共和党の選挙参謀として知られるロジャー・ストーン氏がFBIにされた。私は日本人なので、いちいちアメリカの政局に付き合うつもりは特にないのだが、以前、historiajaponicaでロジャー・ストーン氏について書いたことがあって、突然そのページにアクセスが増えたので、一応、何が起きてるのか検索をかけてみたら、ロジャー・ストーンが偽証の罪で逮捕されていたのである。議会でロシアゲートについて追及された際、実際には多くの情報を得ていたのに、私は何も知らないとしらを切りとおしたことが今回の逮捕につながったらしい。アメリカの法務省のHPの声明文にもざっくりと目を通したが、他の証人に偽証するように説得した罪もあると書かれてあるので、日本風に言えば口裏合わせをしていたことになるし、本当だったら共謀の罪みたいなことにもなりかねない話になっている。
さて、ロジャー・ストーンは入り口に過ぎない。もちろん、かなり大きな入り口で、FBIの本丸はロシアゲートで現職の大統領をどこまで追求できるかということになっているはずだ。
ざっくりとFBIが現在描いている絵を私になりに推測してみたい。以下、念を押すが推測である。2016年の大統領選挙の年、ロシアの公的な機関が複数回、アメリカの民主党及びその関係者にハッキングをかけ、情報をwikileaksのジュリアン・アサンジに渡した。ロジャー・ストーンはそのことを知っていて、ドナルド・トランプにも話していた。また場合によってはロジャー・ストーンをハブにしてトランプとアサンジ、更にプーチンがつながっていた可能性もある。大統領には不逮捕特権があったはずだが、議会の弾劾には充分になる話である。ロジャー・ストーンが政治の世界に関わりを持ったのはリチャード・ニクソンが最初だったように思うが、二人の大統領を失脚させたロジャー・ストーンもただ者ではないよねえ…などとやや斜めな感想も持ってしまった。FBIの描いている絵の通りに物事が進んだら、トランプ氏は弾劾されて大統領の座を追われるか、ニクソンの時のように弾劾される前に自分から辞めるかのどちらかだ。まあ、多分、自分から辞めることになるのだろうけれど、史上二人目らしい。繰り返しになるが、その両方に関わっていたロジャー・ストーンは半端ない。
FBIも相当な自信を持って逮捕に踏み切ったのだろうし、CNNの動画を見たが、早朝の寝込みに彼の自宅を包囲していて、実にものものしかった。その映像をCNNに流すというのもなかなかの悪意があるが、FBIとしてはコミー長官の首を獲られた恨みもあって、相当な覚悟で臨んでいることだろう。トランプ大統領が登場したことで世界は変わるのではないかとも見られたが、結局は予算も通せずにメキシコとの壁ができる前に去る公算が高くなってきたとフェルミ推定したくなる雰囲気だ。米中貿易摩擦にも微妙な変化を与えるだろうし、大統領が変わればTPPの復帰の話も湧いて出るかも知れない。或いはペンスさんが大統領になるので、ハドソン研究所での演説通りにことを進めるのなら、米中関係はますます白熱するかも知れない。分からない。
以下は推測ではなく、私が想像力を逞しくして考えたことなのだが、シリアから手を引いたことでイスラエルに不安を与え、マティスにも見放されたりしたことで、トランプを守る人たちがいなくなったのかもしれない。クシュナーはかえって辛かったろうにとやや同情すらしたくなる。日本の首相はころころ変わるが大統領は最低でも四年やるし、多くの場合は八年やる。だがトランプ氏はあっという間にその時代が終わろうとしているようだ。ネットでいろいろ見た限りでは、トランプ大統領が嫌いなメディアの人々のややはしゃいでいる感じが印象深い。時代は更に次へと変わっていくことになりそうだ。やはりおもしろいだけのおじさんを大統領に選んだことのつけは大きかった(のかも)。
補足になるが、スノーデンがロシアで多分悠々自適に生きてるのと、アサンジがロンドンのエクアドル大使館で引きこもって生きていることの運命の違いも感じてしまう。ただ、話がここまで煮詰まってきた以上、アサンジ氏をやはり議会に呼ばなくてはいけないので、エクアドル大使館への包囲網は更に強まることになるかも知れない。