昭和史5‐新聞等出版物の取り締まり

日本帝国時代のとある情報機関が発行していた機関紙の昭和12年10月21日付の号では、新聞等出版物の取り締まりに関する訓令のようなものが出ていますので、ここでちょっと紹介したいと思います。

盧溝橋事件以降、上海で戦争をやっている真っ最中で、当該の文章では敵の「不信不法行為によって我国の局地解決方針も不拡大主義も悉く蹂躙されたのみか」敵の「武力行使は愈々全面的に表面化し、遂に我をして断固膺懲の聖戦に転移するの已むなきに至らしめたのである」とされており、かなり怒っている様子を伺い知ることができます。

要するに今までは所詮は局地戦、戦争ではなく飽くまでも紛争という認識だったものが、ここへ来て本気の戦争という風に認識が変化したことが分かります。そこで、敵に通牒されないために、新聞等出版物の取り締まりを厳しくしなければいけないというわけです。当該文章には陸軍省令として「新聞紙法第27条二依リ当分ノ内軍隊の行動其他軍機軍略二関スル事項ヲ新聞二掲載スルコトヲ禁シ豫メ陸軍大臣ノ許可ヲ得タル者ハ此ノ限リ二在ラズ 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス 昭和12年7月31日 陸軍大臣」となっています。植民地にもほぼ同様のレギュレーションが適用されたらしく、台湾総督からほぼ同様の法令が出されています。

しかし、当該文章ではそれではちょっと甘いのではないかとの見方を示しています。「極論すれば相手方に了知されさへすれば如何なる方法で伝へてもよい訳である」というわけですから、例えば新聞記者が実はスパイで、軍機に触れたことを記事には書かなくとも敵に情報を提供することも想定され得ると考えたわけです。またさりげなく書いたり、行間を読めば分かるような書き方、実は暗号、みたいなこともあり得なくもありません。

そこで植民地では特に、既に発表されたものか総督府の許可を得たものか、他の植民地の総督府で既に許可を出したものか、既に許可を得た記事の転載、または同盟通信社の配信でなければ新聞等に掲載することはまかりならないとしています。同盟通信は当局発表と同じ効力を持つとみなすとの協定があり、同盟通信社の仕事上、いちいち煩雑な手続きをとっていられないのでそうするとのことですが、なんとなく利権の匂いも微かに漂って来ないわけではありません。

大変にきな臭い内容になっていますが、これから読み進めるにつれて更にきな臭くなること間違いなさそうです。

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