とてもいい本です。アドラー心理学の実践編で、『嫌われる勇気』の続編です。以前『嫌われる勇気』を読んだとき、レトリックばかりのように思えて、上手に理解することができませんでした。アドラー心理学の入門みたいなものを読んだこともありましたが、反論したいことやもっと質問したいことが沢山あって、ちょっと違うかなあと思っていましたが、この本を読んでだいぶよく腑に落ちた感じがします。
私の理解ではアドラー心理学は
1、他者の評価を気にしない
2、自分のやりたいことをやる
3、他人に押し付けない
4、そのままの自分を受け入れる
という感じです。一つ一つの言葉は確かにその通り!と納得できますが、「でも、しかし…」がついてきます。そんな生き方してたら、どんどん孤独になるのでは?一人で生きろと?みたいな疑問が私の中にはありました。それなら、それでいいですが、そしたらアドラーさんみたいな偉い先生の話なんか聞かなくてもできるもんと思っていました。一人でできるもん。です。
ところがこの本では、更にその一歩、愛の実践の話に入ります。愛とは能動的に他人を信頼し、その反応は相手に任せて自分が実践するものだ、ということらしいです。途中でエーリッヒフロムの本が念頭に浮かびましたが、この本でもフロムに触れています。ただ、フロムの『愛するということ』は前置きが長く、結論があっさりしていて、拍子抜けで、正直ちょっとがっかりでした。
それに対して『幸せになる勇気』では、実践するとはどういうことか、どのように実践するのかが具体的に分かりやすくかかれてあり、自分にも実践できそうだと感じました。
また、他者評価を気にしない、そのままの自分を受け入れる(そのままの他人も受け入れる)、自分を愛する、他者を愛するということなどについて、普通にいろいろ疑問に思ったり反論したくなったりすることが対話形式で述べられていて、「そうそう、そこ、それ」と膝を打つ思いで読み進めるができました。相手がどういう反応をするかは完全に相手に任せて、自分は目の前にいる人物に対して自分ができることをする、という姿勢はある種の決然さを要求されますが、何故、そうすることに価値があるのかということを納得することができます。
相手に任せるということが相手を尊敬することであり、それが真実に人間関係を築いていくことができるというのは、確かにそのとおりですが、そのためには相手が期待通りの反応をしないことを受け入れるという勇気を持つしかありません。まさしく『嫌われる勇気』です。
そして更に一歩進めるならば、愛の実践もまた、男女愛であれば特定の異性と幸福を築いていくという決然たる意志によって行われることで、そういう意味では『幸せになる勇気』を持つのがいいと述べています。
私はどんなことでも好き嫌いが激しく、嫌いな人とは「さよなら…」しかないと思い込んでいる面がありますが、そこを更に、それが男女愛であっても、或いは友情であっても、その他いかなる人間関係でも、相手に強いることなく幸福な関係を築こうとする決意を持つ。というのは当然のようでいて忘れてしまいがちな人生の価値と言えるかも知れないなあと思います。
個人主義的に生きている人でも、共同体重視思考で生きている人でも、一読してみて自分の在り方を省みる手助けをしてくれる本になると思います。真摯な、とてもいい本です。