昭和史47‐興亜展覧会

昭和14年8月1日付のとある情報機関の発行していた記事によると、台湾の高雄で『興亜展覧会』なるものが行われたようです。

同展覧会では、数千の陳列品を訪問者に見せることができ、その目玉は靖国神社の御分社のお部屋が設けられていて、そこにお賽銭を入れることができるようになっていたもののようです。お賽銭は靖国神社の本社に奉納されたとされています。

その他、戦死した人の遺品、手紙、戦場で使用された兵器などが展示されていたようです。戦死した人の遺品に対しては敬意を持つ、または哀悼の気持ちを持ってしかるべしと思いますが、戦場で使用された兵器に限って言えば、当時もミリオタの人はいたでしょうから、ミリオタにとっては垂涎ものの企画展だったかも知れません。

この展示会では感動する人が多く、記事の文章を引用すると「日本精神高揚頗る有益なるものあり」だったそうで、当時、帝国が急いでいた皇民化の一側面、または一場面であったことが分かります。来場者は延べ35万人ということで、なかなかの集客力を誇ったと言えるのではないかと思います。来場者に対しては、実際の爆弾の投下、実弾射撃、水上爆破、地上掃射を実演したほか、「皇軍傷病兵慰問相撲大会」なるものも行われるという充実ぶりで、軍なりにサービス精神を発揮していたようです。

昭和14年8月1日の時期、表面的には打倒蒋介石ということになってますが、軍内部では既に東南アジアの占領(=英米と本気で戦争)を具体的な射程に入れていたことは間違いないと考えていますので、そういう点からも台湾人の戦争協力、台湾の南進のための拠点化ということを強く意識していたことの現れではないかとも思えます。私個人は正義の戦争などというものは存在し得ないと考えていますが、当時は「聖戦」ということが踊り、その後の歴史を知る現代人の我々としては、あれまぁ…そんなことまでやって…という印象になってしまいます。
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