ナポレオン戦争‐旧秩序の破壊者

フランス革命が発生した後、国政の実権はロベスピエールたちジャコバン派が政権を握ります。彼らがルイ16世を処刑した後、ヨーロッパ諸国が対フランス大同盟を組み、フランス包囲網が作られます。周辺諸国は当時はまだ君主制が普通ですから、フランス型共和制の理念が自国に及ぶことに強い懸念を持っていたはずですし、国王処刑というショッキングなできごとに対する人間的な怒りというものも感じていたかも知れません。このような国難に対し、ロベスピエールは粛清に次ぐ粛清ということで国内を引き締めることで対応しようとしますが、嫌疑があればすぐ断頭台という恐怖政治の手口は結果的には多くの政敵を作ることになり、彼は議会から追放され、市役所に逃げ込むも議会が「ロベスピエールに味方する者は法の保護を受けることはできない」と宣言したことで周囲から人が離れてゆき、ロベスピエールは自殺しようとするものの失敗してしまい、翌日には断頭台へと送られます。テルミドールのクーデターと呼ばれる事件です。ロベスピエール派たちが最後の晩餐をした場所が残っていますが、そこはマリーアントワネットが最後の日々を過ごしたのと同じ場所で、盛者必衰、諸行無常を感じざるを得ません。この時、一軍人だったナポレオンはロベスピエールのオーギュスタンと親交があることが危険視され、予備役編入されてしまいます。

ロベスピエール派を粛清した国民公会は絶対に自分たちが選挙に負けない法律を成立させたが、当時は国民公会の人気がなく、王党派も多く残っていたために暴動が起きます。ヴァンデミエールの反乱と言います。国民公会がナポレオンを起用したところ、散弾の大砲で王党派を蹴散らしてしまい、このことでナポレオンは再び表舞台に登場することになります。市民に向けて殺傷力の強い散弾の大砲を使うわけですから、そんじょそこらの人物とは訳が違います。勝てる方法が分かっているのなら、それをやるという、彼の単純かつ明快な論理がそこにあったのではないかと思います。

ロベスピエールが死のうと生きようと、フランスに対する外国からの脅威は消えていません。得に、マリーアントワネットの実家のハプスブルク家のオーストリアはかなりの敵意を燃やしています。国民公会はドイツとイタリアの方面に軍を送ってオーストリアを包囲する戦略をとりますが、ドイツ方面では苦戦したのに対し、イタリア方面の指揮を任されたナポレオンは連戦連勝で単独で講和まで勝ち取り、ここに第一次フランス包囲網は崩壊することになります。外交までやってしまうところに「躊躇しない」という彼の性格が良く出ているように思えます。

しかし、当時、イギリスが強敵としてまだ立ちはだかっていたのですが、ナポレオンはイギリス優位の理由をインドの領有にあると見て、中継点になっていたエジプト征服戦争に出かけます。実は戦争でナポレオンは苦戦を強いられ、兵を見捨てて徳川慶喜ばりに側近だけを連れて脱出し、フランスへ帰還します。そしてブリュメールのクーデターを起こし、フランス政治の実権を握るわけです。帰還したナポレオンは国民から歓喜で迎えられたと言われていますが、残された兵たちが帰還してくればナポレオンの敵前逃亡がばれてしまうため、その前に手を打ったと思えなくもありません。

国際社会は再びフランス包囲の大同盟を組んでフランスを圧迫しようとしますが、ナポレオンがオーストリア軍に大勝利し、あっけなくこの大同盟は瓦解します。1804年、ナポレオンはなんと国民投票によって皇帝に選ばれ、しかもそれはナポレオンの子孫が皇帝の地位を世襲するという内容のもので、そんなことが投票によって可能になるとは目に見えない力がナポレオンを後押ししていたのではないか、神が彼に肩入れしていたのではないかとすら思えてきます。

当時、イギリスとオーストリアが気脈を通じ合っており、またしてもフランス包囲網が形成されます。ナポレオンはオーストリア及び
神聖ローマ帝国連合を東正面に、西正面には大英帝国という難しい局面に於かれた上、イギリス上陸を目指して行われたトラファルガーの戦いではイギリスのネルソンの艦隊にフランス艦隊が破られるという大きい失点をしてしまいます。反対に、東正面ではアウステルリッツの戦いで、神聖ローマ帝国及びロシア皇帝の同盟軍を破り、神聖ローマ帝国は解散・消滅の運命を辿ることになりました。フランスにとってはハプスブルクこそ主敵であり、ハプスブルクの権威の象徴である神聖ローマ皇帝を消滅させたことは、かなり大きな意味を持ったかも知れません。

ナポレオンはブルボン王朝の人間をスペイン王から外し、弟をオランダ王に即位させ(フェートン号事件の要因になった)、ベルリンまで兵を送りプロイセン王は更に東へ脱出し、ナポレオンはヨーロッパ内陸部の主要な地域をその支配下に置きます。スペインにはブルボン朝の王がいましたが、それも自分の兄に交代させています。ナポレオン大帝国の完成です。ナポレオンはイギリスを主敵とするようになり、トラファルガーの戦いの怨念もありますから、大陸封鎖令を出してイギリスに商品が入らないように工作し始めます。島国イギリスを兵糧攻めにするというわけですが、ロシア帝国はイギリスへの小麦の輸出は経済的に是非とも続けたいことであり、ナポレオンにばれないようにイギリスへの輸出を続けます。これを知ったナポレオンがロシア遠征を決意し、ここが運命の別れ道となってしまいます。

