私が追いかけている情報機関の機関紙の昭和14年7月21日付の号では、東亜ブロック経済の建設の必要性が主張されています。簡単に内容を説明すると、イギリスは大英帝国でブロック経済をやっている。フランスもまたしかり、ソヴィエト連邦もまたしかりである。これら欧米列強は既に自分たちが多くの植民地を得てブロック経済をうまく回しくいうことができるのに対し、日本はそうではないから、台湾を拠点に、現在占領しつつある、海南島、広東地方、南洋諸島とも連携してブロック化していくべきだという内容になっています。実は日本は常に物資不足、戦費不足に悩んでいましたから、満州でもどこでもアメリカ資本を呼び込んでマージンをとるような商売をした方が早いと私は思うのですが、時代が時代というか、自分たちの植民地を持たなければ安心できない。さあ、みなさん、日本帝国ブロック経済のために邁進しましょうというわけです。当該の文章では、蒋介石が中国を半分植民地みたいにして列強にうまみをもたせる、要するに「売国」することで欧米からの援助を得て日本の進撃を阻んでいるのでますます許せんというわけです。
ブロック経済は要するにその地域内だけで自給自足し、盟主(イギリス、フランス、または日本)が儲かる仕組みを作るというわけですが、当該の号で一つ関連記事と思えるものがあったので、それも紹介したいと思います。台湾在住華僑たちによって排英運動が起きているというのです。
同年7月18日に排英運動の華僑大会が開かれたとされています。要するに、上に述べたようなブロック経済の推進を台湾在住華僑も賛成していて協力的だぞと言っているわけですね。同大会では東亜秩序を見だし、搾取を続けるイギリスは許せんとする宣言を採択し、英大使に対する勧告電として「事変以来、英国ノ援蒋政策ハ東亜ヲ乱スモノニシテ、恨骨髄二徹スルモノアリ 時既二至レリ、速カニ援蒋政策ヲ放棄シ正義日本ト協力セヨ、サモナクバ東亜ヨリ撤退スベシ」という文章も掲載されています。台湾在住華僑の人たちの心境は非常に複雑なものがあったでしょうから、この声明文のどこまで本音なのか、見抜くことはなかなかに難しい作業です。中華系の人にも対日協力者がいたことは間違いのないことと思いますから、あるいはそういう人が熱心に進めたのかも知れませんし、あるいは日本帝国域内で暮らす華僑にとってはとにかく身の安全というものを図らなくてはならないという不安もあったでしょうから、その不安を解消するためだったのかも知れません。そのあたりは、もはや神のみぞ知るところかも知れません。
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