台湾近現代史22‐昭和7年の主要東京映画館封切記録

日本時代に台湾で結成された台湾シネリーグという映画愛好家のサークルが発行する『映画生活』の昭和7年12月29日号を読んでいて、ちょっと珍しいと思えるものを見つけることができました。「主要東京映画館封切記録」というものです。当時、どんな映画が東京で公開されていたかを知ることができるわけで、台湾研究の資料としても利用可能と思いますが、当時の日本、東京について研究する資料としても或いは利用可能、もちろん映画史研究にも利用可とも思います。台湾で生活する日本人の多くは、きっと東京の情報がほしいと思ったに違いありませんから、こういうのを読みたがったでしょうけれど、台湾人にとっても当時の東京は憧れというか、いわゆる花の都ですから、東京の情報をほしいと思った人は多かったのではないかと思います。

公開作品が羅列されているだけのページなのですが、ちょっと、どういったものが公開されていたかを見てみたいと思います。

9月15日
パ社 『ハリウッドは大騒ぎ』(「パ社」とはパラマウント社のことではないかと推測できます)
不二 『金色夜叉』(不二という映画会社があったようです。私は知らないんですが…金色夜叉とは現代人からみてかなりシブイ感じがしなくもないですね…)

9月22日
パ社『我らは楽しく地獄へ行く』
WB社『ブレナー博士』(「WB社」とはワーナーブラザースのことではないかと)

9月29日(又は30日)←原文のママです
パ社『歓呼の罪』
FOX『貞操切符』(なんつうタイトル…)
MGM『間諜マタ・ハリ』(お、出ました。名前だけは知っている。マタハリの映画ですね)
WB『マネキン英雄』
松竹『恋の東京』
東活『侠客忠臣蔵』(年末にはちょっと早いのでは…?)
河合『微笑む東京』『お江戸裏町』

10月6日
パ社『明日は晴れ』
WB『ヴェニスの夜』
UA『ロビンソン・クルーソー』
日活『1932年の母』『浪人しぐれ笠』
不二『もだん聖書』

10月13日
パ社『今晩は愛して頂戴ナ』(は、はれんちな…)
FOX『ほ々えみの街』
WB『二秒間』
独ネロ『アトランテイド』(やっぱ、ドイツ表現主義みたいな感じの映画なのでしょうか)
松竹『青春の夢いまいづこ』
日活『天晴れ、三度笠』『白夜の饗宴』

10月20日(又は22日)←原文でこうなっています
FOX『黒い駱駝』
松竹『女は寝て待て』(ん?意外と人生の真理だったりする?)
日活『無軌道市街』
河合『親分子分』『下宿屋の娘』(漱石のこころみたいな感じなんでしょうか)

などなど。

知らない作品ばかりです。字がつぶれてしまって読めないものや、ちょっと大変でここに書ききれなかったものもありますが、全体ではこの二倍以上の作品が羅列されています。時代的にはもしかしたら最先端のものでトーキーもあったかも?くらいでしょうか。チャップリンの最初のトーキーが『独裁者』で、これが1941年ですから、このころは正しく無声・弁士の映画から移り行く最中。弁士で生きていくつもりだったのが失業してしまったという人が増える一方、トーキーよりも弁士がおもしろおかしくしゃべってくれるのが映画の醍醐味じゃないか、という客層も確かにいたらしく、その辺りは当時も議論になったこともあったようです。技術革新とともにとある職業がなくなり、とある職業が増えるというのはAI時代を目前にした我々も同じかも知れません。上に挙げた作品の中で、今でも普通にみられる作品は、多分、ないかも知れません。フィルムが残っているかどうかも疑わしく、或いは一部は映画会社の倉庫に眠っているかも知れません。観たというツワモノがいらっしゃたらお知らせくださいませ。
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