ナポレオン軍はモスクワ占領までは漕ぎつけますが、ロシア側は焦土作戦で対抗します。こういう場合は持ってる土地が広い方が有利です。ロシア政府政府からの講和の要請は待てど暮らせど届きません。トルストイの『戦争と平和』でも見せ場と言っていい場面です。広大なロシアを延々と東征することは現実問題として不可能であり、しかも冬が到来すればフランス兵がバタバタと死んでいくことは明白で、ナポレオンは冬の到来の直前に撤退を決意しますが、撤退戦は戦いの中でも特に危険なもので、コサック兵の追撃を受ける破目になり、出征時60万人いたナポレオン軍の兵士で帰還できたのは僅かに5000人だったと言います。ほぼ完全に全滅、太平洋戦争のレイテ戦以上に酷い有様となってしまったと言えます。

新たなフランス大同盟が迫り、遂にパリは陥落し、フォンテーヌブローでナポレオンは退位させられます。彼は地中海のエルバ島に追放され、国際社会はナポレオン後の秩序構築のためにウイーン会議を開き、タレーランが「ナポレオン以前の状態に戻ればいいじゃあありませんか、あっはっは」とルイ18世の王政復古を議題に上げ、フランスが敗戦国かどうかよく分からないようにしてしまい、「悪いのはナポレオンですよね」で乗り切ろうとします。

ところがナポレオンがエルバ島から脱出。パリに入って復位を宣言します。ヨーロッパ諸国はナポレオンの復位を認めず、フランスを袋のネズミにするように各地から進軍が始まり、有名なワーテルローの戦いでナポレオン軍はほぼ完全に破壊され、彼は海上からの脱出も図りますが、世界最強の英艦隊に封鎖され、遂に降伏。大西洋の絶海の孤島であるセント・ヘレナへ流されて、そこで側近たちとともに面白くもなんともない生活を送り最期を迎えます。晩年のナポレオンはあまりにもお腹がでっぱり過ぎていたことから肝硬変が腹水が溜まっていたのではないかとする病死説と、フランスに送り返されたナポレオンの遺体がまるで生きているかのような状態だったことから、ヒ素による毒殺説までいろいろあり、今となっては分かりません。ナポレオンの棺は今も保存されており、巨大な棺の中で彼は今も眠っているはずですが、敢えて蓋を開いて調べようとする人もいないようです。

そのような墓暴きみたいなことがされないのは、今も畏敬の念を持たれていることの証であるとも思えますし、ワーテルローで降伏した後、裁判にかけられて処刑されてもおかしくないのに、絶海の孤島に島流しで済んだというのはナポレオンの強運が普通ではないということの証明なのかも知れないとも思えます。

振り返ってみれば、ナポレオンは暴れるだけ暴れて、果たして何を残したのか…という疑問はありますが、神聖ローマ帝国の消滅は、ハプスブルク家の凋落を目に見える形で示したものであったとも言えますから、少し長い目で見れば、ヨーロッパ秩序を大きく変えたということは言えるように思います。秩序を破壊する人と新秩序を構築する人は別の人、というのが普通なのかも知れません。


安倍首相は現段階で解散を打ちたくても打てないように見える件

政治的なイベント、または外交的なイベントがあれば、すぐに解散説が出てきます。たとえば、森友学園問題では、証人喚問の終わり、出るべき話はだいたい出尽くした感があり、これを境に解散か?というような観測もなかったわけではありません。内閣支持率は概ね好調で、森友学園問題で騒ぎになってからは少しは下がりましたが、現状では回復が見られます。尤も、森友以前までほどには回復していませんから、同じやるなら今の時期は外してもう少し様子が見たいというところはあるはずです。

外交で得点して解散への流れを作りたいと安倍首相が考えていたことはまず間違いないと思いますが、プーチン訪日は実際的には空振りみたいなもので、北方領土で一機にという感じではなくなってきました。また、北朝鮮で開戦前夜(?)の空気が漂う現在、邦人保護の観点からみても米韓合同軍事演習が終わるまではとても解散している場合ではありません。外交的にはこつこつと小さく積み重ねてきた点は正当に評価されるべきと思いますから、概ね高い支持率はそのことも反映しているかも知れないですが、前回のように大きく勝てるという見込みが立つほどの感じでもなし…。というところではないかと思えます。

経済に関しては、金融緩和がそれなりに効果を上げていると思える一方で、日銀頼みの感が強く、もう一歩、抜け切れていない様子であり、失業率が史上最低レベルにまで下がったという事実は正当に評価されるべきと思いますが、21世紀バブル、21世紀元禄という感じにはほど遠く、長い目で見ると悲観したくなる材料が山積みですので、選挙で大勝利の確信を立てられるところまで来ているとも言い難いところがあります。個人消費は伸びておらず、明らかに消費税の増税の影響を引きずっていると思えますから、長い目で見るとずるずると衰退していきそうにも思えてしまい、なんとかしてくれ…。とついつい思ってしまいます。せめて東芝が救済されれば、ちょっとは明るいニュースになるようにも思うのですが、外資に買われる可能性の方が高いように思え、どうしてもぱっとした感じにはなりません。リフレ派の論客の片岡剛士さんが日銀の審査委員に就任する見込みですので、黒田総裁就任以降のリフレ政策は維持される、或いは更に深堀りしていくことが予想できますが、日銀頼みになってしまっているところが軛のようになっているとも思えますから、もう少し明るい材料がほしいところです。

