細見良行『琳派』でちょっとほっとする時間を過ごせる件

琳派は江戸期を中心に盛り上がった日本絵画の流派の一つです。ただ、通常、師匠から弟子へと技術や精神が受け継がれていくのに対し、琳派の場合はそのような子弟関係がありません。琳派の絵を見て「ああ、素晴らしい俺もこんな風な画を描きたい」と思って過去の琳派の絵を独自に研究し、創作をした人たちに与えられている称号で、極端に言えば自称さえすれば自分も琳派の一人だと名乗ることも不可能ではないですが、世間がそれを認めるかどうかという、かなり高いハードルを超えなくてはいけません。

細見良行さんという方は京都に細見美術館というものを開設しておられ、そこには細見家三代にわたるコレクションが展示されており、わけても琳派の絵は沢山保管しているということで、この『琳派』という本は、細見家の所蔵品を中心に掲載し、目にも楽しく琳派の概要も分かると言う一冊です。

琳派には師弟関係がありませんから、その画風から誰が最初の一人かということを世間の方で認定しなくてはいけませんが、1615年に本阿弥光悦が京都郊外に土地を与えられ、そこで創作活動に没頭したのが始まりということになっているらしいです。ちなみに「琳派」という名称が定着したのは1960年代ということなので、明治以降に岡倉天心みたいな人が日本画の研究に打ち込み、いろいろな喧々諤々を経て、誰が琳派で誰がそうでないかみたいなことの議論がだいたい落ち着いたのがその時期なのだということかも知れません。ついでに言うと、琳派という言葉の由来になっている尾形光琳は江戸中期の人で、本阿弥光悦はもっと前の人物ですが、それでもこの画風の人たちは多分、リスペクトも込めて、尾形光琳が一番すごい、みたいなことで琳派ということになったのかも知れません。

この本ではいろいろな作品が掲載されていますが、やっぱり豪華なのは金箔をたくさん使ったものではないかと思います。尾形光琳の紅梅図屏風は「おー雅だなあ」と見ていい気分になることができます。琳派と言えば風神雷神図屏風ですが、それは俵屋宗達の作ということで、尾形光琳が影響を受けた人、ということになるようです。

一口に琳派と言っても描いた人や時代によっても随分違う感じなので、よくよく研究すればこの人は〇〇系統、あの人は〇〇風などと区分けしていくこともできると思います。というか日本画研究の人にとってはそういうのは常識の範疇なのかも知れません。時代によって変化するのが芸術ですし、芸術に取り組む人はどうしてもそれぞれに個性が出てきますので人物や時代によって違ってくるのは自然なことだと言っていいかも知れません。

近代以降の琳派の人物として神坂雪佳が紹介されています。アールヌーボーを学び、ジャポニズムに影響されたとのことなので、ヨーロッパの日本趣味の逆輸入みたいな感じになると思いますが、やはり、作風にはなんとなくモダンが漂う感じがします。金魚玉図の写実的なところとか、或いは立波の軽く抽象的な感じなんかも、なんとなくヨーロッパの香りがします。葛飾北斎の神奈川沖波裏がヨーロッパでオマージュされてデフォルメされて、それが神坂雪佳によってもう一回作り直されたような印象です。

絵を見るのは楽しいです。美術はど素人ですが、絵を見るのが好きですし、この手の画集があれば時々ぱらぱらっと開いてちょっとほっとする時間を持つことができます。画集ってありがたいです。この本は表紙もきれいで素敵だなあと思います。

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