サガン『悲しみよこんにちは』の女の人の心理

『悲しみよこんにちは』はサガンのデビュー作で代表作です。というかサガンの作品では他には特に知っているものがありません。多分、フランス語ではいっぱいいろいろ書いていると思います。ですが、普通に日本で生きててサガンの作品に触れるとすれば『悲しみよこんにちは』で始まり『悲しみよこんにちは』で終わります。いい本です。涙が自然に流れて来そうなくらいとてもきれいで切ない内容です。

お父さんと娘のセシルが南フランスの海辺のリゾートで夏休みを過ごします。きらきらとした透明感のある素敵な夏休みです。お父さんは離婚しています。でもかっこいいのでとてももてます。作品に詳しく書かれているわけではないですが、きっとガールフレンドが沢山います。そういう設定になっているはずです。うらやましいです。娘のセシルもお父さんが大好きです。かっこいいお父さんが自慢です。セシルはお父さんがガールフレンドと遊んでも別に気になりません。お父さんにとっては私が一番なのよ。くらいに思っています。むしろ他の女の人たちに対して優越感を持っているくらいです。

ところが事情が変わってきます。お父さんが真剣に愛する新しい結婚相手を南フランスの別荘に連れてきてセシルに引き合わせます。新しいお母さんはマジメで聡明で素敵な美人です。もてる男性は遊び相手と真剣に愛する人とは選び方が違うのだと、著者よく観察しています。セシルと新しいお母さんは仲良くなれるようにお互いに努力しますがうまりうまくいきません。互いに悪気がないだけに余計に歯がゆい感じです。新しいお母さんに用事ができてしばらく南フランスを離れます。その間にセシルは一計案じます。同じリゾートで夏休みを過ごしているお父さんの最近までいたガールフレンドを使おうと考えます。お父さんにいろいろと吹き込みます。「あの人を最近見かけたけどきれいになってた」とか適当なことを話します。お父さんは男です。男は単純です。セシルにそういうことを言われると、また前のガールフレンドと遊びたくなってきます。セシルがいろいろと策を講じた結果、とうとうお父さんは前のガールフレンドとどっかへ遊びに行ってしまいます。そこに新しいお母さんが帰ってきます。何が起きているのかすぐに察知します。車に乗ってどこかへ行きます。「無事に帰って来てくれるだろうか」と心配していたら、新しいお母さんが亡くなったという連絡が届きます。新しいお母さんは車と一緒に谷底に落下してしまい、自殺とも事故とも判別できません。セシルは自分の意地悪な思いつきで素敵でマジメな新しいお母さんを死なせてしまったことを後悔し、生涯、その罪悪感とともに生きる覚悟をします。生涯悲しみとともに生きる覚悟をします。生涯の友である悲しみがやってきます。悲しみよこんにちはです。

女の人の心理がよく出ています。多分、もてる男性のタイプにそんなにバリエーションはありません。女性の作家は男性のバリエーションにあんまり関心がない場合が多いように思います。むしろ同性のバリエーションをいろいろ細部まで書きます。男はワンパターンでいいです。紫式部の『源氏物語』と同じです。サガンが十代の時に書いた作品ですので、技巧とかそういうのではなくごくごく自然に書いた作品なのではないかと思います。自然体で短い作品で、心境がきちんと描かれているので読みやすいです。文学少女風のきれいな文章です。翻訳でしか読んでないので本当の原文のことは分かりません。男性が読んでもいい作品です。自分の来し方や在り方について省みることができます。できないか…?

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