しかし、安倍さんが憂慮する最大の要因は自民党の若手の議員の人たちが枕を並べて討ち死にする可能性が高いというところにあるそうです。確かに育児休暇をとると言っておきながら、不倫をしていた国会議員、重婚疑惑の国会議員など、たるんだ感じのスキャンダルが多く、20世紀型の大金を集めていたとかの話に比べれば小粒なスキャンダルとも言えますが、小粒なのに品がないという関係者であれば絶望したくなるような話題が目立っており、党の執行部であれば「このメンバーでは戦えない。外交で得点して何とか、粗を隠せないか…」という心境になるのではないかと想像できます。

2017年秋の解散説がありましたが、最近では2018年解散説まで出ています。勝てる目算が立つまではぎりぎりまで待つというわけです。追い込まれ解散になる可能性もあるけれど、それまでにいいニュースを発信できるかどうかということに賭るということらしいです。

自民党の支持率は4割近くあり、小選挙区中心の日本の選挙制度から考えれば上々と言えますし、民進党の支持率は全く上がらないというか、下がり気味であり、通常であれば自民党は楽勝とも言えますが、最近は当日になって誰に投票するかを決める人も多く、そのあたりの有権者の気まぐれの恐ろしさをよく知っているからこそ、メンバーのたるみを危惧していると言えそうです。小池百合子さんが手駒をどれくらい揃えてくるかによって今後の流れは変わってきますから、そういう意味では東京都議会選挙には注目せざるを得ません。ただし、小池さんは最終的には自民党と組む形で、細川護熙さんの時のように、少数与党ながら首班指名を勝ち取るというあたりを狙っていると思われるものの、自民党は正解遊泳型の政治家を絶対に認めないという空気も持っていますので、そのようなある種の伝統を小池さんが打ち破るかどうかは見届けたいところです。豊洲移転問題のもたつき、東京オリンピックの準備のもたつきが指摘される中、小池さんの演説力で乗り越えるのかどうかは日本の政治の将来を占う重要な材料になるように思えます。

最後に、安倍さんにとって恐るべしは小沢一郎さんかも知れません。前回の衆議院選挙でも、東北地方では自民圧勝という結果を得ることができず、小沢一郎王国が奥州藤原氏の如き強靭さを持っていることをうかがい知ることができましたが、解散時期が遅くなればなるほど、小沢さんに合従連衡の時間を与えることになります。小沢さんは党名を自由党というかつての政党名に戻しており、そこに心境の変化、心構えを見ることができます。

安倍さんとしては憲法改正可能な議席を維持したいという思いがあるでしょうけれど、上に述べたような各種不安要素を並べてみると、次も前回と同じだけの議席を確保できる見通しは必ずしも高いわけではなく、仮に現状に大きな変化が生まれないまま解散総選挙ということになれば、憲法改正はあきらめざるを得ないという結論にも至りかねません。私個人は無理をして憲法改正をする必要はないと思っていますから、3分の2以上の議席をとれるかどうかにはあまり関心はないのですが、憲法よりもまずは経済で、消費税の据え置き、できれば減税、可能なら撤廃(日本は一挙にバブル期なみの好況に恵まれることになると思います)で選挙をやってもらえないものだろうかと願う次第です。

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トルストイ『戦争と平和』とナウシカ

トルストイの『戦争と平和』は、ナポレオン戦争を背景に、ロシアの貴族から農民に至るまでの幅広い人々の人生、愛、嫉妬、欲望、寛容、赦し、絶望と希望を描いた大作としてよく知られています。

ロシアがナポレオンとの講和要件を反故にしたことで、ナポレオンは大軍を擁してロシア域内に進軍しますが、補給が思うようにはかどらず、ナポレオン軍は次第に衰退していきます。ベルリン、ワルシャワ、モスクワあたりは何にもない大平原が延々と続くようなエリアで、馬で走れば結構早く移動できるらしいのですが、馬の速度に補給が追い付かず、モスクワを目指す征服者はどうしても補給で苦しむと言われています。ナポレオンしかり、アドルフヒトラーしかりといったところでしょうか。

ロシア軍が戦略的に撤退することで、ナポレオンはモスクワ入城を果たしますが、ロシア側の焦土作戦によりフランス軍は更に衰弱し、補給が届かないまま冬を迎えることを恐れたナポレオンは撤退します。これを境にナポレオンは転落への運命を辿っていくことになりますので、彼の人生を考えると、天才とは運であるとしみじみ思はざるを得ません。ナチスドイツの場合、モスクワ入城には届きませんでしたが、スターリングラード戦では、ドイツ軍はソ連軍の戦略的撤退に引き込まれるようにしてスターリングラード入城を果たし、包囲され、事実上の全滅へと追い込まれていきます。ロシアはその広大な領土が強みであり、ちょっとぐらい相手に譲っても、最終的にはへばらせて勝つという肉を切らせて骨を断つ戦略が可能な国であると言えます。

