これまでにエヴァンゲリオン新劇場版は『序』『破』『Q』が公開されています。私は最近知ったのですが、能ではストーリーの展開が「序」「破」「急」の順序になるそうです。これまで何度か実際に能をみに行ったことがありますし、動画でも何度も観ていたのですが、そういう順序になっていると初めて知り、言われてみればその通りだと納得し、今まで気づいていなかった自分が恥ずかしいとも思いました。
能の「序」の段階では、登場人物がゆっくりとした動きで登場し、自己紹介するときもありますし、舞台上で無言でじっと佇む時もあります。いずれにせよ、ゆっくりと盛り上がりのない、言ってみれば退屈で、観客は続きに期待する段階になります。続いて「破」の段階で物語に動きがあり、知られざる秘密が明かされ(古典なので観客は基本、筋は知っている)、告白や暴露があり、新たな問題があり、克服するべき障壁が示されたりします。
最後の「急」では物語が急展開し、激しい対立や慟哭、命のやり取りなどがあって、終結していきます。
エヴァンゲリオン新劇場版の場合、まさしくこの順序通りで『序』はいわば登場人物や設定の紹介です。しかも観客は旧劇場版、あるいはテレビ版やマンガ版からストーリーをよく知っていますので、いわばおなじみのことをなぞっている、なぞりなおしている感じです。映像はCGできれいになりましたし、より21世紀的というか、きらきらしていて、さすが作り直されただけのことはあると思います。ただ、ストーリー的には既に知っていることなので新たな注目点と言われても…。な感じも残ります。
次の『破』では、シンジとアスカとレイの人間関係に大きな変化が現れます。レイが自分の内面に人間的な感情が存在することに気づき、シンジはレイを愛していると自覚します。かわいそうですがアスカはちょっと退いている感はありますが、アスカの人間関係面での交代と重大な負傷は、『序』の段階での曖昧な均衡を破壊するという効果があると言ってもいいと思います。
さて、『Q』ですが、いきなり全然違う展開になっていることは誰でも知っていると思います。「えーっ前作の綾波を返せ!はどうなったの?」「律子さんが世界が終わるのよと言ったのはなしかよっ」と想定を超える物語の展開に唖然としたのは私だけではないはずです。
本当に急な展開で、通常の物語では終了へ入っていけるところが、こんなことになって、一体、庵野先生はこれからどうするんだろう…。と他人事ながら心配になりますが、これについはもはや前人未踏の能の物語構造を超えた世界が作られるのを待つしかないです。
『シン・ゴジラ』よかったです。ですが、はやくエヴァンゲリオンの続編をお待ち申し上げております。
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