台湾映画『狼が羊に恋するとき』のささやかな青春

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いかにも「青春」していて、青春だけを描いた、いい映画です。いい意味できらきら感があります。

主人公の男性は、ある日突然恋人に振られます。呆然自失、何故、こんなことになったのか分からない。自我崩壊でほとんど寝たきりみたいになった彼は新たな人生を見つけるために印刷屋さんで働きます。印刷した商品の配達先には予備校があります。印刷した模擬試験の用紙を配達するのです。

予備校でアルバイトしている女の子と出会います。何気ない会話を繰り返します。互いに好きになってもいいけれど、彼はまだ前の彼女のことを忘れることができない、友達以上、恋人未満な関係が続きます。

恋愛ものですが、ただただキラキラしていて、いやらしいものがありません。奥ゆかしいデートとかもありません。ファミリーマートの近くに座り込んで話し合ったり、バイト中に言葉を交わしたり、とてもかわいい感じの友達以上恋人未満です。

アルバイト。将来は未定。安価な感じの服だけどおしゃれ。若さだけで生きている。そういう青春の雰囲気が詰まっていて、いい気分で観ることができる映画です。

台北市内の撮り方も私はいいと思います。台湾映画では台北を「ハイセンスで大人のきらびやかな大都会」風に撮ろうとする作品が多いです。『GF,BF(女朋友。男朋友)』、『失魂』、『海角七号』などの映画ではそういう位置づけになっているように思います。ですが、実際の台北を見てみると、そういう印象はあまり受けません。どちらかと言えば重苦しくて、いろいろ雑な感じで、良くも悪くも汚れた感じがします。

この映画ではそれをそのまま撮影しています。私は個人的にはそういう撮り方の方が台湾人の青春を描くのには相応しいのではないかなあという気がします。雑な街であるからこそ、若い人がとにかくがんばって、まだ自分の人生がどんなものか分からないけど、とにかく歩いて働いて勉強して、いろいろ試してみる。そういう雰囲気を感じることができるような気がします。日本で言えば、六本木や銀座だけで東京を表現されると「ちょっと違うなあ」と思うような感じではないかと思います。下北沢や下高井戸三軒茶屋あたりの少しくたっとした感じも東京です。そんな印象をこの映画からは受けることができました。

個人的な見解ですが、ヒロイン役の簡嫚書さんがかわいいです。驚くほどかわいいです。そういう人が重苦しい台北でがんばって歩いているのが大変栄えるのではないかなあという気もします。

アルバイト、失恋、安い感じだけどおしゃれな服、予備校、紙ヒコーキと「青春」を想起させる記号に満ちています。ただ、「ああ、青春だなあ」と思って観られる映画です。人の嫌な部分を敢えて描かないことで清潔感のある清涼剤みたいな映画になっています。

主人公の働いている印刷屋さんのおじさんがいい味を出しています。台湾語でいろいろ面白そうなことを言っているのですが、北京語しかできないので何を言っているかは分かりません。捨て猫を拾うやさしいおばさんも出てきます。「青春期」と呼ばれる比較的短い時間を過ごした後に、そういったおじさんやおばさん、つまり大人になっていくということを暗示しているように思います。そういうのも、更に青春の希少さのようなものを観客にメッセージとして送っているように思いますので、中年になってから観ると更にぐっと来ます。

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