ふと気づいたので、備忘のためにここに書いて残しておきたいと思います。
『うる星やつら』の第一回劇場公開映画【オンリーユー】は、作品全体がルパン三世の【カリオストロの城】へのオマージュになっているのではないか、オンリーユーとカリオストロはアダプテーションの関係にあるのではないかということに最近気づいたのです。
『うる星やつらオンリーユー』の冒頭の方で、面堂終太郎の屋敷にあたるとエルなる女性の結婚式の招待状が届く場面がありますが、この際、招待状を持ってきた人物に対し、終太郎が「読め」と命じ、「しかし…」とたじろいだところで終太郎が「構わん」と続けます。
何回もみたことがある人ならすぐに気づくと思いますが、これはカリオストロの城でルパン襲撃に失敗した後のジョドーの背中に貼られていたメッセージカードを読む場面の台詞と全く同じです。伯爵が「読め」と言い、ジョドー「しかし…」とたじろいで、伯爵が「構わん」と続くわけで、作り手は完全に意識して、分かる人はばっちり分かるように、この作品はカリオストロのオマージュだと最初の方で宣言しているのだと言うことができます。
全体の構図としても、男と女の立場が入れ替わっただけで、一人の男性または女性を奪い合う女たちまたは男たちが存在する構造になっています。
以下に簡単に表みたいにしてみます。
あたる⇔クラリス
ラム⇔ルパン三世
エル⇔カリオストロ伯爵
オンリーユーでは誠実で情熱的なラムが、権力で欲望を達成しようとするエルという女性とあたるという一人の男を取り合います。一方で、カリオストロでは、誠実で優しいルパンが、権力で欲望を達成しようとするカリオストロ伯爵とクラリスという一人の女性を取り合うわけで、冒頭の「読め」「構わん」のやり取りも含めると、意識して作り手が相似関係に持ち込んでいるとしか考えられないわけです。シェイクスピアのリア王と黒澤明の乱の関係みたいなものです。
結婚式の場面でも、元ネタであるカリオストロではクラリスが薬物でしゃべれない状態になっており、沈黙をもって結婚に同意するというスタイルに伯爵が持ち込もうとしますが、オンリーユーでは聖職者があたるに対し「以下略」という台詞によってあたるを沈黙させ、結婚の成立に持ち込もうとしています。いよいよ婚姻関係が成立するという直前に、カリオストロではルパンが、オンリーユーではラムが登場するわけです。やや違うのは、オンリーユーではダスティンホフマンの『卒業』をパクっているというところだと言えるでしょう。
このように考えると、伯爵に仕えるジョドーに対してエルにつかえるおばば様がいるし、ルパンの親友の次元に対応しているのは弁天ということになります。峰不二子と対応する人物は存在しませんが、カリオストロでも峰不二子は物語の構造上、存在する必然性は低く、うる星やつらでは尚のこと、対応する人物みたいなものは不要です。敢えて言えば牛丼の大将ですが、牛丼の大将も存在の必然性は低いです。