昭和史38‐グアム基地建設とアメリカのモンロー主義

とある情報機関の発行していた機関紙の昭和14年2月21日付の号でアメリカがグアム防御基地を建設していることについての「トリビューン」紙の記事を紹介していましたので、ちょっとここで紹介してみたいと思います。グアム島は米西戦争以降アメリカ領となっており、アメリカがそこに防御の基地の建設を急いでいたということは、当時すでに日米双方、ゆくゆくは戦争状態になると考えていたことを示していると言えますが、同時に今回紹介する記事では、アメリカのモンロー主義が根強く、アメリカ世論が日本との戦争に対して消極的であったこともよく分かります。曰く

「トリビューン」は(略)「日米戦ふべしや」題下に論じている「比律賓より手を引かんとする米国が今更何の必要ありて「グアム」に海軍根拠地を建設せんとするや仮に日米位置を換え、米国本土より千五百哩の近き位置に日本が海軍基地を建設すとせば米国は重大なる敵対行為と見るは当然なるが如く今次米国の行為に対し日本が重大なる関心を有し憤慨するは極めて当然のことと言ふべきである。

としています。当該記事によると日本は日中戦争で手いっぱいのように見えるが、日本軍は強いので、更にアメリカを相手に戦争するだけの力はあるし、そもそもヨーロッパはアドルフヒトラーがいてとても日本のことまで手が回らないので、アメリカの思ったように戦争を進めるわけにはいかないと書いてあると報告されています。

そのような記事が書かれていたことが本当だとすれば、正しくアメリカのモンロー主義が当時どれほど強かったかを示す材料になるのではと思います。昭和14年2月ですから、普通の人はまさかアメリカと戦争するとは思っていなかったと思いますが、一方で新聞に上のような記事が掲載されていたということは、東洋に日本という不確定因子があり、ヨーロッパにアドルフヒトラーという不確定因子があって、これは世界大戦争の予感があるが、アメリカは絶対にそれに参加してはいけないという論調が盛んであったことを示すとも言えます。アメリカ国内で一国平和論がいかに強かったか、真珠湾攻撃などのような今から考えれば後先考えない一発芸さえやらなければ、アメリカが積極的に戦争に参加しなかった可能性は十分にあったと思え、非常に複雑な心境になるしかありません。

また、このような記事を読んで日本人はアドルフヒトラーさまさまになっていたに違いなく、ヨーロッパではドイツが絶対に勝つから、そうしたらアメリカも妥協するだろうという他力本願的楽観論でアメリカとの戦争に入っていった当時の指導者に対しては重ね重ねがっくしするしかありません。今後も当面、この資料を読み進める予定です。これまで日中戦争の話題が多かったですが、今後はアメリカの話もぱらぱらと増えてくるかも知れません。

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