2017年4月15日、北朝鮮が核実験をやるならこの日と言われたのが何事もなく過ぎ、個人的には「まあ、もう戦争にはならないだろう」と考えているのですが、ちょっと事態に変化が生じているようです。英語メディアが騒ぎ出しています。英語メディアと言ってもなんでもかんでもチェックするわけにはいかないので、cnn,fox,financialtimes,bbcあたりを拾うようにチェックするくらいしかできないのですが、ある程度チェックしておけば、欧米でどういうことが注目されているかは大づかみに理解することはできます。特にcnnが反トランプ、foxが親トランプですから、この両方を横目でもいいのでざっくり見ておけば、中間的な視座も得やすいと考えています。
では、4月15日ごろ、彼らがどういう報道をしていたのかというと、主としてシリアに関心に向いていました。トランプさんは外交では中東関係が第一ですから、シリア、イランが懸案になっている最中、本当に北朝鮮にまで手を出すのだろうかと私は疑問に感じてはいたのですが、シリアに向けてトマホークが使用されたことに欧米メディアが食いついており、この背景にはアメリカの政府筋が意図的に出す情報量がシリア関連に偏っており、記者たちはどうしても出された情報について追いかけざるを得ない宿命がありますので、アメリカ政府としてもメディアにそっちへ関心を持ってほしいという希望もあったものと推察できます。
アメリカは戦争になったら好戦的な方向で一挙にまとまる国ですし、cnnもトランプさんに対する批判が柔らかいものになったような印象はありましたが、若干、cnnがどうしていいか迷っているフシもあるように感じました。そういう意味では大ブッシュと小ブッシュの時代に中東で戦争した時に国民がこぞって支持していたのとはちょっと違う感じかなあとも思えました。トランプ政権としては、アサド政権に対してトマホークを使ったことは、必ずしも過去のような国民的支持を得るという手段にはならなかったという教訓を得たのではないか、cnnはそんなことくらいでは反トランプをやめないのだということを学んだのではないかとも思えます。
さて、ところが本当にここ数日、2,3日のことですが、突然に英語メディアで北朝鮮関連の話題が増えてきました。やはり政府筋がそれに関する情報をよく出すようになり、現場の記者が食いつきを見せているとも思えます。今ごろになって「緊張が高まっている」などと言い始めています。まず間違いなく政府筋が「緊張が高まっている」との情報を流しているからだとは思いますが、気になるのはその先に描いている絵がよく読めないということです。私はアメリカが本気で北朝鮮と戦争することを考えているとは思えません。本気で戦争をする準備を整えているのであれば、北朝鮮へ向かったはずのカールビンソンがしばらく消息不明になってインド洋に出現するというような理解に苦しむ航行をすることはちょっと考えにくいですし(意図的にそうしたのだ、戦略だ、という人もいるでしょうけれど、本気の勝負をかけるのであれば、少しでも早く現場に行きスタンバイするというのがいかなる職業でも基本になるはずです)、かくもあからさまに中国への期待を表明するのも、できれば中国の力でいろいろ収めてもらいたいという本音があり、過去にアメリカがどうしても戦争したい時にはトンキン湾事件のような小細工をしてまで戦争を始めたことを考えると、わざわざ中国に下駄を預けて開戦のハードルを上げるというのは、本音では戦争をしたくないということがよく現れているように思えます。
気になるのは、ここを超えたら戦争になるぞというレッドラインが若干、曖昧な点です。アメリカに届くicbmが完成し、そこに核弾頭が積まれる事態になったならば、アメリカはゆるさないだろうという話はよく聞きます。しかし、それでは北朝鮮が核実験を強行した場合、それがレッドラインを超えたかどうかを厳密に判断することはできません。もし北朝鮮が核実験とicbmの実験を別個に別時期に行えば、それはレッドラインを超えたことになるのでしょうか。或いはどちらか片方だけ成功させればレッドラインを超えたことになるのか、それとも一度に両方やらなくては、超えた判断しないのか、微妙なところが曖昧なままです。もし、アメリカが本気であれば、開戦のハードルを下げるでしょうから、このような曖昧さは関係諸方面にとっても耐え難いストレスになるに違いなく、ここにもアメリカが本気ではない、あるいは迷っている、もしくは本音ではやりたくないというのが出ているのではないだろうかと思えます。
さて、ciaの本音を知るにはvoice of americaの中国語版が私が手に入れられるソースの中では最も適切だと考えているのですが、当該メディアのyoutube配信を確認したところ、やはり中国の動きを注視しており、中国がわりと本気で北朝鮮を締め上げる動きに乗り出しているということが中心のトーンで進行されていました。トランプさんとciaの関係は悪いと個人的には見ていますが、実際に戦争をするとなれば、ciaと連携しないというわけにもいかないでしょうから、当該メディアをチェックすることは今後のアメリカの出方を予測するうえで、有効な手がかりになることは間違いないと思います。そして、当該メディアが中国に期待する主旨のメッセージを発しているということは、やはり、本音ではやりたくないということのように思えます。これは中東のごたごたが改善したわけでも大きく展開したわけでもない以上、北朝鮮に本腰を入れるとは考えにくいという大枠にも沿っていることになりますから、大体、この方向で見ていいのではないかと思います。
とはいえ、この時期になって、そろそろ米韓合同軍事演習も終わろうという時期に、英語メディアが朝鮮半島に目を向け始めた、即ちアメリカ政府筋がそういう情報を流し始めたということの意図や背景が以上のようなことだけでは説明がつきません。トランプ政権としても、メキシコの壁の予算は諦めざるを得ない見通しになっており、オバマケアも廃止には至らず、いろいろ失策が目立っていますので、そういうことからメディアの注意を逸らせたいと考えているのではないかと私は勘ぐっているところです。まだしばらくは目が離せませんが、戦争になる可能性はそんなには高くないという見方でいいのではないかと考えています。