遠藤周作『アデンまで』

遠藤周作さんの初めて世に出た小説が『アデンまで』です。

フランスに留学していた主人公の日本人の男性であるチバが、肺を患って帰国することになり、

交際していたフランス人女性と別れ、東洋に向かう船に乗り込みます。

アフリカ系住民の女性が病に犯されたまま乗船しており、チバが看病しますが、

女性は亡くなってしまうというのがあらすじです。

 

文体はまだ若々しく、ある意味では青さも残っており、晩年の熟達した感じは

まだ見られません。しかし、『沈黙』や『深い河』を熟読した私にとっては、

新鮮だなあとも感じることができました。

 

この作品の中で主人公は白人の恋人と逢瀬を重ねるものの、白人が「美しい」のに

対して黄色人種である自分は「醜い」という劣等感を膨らませます。

戦争に勝った彼らが「正義」を代表するのに対し、戦争に負けた日本人は「悪」を

代表していることにも劣等感、怒り、憎悪を持ち、それが膨らんでいきます。

 

悔しさと怒りをぶつけるようにして書かれたこの作品には、まだ、遠藤周作さんの

生涯のモチーフであるイエスキリストは登場してきません。

 

とはいえ、まさしく遠藤先生の創作の原点にここにあるのかとつくづく

思わずにはいられません。

 

21世紀の今は当時とは状況がかなり変化し、人種や民族を理由にした

差別は忌むべきものだとの共通認識が持たれていると私は信じたいですが、

一方で、やはり根深いものがあるからこそ、今も某はレイシストだ!的な

批判が見られるのかも知れません。

 

温故知新と言いますが、60年前の古い短編小説を読むことで、現代の

ことを考えるきっかけを得たように思います。

明日が国会会期末。会期延長もなし。

明日、国会が会期末を迎えます。

解散するかしないか、注目が集まっています。

 

一部では消費増税は延期するが、参議院だけで戦うことで確認している

とする報道もあるようですが、首相の解散権はいつ行使してもいいことに

なっているので、実際に明日になってみなければ分かりません。

 

伊勢志摩サミットを無事に乗り切り(諸説あるでしょうけれど、一応、乗り切ったと

して話を進めます)、オバマ大統領の広島訪問も実現し、消費増税も実質3年延期

ということで、安倍首相が選挙に勝てる環境は十分に揃っているとも言えますから、

私はやはり解散するのではないかと考えています。

 

解散があるとしても、会期末は平穏に終えて、臨時国会でいきなり解散するというが

ないわけではありません。ただ、中曽根さんの時は、ほぼ自己都合解散ですので、

派手にぱーっと解散するのは気が引けるというのがあったのではないかという気が

します。今回はそういうことでもないですから、どうせやるなら、会期末にぱーっと

やってもらいたいという気はします。

 

どうも私は選挙を見るのが好きなので、ぱーっと派手に選挙してほしいという願望が

先に立ってしまいます。その分、客観性が失われる可能性を自ら認めたうえで、

それでも状況的にはイエス。解散するための条件は十分に整っていると言えます。

どのみち年内に解散しなければ、来年以降は追い込まれ解散気味になっていくと

いうことも併せて、選挙好きの願望も込めて、明日、解散すると予想します。

 

(写真素材ぱくたそ)

 

 

アベノミクスを振り返る

アベノミクスが終わったわけではないですが、これまでのことを簡単に振り返ってみたいと思います。

アベノミクス三本の矢は1、金融政策 2、財政出動 3、新産業の育成でした。

 

賛否あるとは思いますが、なかなか正しい、ポイントを押さえていると言っていいと思います。

1と2はそもそも短期的な痛み止めとしての効果しか期待できません。

しかし、取り合えずのたうちまわる日本経済の痛みを緩和し、少し心にゆとりを持って競争力のある

産業を育てて長い目でその成果を期待するというのは難しい理屈をこねくり回さなくとも理にかなっている

と言えるでしょう。

 

雇用は有意に改善していることは疑いがなく、正規、非正規の議論はもちろんありますが、取り合えず、

全く職がない、収入の道が絶たれているという人の数が減ったということは評価されるべきです。

 

