ディズニー映画『リロ・アンド・スティッチ』の悲しみと愛

両親を事故で亡くしたリロは姉と二人暮らしで、お姉さんの育児能力に疑問を持つ児童相談所は、リロを施設で育てることを考えています。リロはそそっかしいところがあり、友達がなく、孤独をかみしめて生きる小さな女の子です。

物語のもう一人の主人公であるスティッチは銀河の遠い場所で遺伝子工学を利用して開発された生物で大変凶暴です。スティッチは凶暴で更生の可能性なしとして追放が決まりますが、途中で脱走。地球にやってきます。追手を逃れるために体の形を少しだけ変えて犬のふりをし、リロに飼われるという展開になります。

物語の結末はわりと平凡でそんなにどうということはありませんが、設定には考えさせられる、同情を禁じ得ない、ぐっと来させるものがあります。

リロとスティッチはともに自分の心の赴くままに行動する天真爛漫で真っすぐな、正直な性格です。そして、正直であるが故に、ただそれだけの理由で周囲から排除されます。リロは友達からハブられた上に姉と自宅から引き離されそうになり、スティッチは凶暴になるように遺伝子工学的に設計されているため、本人の責任とは言えない理由で追放されます。元いるところから引き離される、排除される、居場所を失う危機にさらされるという点が両者の共通項になっています。

リロとお姉さんの間では「家族はどんなことがあっても見棄てない」という言葉が交わされ、家族愛の美しさが表現されます。家族運に恵まれなかった私としては、この言葉にはぐっと来てしまい、どうしても感情移入せざるを得ません。

当初は凶暴だったスティッチはリロの持っている本の中から「みにくいアヒルの子」を見つけ、それが自分と同じだと感じるようになり、そこから少しずつ変化していきます。リロとスティッチは心情的に結びつき互いに助け合うようになります。スティッチはそもそも凶暴になるように設計されていますから、リロに敵対する人物が現れた場合は心強いことこの上ありません。

物語の舞台はハワイで、お姉さんはハワイアンレストランの踊り子の仕事をしていますが、スティッチがした悪さが原因でレストランを首になります。その時に「こんな半端でニセモノのダンスショーなんてこちらから願い下げよ」という主旨の発言をします。たった一言ですが、誰もがうっすらと感じるハワイの「作られたリゾート」感に触れています。ハワイはいいところですが、観光客に気に入るように作りこまれた、あるいは作り変えられたハワイの悲しみを表現しているようにも思えます。

両親のいない姉と妹がいて、児童相談所が両者を引き離すことを考える…というのはアメリカ映画でよくありそうな設定のように思います。日本だと親戚が引き取るみたいな解決策がとられると思いますが、これはどちらがいいかはよく分かりません。親戚だという理由で居候すると『火垂の墓』みたいになってしまいます。

最後はお姉さんの新しい仕事が見つかり、児童相談所も一緒に暮らすことを認め、スティッチも「地球へ追放」ということでめでたくシャンシャンな終わり方ですが、弱いものの味方になる、困っている人が幸せになるという物語はやはりいいものです。あと作画もよかったです。

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