『戦争と平和』はこういう壮大なスケールの話に人間の心の機微を乗せるという神業をしているわけですが、この作品を読んで風の谷のナウシカを想起しないわけにはいきません。風の谷のナウシカの漫画版では、ナポレオン戦争よろしくトルメキア軍がドルク帝国域内に深く侵入し、聖都シュワを目指しますが、進軍する過程で激しく消耗し、兵隊の数はみるみる減っていきます。またドルク帝国側は蟲を用いた焦土作戦で国土を犠牲にしながら敵を消耗させるという、なかなかやぶれかぶれな戦略で対抗しますが、この構図はナポレオン戦争を想起しない方が無理と思えるほど酷似しているように思えます。もちろん宮崎駿さんのことですから、意図的に意識してそうしているに違いありません。

戦場で無償の愛の行為を実践し、悩み傷つくナウシカの姿に大きな感動を得る人は多いと思いますが、漫画版ナウシカもトルストイなみにスケールの大きな話と人の心の機微、生きる意味、死ぬ意味、幸せとは何かみたいなことをいろいろと考えさせてくれますので、21世紀に生きる我々は、幸いに両方読むことができますから、是非、現代人両方読むべきなどと思ってしまいます。

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クシャナの後ろ姿

トランプ大統領は移民制限で危ない橋を渡っている

トランプ大統領が、自分の裁量でやれる大統領令なるものを濫発し、その中にはメキシコとの国境の壁建設や特定の属性の人の移民制限などを含んでおり、TPPからの離脱は賛否あれ、まあ、政治判断と言えますが、それ以外の部分ではやはりちょっとヤバいのではないかという気がしてきます。

この大統領令に則り、数百人の人が空港で足止めをされたということなのですが、そんなことをして大丈夫か…人間性に対する重大な挑戦となってしまわないのか…と見ている側も心配になってきます。イスラム圏でのトランプさんへの不評はもとより、メキシコでもアメリカ製品の不買運動が起きているらしく、そのうえ、これは関係ないかも知れないですが、パナソニックの掃除機部門がアメリカから撤退するという話まで出ています。

もし、人口の比率のようなものを考えた場合、空港で足止めされた人の数は、母数に対して決して大きい比率を占めることはありません。しかし、その事実によって自尊心を傷つけられる人の数10億人を超えるものになるはずです。その人たちがトランプ大統領とアメリカに対して遺恨を持つという流れになっていますので、事態は想像するよりも遥かに深刻なものだと言えるかも知れません。

ソクーロフ監督は昭和天皇を描いた『太陽』で、日本人がアメリカと戦争することを決心した理由の一つに排日移民法があったと示唆しています。これは『昭和天皇独白録』をその根拠にしていると思われます。日本人でアメリカに移民したいと思っていた人は日本の総人口と比べれば決して多数ではありません。ほんのごく一部と言っていいかも知れません。しかし、自尊心を傷つけられたという無念さのようなものは、日本社会で共有されたと見てもいいように思えます。日本がアメリカと戦争したことが正しいとは思いませんが、自尊心を傷つけられるというのは、戦争を決心させる大きな要素だということは否定できないのではないかと思えます。

まさかこれですぐに新しい戦争が起きるとは思いませんし、今までも散々戦争が行われてきたことを思えば、戦争なんかやってほしくないですが、戦争はどちらか一方が決心すれば起きるということを考えれば(また、正規軍が交戦するという要件が現代は必要ないことも合わせて考えると)、トランプさんは実は危ない橋を渡っているのではないかという気がしてこなくもありません。

トランプさんの外交姿勢はまず絶対にぶれないものとして親イスラエルがあります。そのことに特に文句はありません。アメリカにはアメリカの事情があるでしょう。プーチンさんに接近する理由としては、ロシアと仲良く中東を分け合って、イスラエルの安定を目指すというシナリオがあるのかも知れません。その場合、アサドさんが追放されるのか、亡命するのか、それともちゃっかり居座るのかは分かりません。中国・台湾のことは有体に言えばどうでもいいと思っているはずで、日本には「応分の負担」を求めるものと推察します。一方で、トランプさんのスタッフには反ロシア、反中国の人が顔を揃えてさおり、はっきり言えばわりとバラバラというか、チームとしての体をなしているかどうかすら疑問に思えなくもありません。

トランプさんの大統領就任前は世界はあっけにとられつつ、その去就を見守るという印象でしたが、今はかなりはっきりとアゲインストの風が吹いているように思えます。トランプさんとしては中間選挙で勝たなくては再選まで行けないという思いがあるでしょうから、元々の支持者に応えつつ、アゲインストの風に対応することが迫られるわけですが、現状のところ、あまりいい知恵を持っているわけでもなさそうに見えます。私がヒラリークリントンさんだとすれば次の大統領選挙を目指して準備を始めると思います。中間選挙で勝てなさそうな場合、議会もトランプさんには嚙みつくでしょうから、予算を人質に取られるうえに重要な法律がそもそも提出できないという事態も起きないとは言えません。

世の中とにかくトランプ、トランプで、ちょっとトランプの話題はやりたくないとも思っていたのですが、どうも、注視せざるを得ないようです。

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Russia TodayとTPP

最近はチェックしなくなったのですが、Russia Todayというネットワークニュースをよく見ていた時期がありました。アンカーの英語も完璧で聞き取りやすく、やっぱりよく狙ったもので目の覚めるような美人が元気よくニュース解説をするので、ついつい見てしまうという感じでした。youtubeでのコメント欄にも「かわいい」「今日も素敵だ」などの書き込みが多く、世界のおっさんたちをぞっこんさせてしまう、太平洋戦争の時の東京ローズみたいになっています。事実上、voice of russiaみたいな役割を背負っていると見て良く、ロシアが世界情勢に対してどういう視点を持っているかということを知るのにちょうど良く、ロシア事情について私は全然明るくありませんが、ロシアが何にどう出るかということには関心はあります。

