中国映画『李蓮英』の西太后への忠誠と友情

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清朝末期、西太后によく仕えた『李蓮英』を主人公にしたに映画です。李蓮英の役をしているのは『鬼が来た!』で香川照之の世話をする中国人男性の役をしている人で、姜文という人です。『覇王別姫』でも重要な役で出ている人ですから、知る人ぞ知るというか、中国では知らない人のいないくらいの超有名大俳優ということになると思います。

西太后といえば嫌いな人は殺す、殺す、殺す。康有為と梁啓超が始めた変法運動に乗っかった光緒帝は幽閉する(そして多分、最後に殺している)。義和団の乱では自分が事を大きくしておいてやばくなったら逃げる。逃げる前に光緒帝の愛した珍妃は井戸に投げ捨てさせて殺す。北洋艦隊の予算で頤和園を作って日清戦争で負ける遠因を作るなど、いい印象は個人的には一切ありません。子どものころに観た『西太后』の影響もあると思います。『ラストエンペラー』でも最初の方に少しだけ出てきますが、こわいおばちゃんです。浅田次郎さんの『蒼穹の昴』では多少人間的な面も書かれてますが、結局は殺しまくったと最後に告白するので、とにかくとてつもなく悪い、絶対に関わり合いになりたくないおばさんというイメージが抜けません。映画の珍妃を井戸に投げ込ませるシーンとか、はっきり言ってトラウマになります。

ただ、この映画では恐ろしい人でありながらも、宦官の李蓮英との情の結びつきが描かれます。李蓮英は西太后に忠誠を尽くし、西太后は友情でそれに応えているという感じです。光緒帝が亡くなった次の日に西太后は亡くなりますが、この映画では李蓮英が西太后をおんぶし、彼の背中の上で最期の時をおだやかに迎えます。両者の情愛がよく描かれている映画です。うんと前に日本でも上映されたと思いますが、今はDVDも出ていないようで、日本ではほぼ忘れられた映画だと思います。

この映画が日本で紹介された時には「最後の宦官」みたいな副題(?)もついていたと思いますが、溥儀の時代に宦官をしていた人もいるし、他にも「最後の宦官」として本になった人もいるみたいなので、李蓮英を最後の宦官と認定するのはちょっと難しいかも知れません。ほぼ最後の宦官ならOKかも知れません。エドワードベアの『ラストエンペラー』によると、中国が共和制になった後も紫禁城には宦官が1000人くらい溥儀に仕えていて、改革を志向した溥儀が一旦全員追放しますが、全くいないと不便だということに気づき、50人ほど再雇用したとされています。1920年ごろに宦官は1000人いたとすれば、文化革命のころくらいまでは結構、元宦官だった人が生きていたのだろうなあと思います。『覇王別姫』でも清朝に仕えていた宦官のおじさんがやけになって遊び暮らして破産する様子が描かれます。そういう人って結構いたのかも知れません。彼らのことを考えるとなかなか気の毒に思えます。

宦官になるためには、そのための処置手術さえ受ければ誰でもなれるというわけではなくて、特定の地域出身者だけが宦官になれたと聞いたことがあります。信用できる人たちの地域が供給元になったということなのでしょう。なので、「立身出世のための最後の手段として」宦官になるというのは意外と作り話的なのではないかなあと思います。立身出世を目指すなら、科挙でしょう。

映画では老いた李蓮英が道で倒れて人生の最期を迎えます。辛亥革命のちょっと前に亡くなったらしいです。李蓮英には他殺説もあるそうですが、もし他殺だったとしたら理由はなんなんのかちょっと首を傾げたくなります。西太后が亡くなった後、紫禁城を退いて引退生活に入ってますから、すでに影響力もありません。珍妃の遺族に狙われたのでしょうか…。

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