過去に何度かアイヌの子守歌である「60のゆりかご」の動画を学生にみせたことがあります。アニメーションがとても素敵で個人的に好きだということもあるのですが、哀切を帯びつつ温もりと優しさがある響きもとてもいいので、自分が楽しむという目的も含んで学生にも見せています。
アイヌの人々がどこから来たのかということについては、だいたい、ツングース系の人々で、シベリア方面からやってきた人たちなのではなかろうかということで、それが通説になっているのではないかと思えます。
アイヌ語に関する知識は全然ないのですが、60のゆりかごを繰り返し聞いてみたところ、日本語に比べて子音で終わる音節が多いように思え、音韻論についてはほとんど勉強したことはないのですが、過去に韓国語をかじってみた経験から言えば、韓国語にも子音で終わる音節が多く、アイヌ語との共通点ではなかろうかと思えます。中国語は声調の必要上、母音で音節が切れる場合が多いですが(北京語に限ります。他の福建語とかになったらどうかとかは全然分かりません)、音韻と民族に関係が深いとすれば、中国語圏の人々が長江エリアを起点に広がったのに対して朝鮮半島の人々はシベリア方面から南下してきた人々ではなかろうか、アイヌの人々はどこかで朝鮮半島の人々と分岐したのではないかという気がしないでもありません。民族的にはコーカサス系に属するというのを読んだこともありますが、幅を広めにとって議論するとすれば、フィン族やハンガリーの人々と祖を同じくするのかも知れません。
戦前の文献で、アイヌ語と東北弁との語彙の共通点に関して論じているものを読んだことがありますが、生活圏が近接している以上、語彙の相似は祖を同じくしていなくとも起きるのではないかとも思えます。一方で音節や語順の変化はそう簡単には置きませんので、仮に言語学的なアプローチをするとすれば、やはり日本人とは祖を同じくしないのではないか(長い長い歴史を遡ればアフリカのイブに辿り着くという説はとりあえず脇に置きます)と思えます。
19世紀、日本とロシアが国境を策定するにあたり、アイヌの人々の意思は無視されており、そこは残念なところではありますし、明治に入ってからは差別的な法律によって縛られていた面が否定できませんので、それについても日本人としては恥ずかしい、申し訳ないという心境にもなります。
ただ、最近はアイヌ文化振興法が作られ、アイヌの人々がそのことに誇りを持ち、自分たちの受け継いだものを大切にして、更に広めていくことへの道も開かれているようです。アイヌ文化交流センターが東京と北海道にあるようなので、一度機会を見つけて訪れてみたいとも思います。どうせなら北海道のアイヌ文化交流センターに行った方が、旅行もできていいかも知れません。北海道は魚がおいしくサッポロビールもあるので好きです。