さて、私が以前、よく見ていたころは、トランプ大統領の誕生などということについては微塵も予想させない時期で、「オバマ氏がTPPに本気らしいよ」という感じのことをよく話題として取り上げていました。もちろん、前向きな報道ではなく、アメリカ国内に於ける反対運動、結果としては日本の自動車部品がアメリカを席捲してアメリカ人の職を奪うことになるのではという見方など、TPPなんて全然良くないぜ、というスタンスのものが多かったように記憶しています。

日米関係についても「日本の憲法を書いたのはアメリカ人だ」みたいなことをさらっと言いのけていて、それはその通りなのですが、あまりにさらっと言いのけることにおーっと驚いたりしていたものです。

さて、TPPは事実上ご破算になることは大体はっきりしている昨今と思いますが、ロシアのような国から見ると、日本とアメリカで楽しく仲良く経済発展を享受しようとしているように見えていたらしいということが、Russia Todayの報道からよく分かってきます。そういう意味では実はTPPはやったほうがよかったのでは?と思えなくもない反面ISD条項が実際にはどう活用されていくかがよく分からないという不安もあって、ご破算になって難しいことを考えずに済んでよかったという思いもあります。

個人的にはヒラリーさんが「日本に譲歩し過ぎたTPPの交渉を見直す」という発言からも感じ取れるように、日本は交渉でわりと勝てた要素が多かったはずで、安倍首相がTPPがご破算になると分かった上でも関連法案を通したというのも、既成事実を積み重ねることでアメリカから余計なことを言われないようにするという意図があったのではないかと思えます。

まあ、いずれにせよTPPは事実上過去のものですので、今後は日米FTAということになるのでしょうけれど、ISD条項さえなければ個人的には自由貿易大賛成ですので、その辺りも今後を見守りたいと思います。

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北方領土は還ってこなかった件

ロシアのプーチン大統領の訪日は、肩透かしといえば肩透かし、進展があったと言えば進展があったとも言える、なんとも微妙な感じのものでした。ただし、個人的には「北方領土ではこれまでにない新しい体制で経済協力を行う」ということになったのは、蟻の開けた穴がいずれはダムをも崩壊させるのと同じような効果をもたらすのではないかとも思えます。

プーチンさんは訪日のしばらく前から北方領土の返還については否定的な発言が目立つようになり、一方で経済協力については大変に熱心であるととれる発言も多かったわけですが、どこにどんな裏が仕込まれているのかと多くの人が腹の内を探ったと思いますが、結果としては事前に出していたメッセージはまさしくそのまんまだったと言え、案外、裏を探る必要もないのかも知れません。

プーチンさんとしては鰻の香りだけかがせて銭を取りたいと思っていたように思えますが、北方領土は別の新しい枠組みということに同意したということは、将来、鰻の本体を食べられる可能性を日本に残したとも言え、そこはあまり悲観的にならずに、日本の得点になったと評価していいのかも知れません。

北方領土の開発が新しい体制・枠組みで行われるということは、ロシア側が暗黙裡に領土問題の存在を認めているということを、今後の開発過程で常にはっきりさせられるということでもありますから、長い目で見れば、還ってくる可能性を感じさせてくれるものだとも言えます。

あまり大きな予断を持つわけには行きませんが、北方領土の地域がジャパンマネー抜きでやっていけないところまで影響力を発揮することができるようになれば、そのこと自体が交渉カードになるとも言えます。もっとも、それこそサラミスライス戦略でゆっくりじっくりじわじわと一進一退しながら交渉が続いていくということにもなりますので、なかなかしんどい、我慢強さを要求される作業になっていくのだろうと想像できます。担当する人は相当に苦労することと察してしまいます。

さて、現状、ロシアは西側からの経済制裁の対象になっている一方で、ドナルドトランプ次期アメリカ大統領はプーチン氏に親近感を持っているとも言われています。今後、どっちに転んでどうなるのかさっぱり見当がつきませんが、もしかするとポスト冷戦構造が終わっていくき、ヤルタ体制ともマルタ体制とも違う、新時代が始まるかも知れないとも思えます。

一部では日米露同盟みたいなことを言う人もいるみたいです。そんなことが実現したら世界史の教科書を書き直させる凄い展開だとも思えます。今後の注目点としては、ドナルドトランプさんが就任後にロシアに対してどう出るか、シリアに対する出方と連動するでしょうから、その辺りを注意してウオッチしたいと思います。

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プーチンには北方領土を還すつもりがなさそうに見える件

クリミア侵攻以来、西側からハブられて孤立気味のプーチンさんが来日することで、これは北方領土が還ってくるのかと一時は色めき立つ雰囲気も出ていましたが、安倍さんとプーチンさんとのペルーでの会談の様子では、プーチンさんにはどうも北方領土を還すつもりはそもそもなく、鰻の香りで銭を取ろうとという腹が見え隠れしていたようです。

