昭和史22‐東久邇宮台湾神社参拝と神武節

戦前、神武節という日が設けられていました。神武天皇は旧暦の3月11日に崩御したことになっているのですが、これをグレゴリオ暦に直すと4月3日になるそうで、4月3日を「神武節」として祝日にしていたわけです。

で、その神武節に合わせて昭和13年4月3日、東久邇宮航空本部長が台湾を訪問し、台湾神社を参拝しています。既に南京攻略戦も終わり、日中戦争は膠着状態でしたが、台湾はその住民のほとんどが漢人であることから、どうにかして「皇民化」したいという当局の願いのようなものがあり、ここは宮様にお出ましいただいて、なんとか国威発揚をしたいというわけです。

私が今追いかけているとある情報機関の機関紙の昭和13年4月21日付の号には、東久邇宮が台湾神社を参拝し、陸軍施設を慰問訪問している写真が巻頭グラビアみたいな形で掲載されているのですが、その次の巻頭特集みたいなところには台湾での増税の必要を訴えています。とにかくお金が足りないという当時の情勢がよく分かります。はっきり言ってしまうと、どんなに増税をして、献金を集めて、公債を売ったところで戦時は物資がそもそも高騰しているわけですから、物資の余裕がない限り、いかにお金を集めようともインフレーションで消えてなくなってしまいます。特にアメリカの経済制裁が行われた後は、どれほどお金を集めてもモノが入ってこない以上、インフレーションを起こすだけなので、日本帝国は解決不能な問題に直面せざるを得なくなっていくということが、その足音のようなものが聞こえて来る感じがします。

今回の号では思想犯として収監された台湾人がその思想信条を変更し、要するに「転向」したその心の動きを綴った手記もしているのですが、現代であれば思想犯で収監するなどということは絶対にあってはいけないことですが、このような手記を掲載するのも「さあ、今、抗日思想を持っている人たちも悔い改めて、立派な『日本人』になりなさい。人生をやり直せますよ」というメッセージになっているわけで、ひたすら「皇民化」をがんばっている様子が伺い知れます。

当該情報機関の海外情勢の欄では、蒋介石軍は外国人パイロットを雇い入れたものの、無敵日本軍機を見ると絶対勝てないと思って敵前逃亡するので10人ぐらい首にしたという話と、オーストラリアのラジオは反日放送を続けていて、これは宋美齢の秘書がドナルドというオーストラリア人だから、オーストラリアのラジオ放送が蒋介石の宣伝機関みたいになってしまうのだが、人事異動でフランク・クルームという人がが日本に派遣されることになったから、今後は状況は良くなるだろう楽観的なことが書かれてありました。フランク・クルームがどのような人物なのか、検索しても全然分かりませんでしたが、当該情報機関の情報を閲覧する限り、日本帝国は宣伝戦で完全に敗けていたか、被害妄想だったかのどちらかになっており、今後の暗い展開を知る現代人としてはため息をつくしかありません。

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