昭和史14‐日中戦争と台湾原住民

昭和13年1月21日付で発行されたとある情報機関の機関紙に「時局に対する蕃情」という記事が掲載されています。内容的には台湾原住民の人たちはこんなに戦争協力に熱心で日本帝国に忠誠を誓っていますよ。というプロパガンダの一種なのですが、ちょっと紹介したいと思います。

角板山青年副班長ポートセツという人の言葉
私共は一層官の御指導を遵守し一生懸命働き協力一致銃後の守りを堅め皇恩の万分の一でも酬ゆる覚悟であります。

チンムイ社頭目ヘバオボーヘンという人の言葉
天皇陛下のお住まいなさる東京は支那大陸と大変離れている。然し我々の住む台湾は非常に近い、其の支那と戦争しているにも不拘我々はかうして平和な生活ができるのは、上御一人の御蔭と強い御蔭で均にありがたいと感謝しております。

という内容になっています。果たしてこれが本心から出た言葉なのか、そういうわないと後々面倒になるからそう言っているだけなのか、情報機関の人間が適当に捏造したのかは分かりませんが、原住民の人たちも戦争協力に熱心だというプロパガンダを展開していることが分かります。

他にも台南では「国民精神総動員新年奉祝式」を行ったとか、時局に関する映画の巡回上映を行ったとかが書かれてあり、要するにこの機関紙はプロパガンダがどれくらい成功しているかを台湾総督府にご報告している機関紙という位置づけになろうかと思います。

ただ、気がかりなのは、どの記事も「全てはうまく行っている」というスタンスで書かれていることです。タイの情勢分析も同日付のものには掲載されているのですが、タイには中国人諜報員が入り込んでいろいろ問題はあるけれど、タイの官憲は独立国としての誇りがあるので厳しく取り締まっているとして、朗報であるというようなことが書いてあるわけですが、「問題ない。大丈夫」と言っているだけで戦争に勝てるわけではありません。情報機関の機関紙がこんなことで本当に大丈夫なのだろうか?と首をかしげたくなってきます。



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