安倍首相がぶら下がりで記者に話した内容によると「道は見えてはきたが乗り越えなくてはいけない山がいくつもある」とのことらしいので、ロシア側からかなり険しい道のりになることを示唆されたのではないかと思えます。プーチン大統領は安倍首相に「ロシアの国内事情について説明した」らしく、民主国家の必殺技とも言える「国内世論」を盾に経済協力だけを進めて「北方領土のことは忘れましょ♪」と言っているに等しいようにも思えます。ロシアも建前上は民主国家ですので、ソ連時代をよく知っているプーチンさんとしては「民主主義にはこんな便利な言い回しがあるのか」と民主主義の使い勝手の良さを実感しているかも知れません。

交渉の詳しい内容については知る由もないですが、日本側に対して北方領土の共同開発という大義名分で出せるものは何でも吐き出させて国境線の画定については先送りというのがやはりロシアの狙いのように感じられます。双方の立ち回り方次第ですが、ロシアとしては北方領土を打ち出の小槌にしたいというか、今を機にそうしてやろうというのが本音ではなかろうかと思えます。橋下龍太郎さんとエリツインさんとの川奈会談と同じ結果に終わる可能性大かも知れません。共同声明は出されるでしょうけれど、玉虫色で一読しただけでは何を言いたのかはっきりせず、よーく読んでみると北方領土が還ってくる見込みはないのだという内容になることをついつい想像してしまいます。

既にロシア関連株に買いが入り、関連した経済人の動きもあるようですから、北方領土への投資話を溶かしてしまうわけにもいかず、安倍さん的にはかえって始末悪いという状態になっているかも知れません。

安倍政権は現状安泰と言ってもいいくらいですが、年が明ければ来年のいずれかの段階で解散総選挙を打たないと、その次の年まで持ち越せば「追い込まれ」解散に陥りかねません。経済では打てる手を打って、日銀でいろいろやってもらって現状になっていますので、短期的にこれ以上何かを望めることもなさそうなので、外交で成果を挙げたいと考えていらっしゃるはずですが、これは場合によっては来年で安倍政権の命運尽きるということも想定した方がいいのではないかと思えなくもありません。追い込まれずに解散するには来年の秋ごろがタイムリミットと思えますが、その時に有権者に何を訴えるか、安倍さんとしては悩ましく思っているかも知れません。拉致問題の解決はどうなったのでしょうか…。

その場合、次の内閣では延期した消費税の増税については「前に決まったことだから」という名分でベルトコンベア式に増税されて消費の落ち込み、経済の冷え込み、東京オリンピックの実態を伴わないバブル、2020年以降奈落の底。という最悪の流れも見えてこないわけではありません。

んー。外交で進展しないのであれば、せめて消費税の増税を永久凍結、できれば5パーセントまで下げるという公約でパーッとやってもらえないものでしょうか。

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寺内正毅内閣

第二次大隈重信内閣が総辞職した後、長州閥で陸軍大臣や朝鮮総督を経験した寺内正毅が首相に就任します。戊辰戦争、西南戦争に従軍したなかなかの古強者で、山県有朋が強く推薦したと言われています。間に大隈重信が入っているものの、その前が薩摩閥で海軍大臣を経験した山本権兵衛が政権を担当していましたので、長州・陸軍と薩摩・海軍の政権の回り持ちがまだ生きていたことが分かります。

寺内正毅内閣は議会におもねらない「超然内閣」で、結果として議会の協力を得ることが難しく、内閣不信任案の提出もあり、衆議院の解散総選挙が行われています。選挙の結果では政友会が第一党を確保し、寺内内閣に協力する立場に立ったため国内政局は一応安定しますが、第一次世界大戦の真っ最中で、寺内は軍閥で割れていた中国に手を突っ込み、北京の段祺瑞政権に肩入れします。あんまりそういうことをすると痛い目に遭うことは戦後を生きる我々の視点からすれば、あまりいいことではないようにしか思えないのですが、日本が一歩一歩、中国大陸に深く足を踏み入れて行って抜くに抜けない泥沼になっていく様子が少しずつ見えて来ると言えなくもありません。

1917年にロシアでレーニンの10月革命が起き、寺内正毅はシベリア出兵を検討し始めます。その結果、米不足が起きるのではないかという不安が国民に広がり、米騒動へと発展し、その混乱の責任をとって寺内は辞任し、大正デモクラシーの本番とも言える原敬内閣が登場することになります。

寺内正毅は首相の座を降りた後、ほどなく病没してしまいますが、やはり政治家というのは精神的にきついのだろうなあと想像せざるを得ません。特に、明治憲法下では議会に勢力を持たない人物が往々に首相に指名されるため、議会運営でわりと簡単に行き詰まってしまうというのが目についてしまいます。寺内内閣では寺内さんご本人が陸軍出身の人であることと、軍部大臣現役武官制の縛りがなかったことで、そっちの方面ではあまり苦労はなかったと思いますが、明治憲法下では議会対策と軍部対策の両方で内閣が苦労するというのがほとんど常態と言ってもいいかも知れません。

その後、日本の政治は原敬、犬養毅のような政党人、田中義一、山本権兵衛のような軍人、清浦奎吾のような官僚系の人々の間で権力の奪い合いゲームが行われ、やがて民主政治に結構失望してしまった西園寺公望が手塩にかけて育てた運命の近衛内閣が登場することにより、挙国一致して滅亡する方向へと向かっていくことになります。

