非現実的な想像ではない(慎重に言葉を選んだつもりです。ご了解いただきたい)。一方、香港経済は明らかな落ち込みを見せており、1パーセントあまりのマイナス成長と言われているが、実際にはそのようなものではすまないだろう。主たる産業である観光は壊滅状態で、回復するのに10年20年かかるだろう。というか、回復しないかもしれない。金融はシンガポールへ脱出しているらしい。一般消費は当然目も当てられないことになっていると推量できる。今後彼らはどうするのだろうか…と心配になるし、同情を禁じ得ない。香港ほどおもしろい土地はそうは存在しないと私は思っている。とても素敵で美しく、食事がおいしい素晴らしい都市なのだ。東洋の真珠は守られなければならない。