しかし消費税の税率が5パーセントから8パーセントに増加されたことで、消費は一機に冷え込み、

ゼロ成長、マイナスになりそうでならないような、でもトータルでみたらマイナスかも?あたりをうろうろ

しているのが現状と言えます。また、財政出動は必ずしも充分ではなく、緊縮傾向にあり、

いわば、アベノミクスは金融緩和だけでなんとか成果を得ようとしているように見えなくもありません。

 

金融緩和や財政出動はいわばテクニックの問題であり、本質的な解決はもたらしません。

しかも、痛み止め効果も消費税増税によって吹き飛んだと行って良く、アベノミクスが成功している

とはやはり言い難いかも知れません。

 

三本目の矢の産業育成ですが、TPPに乗っかって農産品を主たる産業として押し出す狙いが

あるようなのですが、アメリカではトランプ氏がTPPに反対で、ヒラリー氏もやり直すと言っています

ので、さっぱり先が見えなくなってしまいました。

 

要するに三本の矢の全ては、吹っ飛んでしまった。

期待したほどの効果は出せなかったと結論せざるを得ません。

その要因は消費税の増税なわけです。

 

消費税増税延期がほぼほぼ決まりのようですが、経済の循環を良くすると言う意味では

永久凍結か思い切って減税するのが理想的なように思います。その場合、財政出動も

しなくていいのではないか、金融緩和もそろそろ息切れですから、それにも頼らなくて

よくなるのではないかと思うのです。

 

(写真素材ぱくたそ)

北方領土を還してもらう方法を考える

経済支援による北方領土の返還という大まかな解決策はよく聞くものです。

確かに、力による奪還という選択肢は我々にはありませんので、そうすれば

お金でなんとか…と考える他にはありません。

 

しかし、ロシア側はお金で領土を還すという選択肢は受け入れないでしょう。

領土を還してもらえるかもしれないという期待を持たせてお金を引き出そうと

するかもしれませんが、そもそもがそういうゲームだくらいに割り切っている

はずです。

 

また、クリミア侵攻をG7が容認しない中、日本が領土のためにそこから

抜け出るというのは大局的に見ていい結果をもたらすことにはならないように

思えてなりません。

そこで、私のこんな風にしてみてはどうか?という考えを書いてみたいと思います。

 

1、ロシアは日本の主権は認めるが、実効支配は続ける。

2、日本はロシアの実効支配を受け入れるが99年くらいの長さの

期限を設ける。(ロシアは北方領土を租借する)

3、北方領土で暮らしていた人たち及びその三親等の人たちは

無制限に北方領土に出入りできる。望めば居住もできる。

4、日本はロシアの北方領土開発に限り、資金やインフラ面で援助する。

 

日本の主権を認めさせることさえできれば、いずれ還ってくる希望が残りますし、

99年という今生きている人が責任を問われないくらいの長さで租借期間を

設けることができれば、当面の利権は守れるのでロシアも嫌だとは言わないかも知れません。

北方領土が故郷だという日本人の人たちの心情にも配慮でき、北方領土に限ってロシアに

うまみを持たせるということなら、G7でも容認してくれるかも知れません。

 

どうでしょう?どうっすか?

 

(写真は内閣府のホームページに掲載されているものを引用しました)

安倍首相の外交を振り返る

安倍首相は外交によく取り組んできた首相だと私は思っています。

外交成果が出れば国民的な人気も上がり選挙にも有利になりますから、

歴代の首相が外交成果を上げたいと望むのは当然のことですし、

是非、取り組んでもらいたいとも思います。

 

安倍氏が早い段階から力を入れたのは拉致問題の解決でしたが、

それは現在、足踏み状態になってしまっているように見えます。

現状のまま推移すれば、何ら目に見える成果が出ないまま、

安倍さんは任期を終えてしまいかねないようにすら見えてしまいます。

 

一方で、ロシアのプーチン大統領との関係は良好のようです。

ただ、北方領土が還ってくるかといえば、先方に手放すつもりは

多分、ないのではないかなあと私には思えます。

また、G7参加国間で、クリミア侵攻を容認しないとの合意が

生きている中で、果たしてロシアに近づきすぎるのはどうなのだろうか…

と個人的には思います。

 