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日露戦争をざっくりがっつりと語る

日清戦争によって日本は「やったー!朝鮮半島は日本の勢力下だ!」と一瞬湧きましたが、三国干渉で遼東半島の租借は諦めなくてはいけなくなります。李王朝の高宗と閔妃は清があまり頼りにならないということが分かると、親ロシアへと傾いていきます。朝鮮宮廷内で身の安全が確保できないと感じるとロシア公使館に避難してそこで政治を行ったりするようになります。

ロシア公使館から夫妻が戻ると、日本の兵隊やゴロツキみたいなのが集団になって朝鮮王宮に乱入し、閔妃を殺害するという常識ではとても考えられない事件が起きます。背後に在朝鮮公使の三浦梧楼がいたと言われています。当時は閔妃と大院君が本気の殺し合いをしていたので、日本軍を手引きしたのが大院君ではなかったかという説もあるようです。まず第一に日本の兵隊は閔妃の顔を知らないので女官に紛れると誰が閔妃なのか分かりません。閔妃の写真とされるものがあったという説もありますが、過去に閔妃の写真であったと言われていたものほは現在では別人のものだとも考えられるようになっており、大院君の手引きがなければ閔妃の殺害は難しかったのではないかということらしいです。いたましい事件であることは間違いありませんので、あんまり適当なことは言えませんが、いずれにせよ閔妃は亡くなってしまい、朝鮮の親ロシア派の勢力が大きく打撃を受けることになります。

ロシアは朝鮮半島各地に軍事拠点を作り始め、李鴻章を抱き込んで露清鉄道を建設し、大連まで引き込んでくるということになり、シベリア鉄道の複線化工事にも着手され、それらの鉄道網が完成すればヨーロッパからいくらでも兵隊と武器を運べるようになりますので、こうなっては日本は手出しができなくなるとの焦りが日本側に生じます。

小村寿太郎がイギリスと話をつけて日英同盟を結びます。これはどちらかの国がどこかの国と戦争になった場合は中立を守るという、「同盟」と呼ぶわりにはパンチ力に欠ける内容で、日本とロシアが戦争することを前提に、イギリスはロシアと戦争しなくてすむという免責事項みたいなものですが、日本とイギリスが同盟関係にあるということは有形無形に日露戦争で優位に働きます。

日本とロシアの交渉で、北緯39度を境に朝鮮半島を日本とロシアで分け合うという提案がされますが、ロシア側は難色を示します。ニコライ二世が皇太子時代に日本を訪問した際に巡査に殺されそうになったことで、日本嫌いが強かったという説もありますが、開戦ぎりぎり直前にニコライ二世から明治天皇に宛てて譲歩の意思を示す親書を送るはずが極東総督が握りつぶしたという話もあり、ちょっとはっきりしません。

戦争はまず日本側が旅順のロシア旅順艦隊に砲撃を浴びせるという形で始まります。児玉源太郎は朝鮮半島に上陸した後に北進して満州にいたクロパトキン軍を全滅させてヨーロッパから援軍が来る前に講和に持ち込むという構想を持っていたようですが、想定外の難題が持ち上がります。

日本の連合艦隊が旅順港を包囲していましたが、ヨーロッパからロシアバルチック艦隊が出撃し、半年くらいで日本まで攻めて来るということになり、連合艦隊は旅順艦隊とバルチック艦隊の挟み撃ちに遭う恐れが生じ、早期に旅順艦隊を叩きたいのだけれど旅順艦隊は旅順港に閉じこもって出て来ない、日清戦争の時に北洋艦隊の母港を陸戦で攻略したのを同じように旅順を攻略してほしいと言う話が湧いて出ます。連合艦隊が挟み撃ちに遭って全滅したら、対馬海峡の制海権がロシア側に移りますので、兵站が途切れてしまい、大陸の日本軍は立ち枯れして日本終了のお知らせになってしまいます。ちなみに清は局外中立を宣言し、好きにしてくれわしゃ知らんという立場を採ります。

ロシアは旅順港を取り巻く山々に堅固なコンクリートの要塞を築いていましたが、児玉源太郎は別に放っておけばいいと思っていて、旅順要塞の攻略をあまり重視しておらず、乃木希典の第三軍を送り込んだものの「突撃でばーっとやったら旅順要塞も陥落するだろう」という甘い考えで対処します。

気の毒なのは乃木希典の方で、コンクリートと機関銃でがちがちに固めてあるところに「突撃でばーっとやって、何とかしろ」と言われたのでその通りにやってみたら大量に戦死者が出るという展開になってしまいます。普通に考えてそれは無理というもので、司馬遼太郎さんは乃木希典が無能だったからだという観点から『坂の上の雲』を描きましたが、私は乃木希典が悪いというよりも「突撃でばーっとやれ」と言った児玉源太郎の方に問題があるのではないかというように私には思えます。

旅順要塞そのものを獲れるかどうかは戦略的な観点からははっきり言えばどちらでもよく、どこか一か所でもいいから旅順港が見える高台を奪取して砲撃で旅順艦隊を撃滅するのがいいということが分かって来たので、乃木希典の第三軍は旅順港を望見できる203高地に攻撃の軸足を変えます。ここもなかなか手ごわいですが、内地から送られてきた巨大な大砲でバンバン撃ち込みながら兵隊もどんどん突撃させて、味方の弾で兵隊がちょっとぐらい死んでもいいという無慈悲な作戦では203高地はようやく陥落。旅順艦隊を砲撃して同艦隊は全滅します。連合艦隊はこれで安心して佐世保に帰り、艦隊をきちんと修理してバルチック艦隊との決戦に臨むことになります。

