オデュッセウスとナウシカ



古代ギリシャ関連の必須の教養と言えば、『イリアス』と『オデュッセイア』です。イリアスはトロイ戦争をモチーフにし、オデュッセイアはいわばその後日譚と言ってもいいものですが、よりドラマ性が高いのは、個人的にはオデュッセイアの方ではないかと思うというか、オデュッセイアの方がおもしろいなあと思います。両者はつながっていますから、作者別人説はあるものの、その双方を知らないことには完全には理解できません。源氏物語が光源氏が主人公の前半と後半の匂宮、薫と浮舟の三角関係の物語の双方を知っていて、ちゃんと読んだと言えるのと同じと言えるかもしれません。

それはさておき、前半のイリアスではフランスのパリの語源になったパリス王子がアフロディーテに黄金のリンゴを与え、その引き換えにアフロディーテは世界一の美女ヘレネを手に入れるというところから始まります。神の力によってヘレネはパリスに与えられるわけですが、ヘレネが人妻だったために話がこじれ、とうとう戦争に発展するわけです。世界で最も古い物語がさっそく人妻との許されざる愛情物語というわけですから、人はいつの世も変わらないとも言えますし、ドラマには人妻との愛なり嫉妬なりといった非常事態的かつ普遍的要素を求められるという点で、こういうものに目を通すのもいろいろ勉強になるなあとも思えます。

こうして起きたトロイ戦争では有名なトロイの木馬作戦が成功し、ギリシャ対小アジア、いわばヨーロッパvsアジアのダイナミズム、歴史の始まりとも言われる長期戦はギリシャ側の勝利に終わります。単なる神話だと思われていたものが、シュリーマンが発掘調査をして、遺跡を見つけ出したため現代ではおおよそのことは実際にあったのだろうと考えられているわけです。

勝利の戦争の帰り、神々に祝福されないギリシャ勢は嵐に合うわ、おかしな一つ目の巨人に出会うわで全滅の憂き目に合い、オデュッセウス王だけがなんとか生きて世界のどこかで生きているという事態にまで追い詰められます。故郷では妻と息子が不安な心境で待っている最中、オデュッセウスは女神に愛されて7年も一つの島にとどまって安楽な生活を送ります。その後、故郷へ向けて出航しますが、ポセイドンの怒りを受けて遭難し、浜辺に打ち上げられたところを心優しきナウシカ姫に助け出されるという展開を見せ、ナウシカ姫もオデュッセウスを愛しますが、彼は意を固くしてナウシカのアガペーに感謝しつつも20年ぶりに故郷へ帰り、不在の間に妻に求婚していた男どもをことごとく討ち取って、ようやくかつての愛と平安の日々を手に入れることになります。

このように見ていくと、オデュッセウスのもてっぷりがおおいに目立ち、なんだかとても羨ましいのですが、ナウシカ姫が風の谷のナウシカの原型になっているに相違なく、同姫が無償の愛でオデュッセウスを救助し、しかも自分の願望を押しとどめて身を引くというあたりに宮崎駿さんがぐっときたのかもしれません。



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