中国映画『活きる』の中国人の自画像

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1940年代、さる大金持ちの息子が賭博にはまってしまい、財産を全て多分イカサマでとられてしまいます。アホな息子です。ただ、彼には一つだけ特技があり、それは影絵人形劇の裏方で歌うことです。日本で言えば文楽の語りをやる人みたいな感じです。生計を立てるため、彼は影絵人形劇キット一式を携えて旅の芸人をやります。その影絵がとても雅で、彼の歌いも迫力があり絵になります。身を持ち崩した彼は真摯に反省し、マジメになり、仕事に打ち込みます。

公演先で国民党軍に拉致されます。それまで清朝時代さながらの風景だったのが、突然近代が現れてくる雰囲気の変化は見事です。国民党軍に捕虜の同然の扱いであちこち連れまわされて、次は共産党軍の捕虜になり、身元は確かということで影絵の公演も好評で家に帰らせてもらえます。奥さんと二人の子どもがいます。上が女の子で下が男の子です。共産党政権が誕生し、彼の豪邸をイカサマで騙し取った男は反革命分子として処刑されます。もし賭博で家をとられていなかったら、主人公が処刑されいたかも知れません。禍福はあざなえる縄のごとしです。時代はやがて「大躍進」政策の時代を迎え、街中の金物が製鉄される最中、市民の士気を鼓舞するために彼はまた影絵の人形劇で人々を慰問します。下の男の子が自動車の事故で死んでしまいます。

やがて文革の時代を迎えます。上の女の子が結婚して出産します。文革時代なのでまともなお医者さんは追放されていて病院には子どもたちが医者を名乗っていますが実際には危機に対応できません。出産の時、生まれて来た男の子は無事でしたが、母体の出血が激しく亡くなってしまいます。

その男の子が少し大きくなった時、主人公の彼が男の子に「君が大きくなるころ、乗り物は牛ではなく飛行機や鉄道だ」と言って映画は終わります。

世界的にも高く評価されている映画だと思いますが、おそらく、中国人の心がうまく入っている映画なのではないかと思います。戦争と貧乏で苦労に苦労を重ね、子どもが死んでしまうという耐え難い悲劇にも遭うけれど、孫という希望がある。日本で言えば『おしん』です。戦争と貧乏を乗り越えて新しい時代を迎えるというお話しの流れが共感を呼び、僕のおばあちゃんも母親も食い入るようにおしんを観ていましたが、それはおしんが少し前の日本人の自画像を投影できる内容だったからだと私は理解しています。この映画も中国人にとってはそういう心境で観ることができる映画なのではないかなぁと思います。あるいは『火垂の墓』です。私はあの映画を観て、父親から聞かされた話と全く同じだと思って驚きました。

今は世界情勢がいろいろ微妙な上に変化が速く、中国が好きか嫌いかは別にして、中国人のことを知らなくてはいろいろ不便です。悪い面もたくさんありますが、こういう自画像を持っているんだということを知ることは意味があるように思います。時代を描くのなら、抗日戦争は入れないのかなあと若干の疑問は残りますが、この映画では抗日の要素は特に入れられていません。

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