次の問題はバルチック艦隊がどのルートで来るのかよくわからないということで、対馬海峡ルート、津軽海峡ルート、宗谷海峡ルートが想定され、討ち漏らしたら大変だと秋山真之参謀はのたうち回るように悩み抜きますが、バルチック艦隊のような巨大な船の集団が安全に通ろうと思えば充分な深さと幅のある対馬海峡を選ぶに違いなく、ここは東郷平八郎長官の見立てが正しかったと思えます。

有名な日本海海戦は秋山参謀の考えた丁字作戦でバルチック艦隊を全滅させたということになっていますが、最近の研究ではどうもぐねぐねに回りこんだりしていたようです。いずれにせよ稀に見る圧勝で海の方は心配なくなります。

陸の方では奉天の会戦でクロパトキンのロシア軍が北へと撤退します。日本が勝ったというよりもクロパトキン的には日本をどんどん北へおびきよせて兵站を疲れさせるという作戦で、日本軍が疲れ切るころにはヨーロッパからも兵隊がどっさり来て日本軍全滅でやっぱり日本終了のお知らせになるという予定でしたし、実際、奉天会戦で日本軍は疲れ切り大砲の弾もろくに残っていないという状態になってしまいます。

弾がないということがバレる前に何とか講和しないと、繰り返しになりますが日本終了のお知らせになるのですが、伊藤博文が金子堅太郎をアメリカに送り込み、セオドアルーズベルトに頼み込んで講和の仲介をしてもらえることになり、ポーツマス会議が行われます。

ポーツマス条約では賠償金はもらえませんでしたが、ここで戦争が終わっただけでも御の字で「賠償金が獲れてない!」と新聞が煽ったことで日比谷焼き討ち事件が起きますが、それは無理難題というものです。

このように見ていくと、現場の努力が多大であったことは間違いないないと思いますが、戦争が更に長期化していれば、日本軍の全滅は必至だったと言えること、高橋是がアメリカとイギリスで公債を売りまくって借金まみれで財政的にも限界が見えていたこともあり、アメリカとイギリスが日本に対して好意的で、戦争がやめられるように話をつけさせてくれたという天祐のおかげで体裁上「勝てた」ということが分かってきます。運が良かったからと言うこともできますが、そこが神話化されて後の世代では太平洋戦争が行われることになりますので、勝って兜の緒を締めよという意味のことを秋山真之が述べていますが、実際、その通りだということを40年後に身を以て示すことになってしまいます。
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Brexit、トランプの次はフランスのルペンか?

2016年はまさかのイギリスEU離脱で度肝を抜かれましたが、続いてトランプ大統領誕生に驚愕させられるとてもない一年でした。流れとしては自国中心主義、または国益優先主義と言えるようなもので、それまでの世界とは違った流れになって来たかも知れないなあとは思えます。

過去数十年の流れは国際化、グローバリズム、できるだけ政府の規模や関与を縮小し、国境の壁を低くし、小さい政府の自由主義というものが強かったように思いますし、私もそういうのを聴かされて成長してきましたので、そうものだと信じているところがありましたが、今年に入っていきなりがらがらと崩れてきたという印象です。

来年はフランス大統領選挙がありますが、ここまで来たらやっぱりフランスの「極右」政党と評されるフランス国民戦線のマリーヌ・ルペンさんが大統領になっても何にも驚きません。そういう流れなのだと私は納得するつもりです。

この流れに目を付けたBBCがルペンさんにインタビューし「brexit、トランプと来れば次は」とルペンさんに水を向けると「次はルペン大統領です」と言い切る感じが、以前なら泡沫の人が一応空元気で言っていると思えたものがなんとなく現実味を帯びた重みを感じてしまいます。

このインタビューでは「自分はレイシストではない」として、「レイシスト」という侮蔑表現をしないでくれとも言っています。国益優先主義であってそれそれ以上でも以下でもなく、その立場から新しい移民の受け入れに関してはもちろんノーだが、宗教の違いによって誰かを迫害するということももちろんないという主旨のことを述べています。あと、プーチンさんに対する意見はわりといいみたいです。

クリミア侵攻以来、世界の悪役でアメリカとその同盟国から制裁を受けているロシアのプーチンさんですが、対峙しているはずのヨーロッパがBrexitで内側から瓦解傾向を見せ、アメリカではプーチンさんと話ができそうなトランプさんが大統領になり、日本の安倍首相もプーチンさんとはケミカルが合っているみたいですし、ついでに言うと多分、デュテルテさんもプーチンさんのことは嫌いじゃないように思えます。

一時期は追い込まれていたように見えたプーチンさんですが、何となくプーチンさんの努力や行動とは関係のないところで親プーチンぽい人がぱらぱらと登場して来ているように思え、やはり苦しい時にぐっと耐える胆力で自分に波が来るのを待つというしたたかさがここに来て効果を発揮しつつあるのかも知れません。

世界で国益中心主義が流行すること事態については悪いとは思いません。自分の生活を優先した上で余力があったら他人を助けるというのは普通のことですし、余力がないときはまず自分の生活を考えることを責めることはできません。ただ、なんとなく、じわーっとですが、1930年代に世界各地でファシズムが流行したのとちょっと似ているような気がしないわけでもありません。

来年はとりあえずはフランス大統領選挙でルペンさんが勝つか、勝たないまでもどれだけ票を獲るかはちょっと注目したいところです。

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