さて、アメリカのオバマ大統領との関係ですが、安倍氏が二度目の首相に

就任した直後、アメリカでは必ずしも歓迎ムードではありませんでした。

TIME誌は「安倍という男は歴史修正主義者だ」という観点の記事を掲載して

いましたし、オバマ氏もそのような民族主義者とはまともに話をしたくない

というのが顔や態度にはっきりと表れていました。

キャロラインケネディ大使も安倍さんのことを好きじゃなかったように

見受けられます。

 

ただ、安保法制の成立や日韓慰安婦合意の発表などにより、オバマ氏や

キャロラインケネディ氏は安倍首相に対する見方を変えたということが、

これまたはっきりと表情や態度から見て取ることができます。

嫌われている相手の態度をここまで変えてしまうというのは、私は

凄いことのように思います。

 

何といってもオバマ氏の広島訪問は、様々な意見はあるでしょうけれど、

あの画像を見るとやはり感動してしまいます。安倍政権が始まって以来、

おそらくもっともはっきりとした目に見える外交成果と呼べるものでは

ないかと思います。

 

消費税の増税は先送り、衆議院解散はない、という見方が流れている

ようですが、選挙は勝てる時にやらなくてはならない、そして勝てる時流と

いうのはしょっちゅう来ない、という政治家の鉄則を思えば、私としては

解散すると思うに一票入れたいところです。

台湾総統選挙を振り返る

2016年の最初の国際ニュースは台湾の総統選挙ではなかったでしょうか。

民進党の蔡英文氏が国民党の朱立倫氏に対しダブルスコアに近い圧勝を

収めたのは事前の多くの人が予想した通りといったところでしょう。

 

蔡英文氏の得票率は56パーセントあまりで、当選者の椅子が一つしかないことを

考えれば十分にいい結果だったと言えますが、もう一人の候補者である宋楚瑜氏が

13パーセント近く得票し、万年候補としてはまずまずの結果であり、また、宋氏が

国民党から分派した人物であることを考慮すれば、実は民進党系と国民党系それぞれの

支持は拮抗しているとも言え、一般に言われているような民進党ぶっちぎりというのとは

少し違う側面もあるように思えます。

 

台湾では80年代ごろまで国民党が総統府、議会、経済界、官僚組織を押さえて

いました。陳総統の時代は総統府だけが民進党でしたが、いわば陳政権は孤軍奮闘

していた状態だったと言うことができますし、政策を思うように進めるには必ずしも

環境が整っていなかったとも言えるでしょう。

 

今回の蔡英文政権は総統府と議会を民進党が押さえていますので、陳総統の

時代よりはやりやすくなるかも知れません。

 

ただし、台湾の国民がもろ手を挙げて蔡英文氏を熱狂的に支持しているかといえば

そうとは言い切れず、国民党の失策があまりに大きすぎたので、消去法的な選択で

あったという側面はどうしても残ります。

 

今後の手腕はお手並み拝見としかまだ言えませんが、日本と台湾の関係は

よりよくなるに違いないと思い、期待したいです。

トランプ大統領誕生の現実味

つい先日まで考えられなかったことですが、トランプ大統領誕生の可能性が

にわかに現実味を帯び始めています。

トランプ氏が共和党の指名獲得を確実にした段階でも、大方の見方は

ほぼヒラリーで決まりでは?というものでしたが、ヒラリー氏のメール問題が

本格的に

炎上しており、アメリカ国内ではヒラリー離れが進んでいるように

見受けられます。

 

最近ではトランプとヒラリーではどちらに入れるかと問う世論調査で

は両者が拮抗し、トランプとサンダースであればサンダースに入れる

という人が多いという、ちょっと意味不明な複雑な状況に至っています。

最近までは共和党がトランプ派と反トランプ派で分裂するのではないかと

囁かれていましたが、今となっては民主党の方がヒラリー派とサンダース派で

分裂していると言ってもよさそうな雰囲気まで生まれてきています。

 

トランプ氏は本選に入ればヒラリー氏を攻撃するための「証拠」も持っていると

噂されており、それが炸裂すれば、トランプ大統領誕生の可能性が更に上がるかも

知れません。

 

とはいえ、大本命のヒラリー氏がこのような形でこけたり、サンダース氏が

ヒラリー氏を向こうに回して善戦したりと、本当に波乱含みで、本当に

こりゃ、わからん!

