昭和史21‐思想戦

とある情報機関が発行していた機関紙の4月1日付の号では、思想戦の重要を説いています。まず過去の例として第一次世界大戦では双方が思想戦に力を入れ、たとえばドイツ革命が起きたのは共産主義の先導によるものであると結論づけています。本当かどうかを確認する手段を私は持っていませんが、そうだとしてもそんなにおかしい話とまでは言えません。中国では国民に対して徹底した反日教育を行っているのも、思想戦を重視しているからだとしています。また、ソビエト連邦は60か国語で宣伝ラジオ放送をしており(現代のrussia todayをちょと連想しますねえ)、日本も負けてはいられない、日中戦争で「日軍百万杭州上陸」というアドバルーンを上げただけでも敵軍の戦意を大きく粗相したのだから、思想戦は効果があるのだからがんばろう。みたいな話になっています。

国民各々への注意の呼びかけとして「桃色スパイ事件が」頻発しているから気を付けろ、というようなことが書かれていましたが、現代風に言えばハニートラップということになるかも知れません。そのためダンスホールで気安くナンパされないようにと注意を呼び掛けている他に、タクシーの運転手がスパイかも知れないので、社内での会話は慎むように、工場などにもスパイがいるからと注意を促しています。同情報機関はやたらと東南アジアの華僑の動向を知ろうとしていたふしがあるのですが、こういったことも心配の種としてはあったようです。文中には「国民の一人一人が思想戦 宣伝戦の戦士になり得る」と書いてあり、国民総動員の精神もそこに見て取れないわけでもありません。この文章では末尾のほうで日本のスローガンは「日本精神」「八紘一宇」なのだから、それを世界に広げようという趣旨のことが書かれています。
しかし、自由、民主主義、共産主知、キリスト教のような普遍性があるかどうかはともかく、普遍性があるとみなし得る理想やスローガンなら外国の人に対しても説得力を持ち得るようにも思いますが、「日本精神」「八紘一宇」「大和魂」のようなものは、日本人には通用する可能性がっても、外国の人には「そうか、それを信じて行動すれば自分の国はもっと幸せになる」と思うというのはちょっと考えにくい気がするので、厳しいのではないかなあ…と率直な印象を持ってしまいます。

ハル国務長官との日米交渉がワシントンで続けられていた時、東京では「日本の情報がアメリカに漏れているのではないか」という疑惑が生まれ、暗号を平文に解読する担当者を複数にするように訓令が行きますが、実際にはアメリカは日本の暗号を傍受・解読していたわけですから、担当者を変えようとどうしようとそこは変わらないわけで、そのあたりに情報戦に対する認識の各段の違いというものを、知れば知るほど思い知る感があります。

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