ゴーン氏の起訴は可能か?

日産をスクラップアンドビルドして立て直したトリックスターのカルロス・ゴーン氏が逮捕されて、ひと月ほどになる。今も彼は塀の向こう側にいる。まずは金商法で逮捕され、次に特別背任で再逮捕だ。ゴーン氏の身柄がずるずると拘束され続けている現実をどう考えるかは、立場や価値観などによって判断が分かれるのではないだろうか。

現状、東京地検特捜部は金商法では起訴できなかった。ゴーン氏が退職後に受け取る日産の金融資産(株)が無法な金額にのぼるというのがその理由だが、今の段階で受け取っているわけではないから、保釈オッケーなレベルの話のように思える。しかもゴーン氏の独断でそういうことになったのではなく、日産の関係者各位了解のもとで手続きが進められたのだから、果たしてこれで誰かに損害を与えたかどうかはやや怪しい。というかそれは入り口にしかできなかったので、この件では起訴されていないのだと言える。

次に特別背任だが、これも調べて行けば会社に実損を与えていないということが分かってきたようなので、実害の発生していないことで罪に問えるかという壁にぶち当たっている。

もし私が検察の担当者なら焦るだろう。人間、誰でもはたけば多少のほこりは出るはずだ。そう踏んで金商法を入り口に身柄をとって後は自白も狙いつつ、何か他に罪に問えるものはないかといろいろ探した結果、絶対に有罪にできる決定打になるものを見つけることができないでいるのである。私が担当者だったら食欲を失う。

一方でゴーン氏の立場であれば、彼は彼で憔悴するだろう。金商法でぱくられて、勾留期限の延長もあって疲れ果て、ようやく外に出られると思ったら再逮捕である。権力が自分を狙い撃ちにして「こいつに正月を外で過ごさせない。必ず【何か】で有罪にしてみせる」と決心されていることが分かるのだから、憔悴しないはずがない。私がゴーン氏なら眠れなくなると思う。

この先、どういう決着を見るのかは全く分からないし、今は双方の駆け引きが激しく行われているところなので、軽率なことも言えないし、当事者の気の毒さを思えば軽率なことを言うべきでもないだろう。

但し、検察が起訴をしたくてもできない状態にあるのは多分、確かで、ゴーン氏サイドから拘置理由開示請求がなされたのも頷ける。既に調べられることは調べ尽くしていて、これで立件できないのなら、せめて娑婆の空気を吸わせろよとゴーン氏なら思うだろう。検察は意地でも有罪にできるネタを探しているはずだが、意地で起訴されるのは、される側にとってはたまるまい。疑わしきは罰せずの近代法の大原則はどうなるのか。日本は近代国家ではないのかという疑問が湧くはずだ。まあ、見守るしかないし、見守りたい。






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2018年が終わろうとしている。クリスマスイブも過ぎて世の中は一機に年末モードに突入である。さて、この年を振り返って個人的に最も印象深く感じたのは、まるで狙い撃ちでもされたかのように、ソフトバンクグループが携帯子会社のソフトバンク社を上場させる直前になって同グループにとってマイナスになるできごとがこれでもかというほどに頻発して起きたということだ。

ソフトバンクグループと協力関係にあった人々から次々とおかしな話が立ち上がったのは、運勢とはこういうものを指すのではないかと考えたくなるようなもので、立志伝中の中国の起業家であるジャック・マー氏の引退、ファーウェイのCFOの逮捕、サウジアラビアの皇太子が殺人命令を出したという噂もあり、ダメ押しするように肝腎の携帯電話がつながらなくなるという不具合まで起きた。ソフトバンクは親子ともども株価がだだ下がりしており、世界的な株安局面が悪い意味で追い風になってソフトバンクグループの株価は二カ月で三分の二まで落ちた。

ソフトバンクグループに対して快く思わない人はそれみたことかと、やんややんやと騒いでいる。私は停滞気味な日本社会で、思い切ったことをやってみよう、挑戦してみよう、新しい時代を作ってみようと取り組みを続ける会社がやっぱり存在することは大事なことだし、日本にソフトバンクがあって良かったとも個人的には思っている。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのいわゆるGAFAに連なる日本資本が存在し得るとすれば間違いなくソフトバンクだ。ラインや楽天がその後に続くかも知れないが、取り敢えずはソフトバンクが筆頭になるだろう。ライブドアがやや懐かしい。

さて、問題はソフトバンクグループがこの危機に対してどのように対応するかだ。何年か前に株価が急落した時は徹底したリストラで乗り切ったと聞いている。さる筋から得た話では、中国資本とは距離を置く方向性で動いているらしい。伝聞なのでこれ以上のことは分からないが、孫正義さんはトランプ大統領にも直接会ったことがあり、5兆円の投資を約束している。軸足を中国からアメリカに移すことはそんなに難しいことではないかも知れない。サウジアラビアの皇太子は敵も多いようだが、トランプ大統領は放置する姿勢でいるらしいので、サウジアラビア関連も実は当面、何も起きず、孫正義氏の投資がじわじわと活きて来ることは充分に期待できるはずだ。サウジアラビアの皇族と組んで脱CO2の太陽光エネルギー開発で成功すれば全てうまくいくのではないかとも思える。そういう意味で、ソフトバンクグループは長期的には買いである。期待できるし、期待すべきだ。こういう企業は日本にあるべきだ。ヤフージャパンという大手検索エンジンを運営する会社である。危機に瀕することはあっても切り抜ける力はあると信じたい。

2018年驚きのニュースと言えば日産のカルロス・ゴーン氏の逮捕もあるが、全体像が見えないので何とも言えない。日産自動車はゴーン氏と相討ちになる可能性もあるように思えるが、当事者の心中は分からない。特捜に有罪をとる自信が果たしてどこまであるのかも疑問だが、この話題についてはまたいずれ。