 

衆議院の解散と消費増税とサミット

安倍首相はリーマンショック級の経済危機でも起きない限り、

消費増税は予定通りに行うとの立場を崩してはいません。

 

問題は、リーマンショック級の経済危機を正しく定義することは

不可能なため、何をもってリーマンショック級の経済危機だと

判断するのかということになります。

 

今さら私が指摘するまでもないことですが、先日の伊勢志摩サミットでは、

安倍首相は世界経済の現状はリーマンショック直前のそれとよく似ていると

プレゼンしたと報道されています。

 

これまでにない踏み込んだ発言になったと捉えていいのではないかと

思います。これまで切り札として残しておいた表現をサミットという舞台で

ついに使ったといった感じではないでしょうか。

 

官邸サイドとしては、増税延期、或いは凍結、場合によっては減税するための環境は

整いつつあると表明しているのと同じですので、消費増税しないことを理由に

衆議院の解散が現実的な選択肢として考慮されていると受け取ることができると

思います。

 

ということになれば、解散風はますます強まり、週明けには「よしやるぞ!」的な

発言をする与党議員が現れても全く不思議ではないでしょう。

そこまで来れば解散風はもはや台風。

一機にそちらへと流れていき、囁かれている6月1日解散説も現実味を帯びてきます。

 

官邸ではシナリオは全て出来上がっていて、そのシナリオを発動させるかどうか、

させるとすればどのタイミングかを図っているに違いありません。

 

選挙は勝てる時にやらなくてはいけません。

「もっと勝てる時にやる」というのはある種の幻想であり、

ある程度勝てると判断できるうちにやってしまわなければ、

この先、何が起きるかわかったものではありません。

 

多少は減らすであろうとはいえ、ある程度の議席の確保の見通しが立つと

言われている今のうちにやってしまいたいと考えるのが普通なのではないか

という気もします。

 

ということで、「消費増税しないという理由で解散する」を結論にしたいと思います。

 

 

衆議院の解散はあるか?

「解散風は一度吹くと止まらない」

という言葉があります。

衆議院が解散されるのではないかという風聞が流れるようになり、

関係者一同その気になってしまうと、たとえ首相といえども

その流れに逆らえずに解散してしまうということらしいのです。

 

独占的に解散権を持つ首相でさえその流れに逆らえなくなるのかと言うと、

選挙の準備にお金がかかり、関係者スタッフ一同、心理的にも気合が入ります。

 

そのため、解散ムードが高まっているところで解散しないということになれば、

首相を支えようという雰囲気そのものが損なわれてしまい、政権維持が難しく

なるため、いったん解散の流れができるとそのまま進むしかなくなるようです。

 

首相は解散権をいつでも行使できることになっていますので、

「解散しない」と言っていて解散するのはオーケーなのですが、

「解散する」と言って解散しないのは通用しないようです。

 

そのため、安倍首相が解散は考えていないと強調するのは、

フリーハンドを保つために当然と言えば当然のこととも言えます。

一度でも「解散する」と言う、あるいはそれをにおわせると、

解散以外の選択肢はありません。

 

では、現在、解散風は吹ているでしょうか?

漏れ聞こえてくるのは、どうも解散を見越して準備を始めている人が

いるらしいといったところでしょうか。即ち、解散風は吹き始めている、

と言ってもよいでしょう。但し、本格的に吹いているかといえばそこまでは

まだ行っていないかも知れません。

 

私は今国会会期末の解散はありそうだ、あるかないかで言えば、

イエスではないかなあと思っています。

 

解散の可能性を探るために、この稿では解散風をキーワードにしていますが、

今年の場合、消費増税とサミットが更に深く読み解くカギになりますので、

そのあたりについては次の投稿で考えてみたいと思います。

 

(写真素材ぱくたそ)