共和党は何を間違えたのか‐トランプ氏を選んでしまった後悔は先に立たない

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トランプ氏が今年の大統領本選で勝利する可能性は極めて低いと言っていいと思います。私は誰にアメリカ大統領になってほしいという希望はありませんが、選挙の結果を分析したり、予想したりすることには興味があります。

今年、共和党は勝てません。これまでのある種の慣例で行けば、民主党と共和党が2期8年ごとに交代するのが普通とも言えるアメリカ大統領のポストですが、何がここまで共和党をぐだぐだにさせてしまったのでしょう。

トランプ氏は「make america great again」をスローガンにしていました。この「make america great again」という言葉は実は大事な部分が曖昧で、多くの人に誤解を与えてしまった可能性があるように思います。すなわち、「アメリカが偉大な状態」とはどのような状態なのかがはっきりせず、その大事な部分でコンセンサスを充分に得ていないまま、共和党はトランプ氏を選んでしまったように見えます。

「偉大なアメリカ」という場合、そこには二つの方向性があり得ます。1つはアメリカの世界的なプレゼンスの向上です。ジェブブッシュ氏はアメリカの軍事力を強化し、アサド大統領を抑え込み、シリア国内に難民キャンプを作ることでヨーロッパへの際限ない難民の流入に歯止めをかける、というようなことをテレビで話していました。わりと伝統的な共和党の発想で、アメリカの軍事力を強化する、即ち強いアメリカを世界にアピールするわけですから、東アジアの政情不安などについてもそういう姿勢で臨む、日本に対してもそういう方向性で影響力を及ぼすということがざっと見えるわけです。それが正しいのかどうかは別にして、定石通りともいえ、何を目指しているのかも分かりやすかったと言えます。強いアメリカというわけです。

「偉大なアメリカ」のもう一つの方向性は、アメリカ国民の生活水準を向上させるということです。民主党支持者にとって「アメリカンドリーム」とは、必ずしも大きな成功をしてニューヨークに自分の名前をつけたビルを建てるなどのようなことではありません。写真屋さんでも車の修理屋さんでも花屋さんでもいいので、自分のささやかな事業を持ち、その収入で庭付きの家を買うことができ、車もできれば二台くらい持つことができて、子どもたちの学費もねん出できる、そういう自分の半経数メートルの範囲での充実や幸福が正しい努力をすれば誰でも手に入れられるというのが、民主党支持者の望む「アメリカンドリーム」です。普通のアメリカ人として生まれ、きちんと教会に通い、愛する家族に最期は看取られる人生です。このような人生観を理想とする場合、通常「make america great again」のような言い方はしません。アメリカが世界的にプレゼンスを示すかどうかはあまり重要ではありません。それによってアメリカの富が増え、アメリカ人の生活が向上するというのなら別ですが、そうでなければわざわざ遠い外国の戦争に兵隊を送るなんてまっぴらご免とも言えます。

さて、トランプ氏の場合はどうだったでしょうか。トランプ氏は何度となく「make america great again」を連呼しました。多くの共和党支持者は、それを聴いた瞬間、おそらくは「ジェブブッシュ氏よりも、もっと派手に激しく遠慮なくやってくれるのではないか」と思ったのではないかという気がします。しかもおもしろいおじさんというおまけがついてくるので、共和党支持者の中で注目が集まりました。しかし、トランプ氏が訴えた内容は国内的には所得の再分配、国外的にはモンロー主義と、全く共和党的ではありません。トランプ氏は民主党から共和党に鞍替えした過去がありますが、彼が自分の頭で政策を考える時、民主党的な政策しか思い浮かばなかったのではないかと言う気がしてなりません。それでいて白人主義、男性主義、キリスト教主義の要素が濃厚なため、発言は共和党支持者の質の低い層と変わらないという、分裂した状態になっていたように見えます。

即ち、当初、共和党支持者の中には「make america great again」と聴いて、ジェブブッシュがやると言っていることをもっと派手におもしろおかしくやってくれるようだ、と期待する人が生まれ、民主党支持者の中には「所得の再分配をクリントンよりしっかりやってくれるのでは」と期待する人が生まれたと理解することができるように思います。

ここに来て、トランプ氏陣営が一挙にぐだぐだになった背景には、トランプ氏の言う「make america great again」が、自分たちが想像していたものとはちょっと違うようだということに共和党支持者の人たちが気づき始めた、あるいはようやく末端まで浸透してきたという面があり、充分にがっかりした挙句に、入ってくる情報は退役軍人に対する侮辱発言、赤ちゃんを抱いたお母さんを馬鹿にするような発言、実は金がない、陣営内の人事がうまくいかない、副大統領候補選びですらなんかしっくりしないというネガティブな内容のものばかりで、共和党のエスタブリッシュメントはやる気をなくしたかのように見えます。

ということは、即ち、トランプ氏旋風は最初から誤解に基づく間違いに起因してしまったのであり、要するに最初から間違いだったと言えると思います。もっと早い段階で有権者が気づいていれば、もうちょっとまともな本選になったかも知れないですが、もはや、おっちらけです。まだ八月だというのにおっちらけです。

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