ロシアのプーチン大統領の訪日は、肩透かしといえば肩透かし、進展があったと言えば進展があったとも言える、なんとも微妙な感じのものでした。ただし、個人的には「北方領土ではこれまでにない新しい体制で経済協力を行う」ということになったのは、蟻の開けた穴がいずれはダムをも崩壊させるのと同じような効果をもたらすのではないかとも思えます。
プーチンさんは訪日のしばらく前から北方領土の返還については否定的な発言が目立つようになり、一方で経済協力については大変に熱心であるととれる発言も多かったわけですが、どこにどんな裏が仕込まれているのかと多くの人が腹の内を探ったと思いますが、結果としては事前に出していたメッセージはまさしくそのまんまだったと言え、案外、裏を探る必要もないのかも知れません。
プーチンさんとしては鰻の香りだけかがせて銭を取りたいと思っていたように思えますが、北方領土は別の新しい枠組みということに同意したということは、将来、鰻の本体を食べられる可能性を日本に残したとも言え、そこはあまり悲観的にならずに、日本の得点になったと評価していいのかも知れません。
北方領土の開発が新しい体制・枠組みで行われるということは、ロシア側が暗黙裡に領土問題の存在を認めているということを、今後の開発過程で常にはっきりさせられるということでもありますから、長い目で見れば、還ってくる可能性を感じさせてくれるものだとも言えます。
あまり大きな予断を持つわけには行きませんが、北方領土の地域がジャパンマネー抜きでやっていけないところまで影響力を発揮することができるようになれば、そのこと自体が交渉カードになるとも言えます。もっとも、それこそサラミスライス戦略でゆっくりじっくりじわじわと一進一退しながら交渉が続いていくということにもなりますので、なかなかしんどい、我慢強さを要求される作業になっていくのだろうと想像できます。担当する人は相当に苦労することと察してしまいます。
さて、現状、ロシアは西側からの経済制裁の対象になっている一方で、ドナルドトランプ次期アメリカ大統領はプーチン氏に親近感を持っているとも言われています。今後、どっちに転んでどうなるのかさっぱり見当がつきませんが、もしかするとポスト冷戦構造が終わっていくき、ヤルタ体制ともマルタ体制とも違う、新時代が始まるかも知れないとも思えます。
一部では日米露同盟みたいなことを言う人もいるみたいです。そんなことが実現したら世界史の教科書を書き直させる凄い展開だとも思えます。今後の注目点としては、ドナルドトランプさんが就任後にロシアに対してどう出るか、シリアに対する出方と連動するでしょうから、その辺りを注意してウオッチしたいと思います。
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