元寇の「勝因」

元の皇帝クビライからの国交の申し出は事実上の降伏勧告であると判断した鎌倉幕府の執権の北条時宗は、元から送られてきた中国人の使節を斬首までして頑なにクビライからの申し出に応じようとはしませんでした。

国交を求める使節は何度となく送られてきたわけですが、国書の内容は戦争か和平かを迫る内容であったと受け取ることができ、元サイドの日本を脅迫する姿勢はある程度明白なものだったと考えて良いように思います。それでいてすぐに船団を出さずに使節を送り続けたのは、「どのみち日本は海の向こうで遠すぎる。征服するのは骨が折れるので先方が脅迫にびびって朝貢してくれるようになったら都合がいいのだが」という心理が働いていたのではないかと私は推量しています。

元寇は二度ありましたが、どちらも大がかりなもので、一度目の場合は水夫も含めて約40000人と伝えられており、クビライはかなり本気だったことが想像できます。一方で、現場がどれだけ本気だったかは怪しいのではないかとも思えます。対馬、壱岐では惨劇の限りが尽くされたと伝えられているものの、博多に上陸した後は一夜で引き返しています。日本側の記録では元軍の勢いは凄まじく、一部では元軍を敗走させることができたものの、全体としては機動的な元軍を防止することができず、撤退戦を余儀なくされています。ところが元軍の方では左副都元帥の劉復亨が負傷したこともあり、日本軍の抵抗が想像していた以上に激しい判断して引き返したと推量することができます。合戦だけであれば一人でも生き残って敵の最後の一兵を倒した側の勝ち、または敵の大将の首を取った側の勝ち、ということで収まるかも知れないのですが、敵地に入って敵を打ち破り占領するというのはよほどの圧倒的な戦力差が必要になり、元サイドとしては先が思いやられ、断念して引き返したのではないかと思います。敵地いで戦争する場合、上陸戦が最も困難で、元寇の初回で激戦の末とはいえ博多湾上陸に成功した以上、それを棄てて引き返すというのは、戦意が必ずしも高くなかったと考えるのが通常ではないかと思いますので、現場のやる気は必ずしも高くなく、それが結果として撃退できたことの要因ではないかと思います。

二度目の場合、元軍は高麗の兵と中国の兵を合わせて総勢14‐15万での日本征服を企図します。二倍以上の兵力を準備したのは、今度こそ恒久的な占領を狙うという意図があったと考えるのが自然です。しかし、高麗から出発した船団がわりと順調に出発したのに対して、旧南宋から出発した中国の船団は待ち合わせの期日になっても姿を現さず、高麗ルートの軍が孤軍奮闘することになります。ただし、前回とは違い博多湾には防塁が築かれていたため、思うように浸透することがません。高麗ルートの将兵の心境としては自分たちが苦労して平定した後に南方ルートから来た軍が楽々と上陸するのは不公平ではないかとの思いが去来したのではないかと私は推量します。

南方ルート軍は約束していた合流地点へは向かわず、防禦が薄い平戸に上陸して半分陸上、半分船上の陣地を構築します。高麗ルート軍と合流して大宰府を攻めるという作戦で、これが実現していれば博多湾の防塁は全く意味がありませんので、或いは元軍はいい線まで行っていたかも知れません。一方で日本軍は当初の戦闘は九州の武士に任せていたものの急遽新たな軍事力を編成し九州へと向かわせていますので、場合によっては両軍主力による決戦が行われたかも知れません。結果としてどっちが勝ったかはなんとも言えませんが、そのような決戦が行われる前に暴風雨により元軍はほぼ壊滅。司令官は現場を離脱し、陸上に残された兵隊たちは惨殺されるか捕虜にされるかという結末を迎えます。

このように見ていくと、元寇の戦いは「敵失」によって勝利できた、或いは撃退できたということができそうです。一度目は現場の戦闘意欲の低さによりことなきを得、二度目は暴風雨という自然現象に助けられています。更に言えば、南方ルートの船団の出発が遅れたことにより、南方ルート軍と高麗ルート軍の合流が遅れ、決戦になる前に暴風雨が来たとも言えますので、相手のスケジュール管理の甘さに助けられたと考えることもできなくはありません。

滅びるモノはまず内側から腐っていくというのは歴史の鉄則ではないかと私は思っていますが、元寇に関して言えば、幕府側の防戦意欲が高く、防塁を建設するなどして有効に敵の足止めに成功したということと、相手のいろいろな意味での計画の甘さの双方に勝因を求めることができ、多くの教訓を得ることができるのではないかと思います。

その辺り、太平洋戦争では真逆ですので、そういうことも含めて自分が日々を生きる教訓にできるのではないかとも思います。

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