香港映画『臨時同居 Temporary Family』の演技力と人生観

香港映画『臨時同居 Temporary Family』は、不動産売買で大金を得て人生を変えようとする人々のコメディ映画です。あまりによく出来ているので感動してしまいました。

主人公の男性は不動産業者で働いています。離婚歴がありますが、美しいCAの女性と交際するようになります。そしていよいよ結婚を申し込みますが「大きくて素敵なマンションに住めないとイヤ。一年待ってあげる」と言われてしまいます。男性にできることはただ一つ、有利な条件のマンションを買い、それを更に高値で売ることで、大金を得るしかありません。

男性には義理の娘さんがいます。前の奥さんの連れ子さんです。男性は自分の娘のように大切にしています。娘さんは自分が独立して暮らせるマンションがいます。更に同じ会社の部下に中国大陸の大金持ちの息子さんが社会勉強のつもり就職して来ています。彼はどんどん新しいことに挑戦したいと思っています。そこへ、離婚して多額の慰謝料を受け取ってそのお金で不動産を買いたい女性が現れます。この4人が共同で出資して、香港の眺めのいい素晴らしいマンションを購入します。それぞれに複雑な事情を抱えていて、それぞれに想いや願いがあります。これは投資用に買ったものですから、そこに住んで暮らしてはいけません。そんなことをしたらなかなか売れません。汚したら価値が下がります。ところがまず女性がそこに暮らし始めます。なんか馬鹿らしくなって4人ともそこで暮らし始めます。マンションは売れません。マンションを内覧する人が現れると慌てて掃除しますが間に合いません。無駄なものを一機に放り込める箱を次々と作り出し、本棚にはフェイクの本を置いて裏に無駄なものを収納できるようにし、内覧の客が来ると何事もなかったように、主人公の男性はセールスマンで残り四人は清掃などのスタッフのふりをしてその場をしのぎます。

小ネタがいろいろあって、それがうまくはまっているのでついつい笑ってしまいます。半分はネタを作る力です。半分は演技力だと思います。演技がうまいです。目の動きが上手いです。表情の作り方がうまいです。演技がうまいのでネタに切れが生まれています。香港映画はたくさんありますが、その中でも傑作に入るのではないかと個人的には思います。

さて、この映画の背景には人生観があります。それはお金と愛と自由のバランスです。お金がなければ自由な生活は送れません。しかし、お金のために働くいていては自由とは呼べないと考える人もいるでしょう。主人公の男性はお金で愛を買おうとしています。離婚した女性はお金がありますが愛がありません。それぞれに何かが足りません。

中華圏の人のお金に対する意識は極めてシビアで、実際に中華圏の人と話しているとその金銭感覚に驚くことが多いです。ですが、お金が生きるために必要なパワーだとすれば、中華圏の人の生きることへのアグレッシブさが金銭感覚に表れているのだと考えることもできます。人生をもっともっと充実させたいという彼らに乾きのようなものを感じることもあります。

この映画ではお金はもちろん大切だが、それ以上に自分が乾いていることに気づいているか?という問いかけがあります。お金にシビアな社会だからこそ、この問いが響くのかも知れません。香港映画で私が感動する映画はそんなにたくさんあるわけでもありません。ただ、この作品は充分に日本にも紹介される価値があると思いました。

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